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2006年4月に作成された記事

2006年4月30日 (日)

クレツキのシベリウスとベートーヴェン

今日は爽やかな良い天気となった。昨日は久しぶりにゆっくり休むことができた。休養充分で体も軽い。いよいよGWに突入、家の近くの国道414号線が伊豆方面に向かう全国から来たマイカーで混み合い始めた。

自分も気分は浮き浮きと行きたいところだが、連休中に予約しておいた下田の宿から、改装工事がこの連休に間に合わずキャンセルとして欲しい、という電話が一週間ほど前に入り愕然。もともと格安の公共の宿だったのが、今年から指定管理者導入で民間業者が運営することになったらしい。サービス向上のための民間委託のはずが、初っ端からこれでは先が思いやられる。

今日は、ポーランドの指揮者パウル・クレツキの演奏を聴く。
クレツキは、数年前に日本コロンビアから出たスプラフォン音源のベートーヴェン交響曲全集が好評で、ラフマニノフの交響曲のCDも復刻されている。再評価が始まったようだ。

P4300289今日聴いたのはTestamentがCD復刻したシベリウスの交響曲第3番。同じシベリウスの第1番とカップリングされているモノラルCDだ。1955年録音。クレツキのシベリウスは他に第2番と「エン・サガ」があり、ステレオ録音の第2番はかつて吉田秀和氏の「LP300選」の巻末リストに紹介されていた。

聴き手に媚びない豪快で男性的なシベリウス。第2楽章など、いささか大味のような気がしないでもない。クレツキのリハーサルは厳しかったそうだが、オケのアンサンブルを厳しく叩き上げたのが如実に判る演奏。聴いているうちに誰かに怒られているような気分になってきた。

P4300288定評のあるベートーヴェンも聴いてみた。チェコフィルを振ったスプラフォンの外盤LPで第1番を聴く。こちらもシベリウスと同傾向の演奏だが、正統派のベートーヴェンが見事に鳴っている。ハイドンの影響が濃い初期の交響曲とはとても思えない堂々たる演奏だ。クレツキはシベリウスに対してもベートーヴェンと同じアプローチで臨んでいたようだ。

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2006年4月29日 (土)

カウフマンのメンデルスゾーンとバーバー

早朝、庭に訪れたウグイスの澄んだ囀りで目を覚ます。例年ならば3月初めから盛んに鳴き始めるのだが今年は遅い、冬の寒さが4月まで残っていたからだろうか。

久しぶりに何も行事のない休日。散らかった部屋を片付けながら音楽を流す。
聴いたのはロスフィルのコンマスだったアメリカのヴァイオリニスト、ルイス・カウフマンのメンデルスゾーンとバーバーのヴァイオリン協奏曲。

カウフマンといえば映画「風と共に去りぬ」でヴァイオリンを弾き、ヴィヴァルディの「四季」を初めて紹介したヴァイオリニストとして知られている。当時のアメリカではハイフェッツと並ぶほどの人気があり録音もかなりの数があったが、CD時代になってからはほとんど忘れられた存在だと思う。
歴史的な録音となった「四季」は、かろうじてNaxosのCDで聴くことができる。

P4290287今日聴いたのはMMSシリーズの10吋モノラル盤で、メンデルスゾーンのバックはアッカーマン指揮のオランダフィル。バーバーはゲール指揮のミュージック・マスターピース・ソサエティ管。これは覆面オケだが演奏水準はオランダフィルの遥か上、おそらく著名なオケの変名だろう。

甘い音で、なよっとしたカウフマンのヴァイオリンは今日の耳で聴くといかにも古いスタイル。ただ線の細さは感じるもののテクニックは確かなもの。

P4290286砂糖菓子のようなメンデルスゾーンはともかく、バーバーはパリッと引き締まった演奏で良い。ロマンティックでちょっぴりオセンチな第1,2楽章はハリウッドで活躍したカウフマンのために書かれた曲のようなものだ、演奏至難な第3楽章も楽々と弾いている。

このバーバーにはコープランドのピアノ協奏曲がカップリングされている。ピアノはレオ・シュミットという人で、作曲者のコープランド指揮のローマ放送響の伴奏。
このピアニストは知らぬ人だが、高度なテクニックと華やかな音色で実に痛快。これは掘り出し物だった。

P4240274沼響のHPに聴き比べコラム「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はザンデルリングのステレオ再録音盤。
連載17回目。

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2006年4月28日 (金)

ケンペのブルックナー交響曲第7番

長かった一週間がようやく終わる。体調を見ながら一日休みを取るつもりがなかなか思うようにはいかない。だがオケの練習にも出れたし腰痛も引いた。結果オーライということで明日の休日は何もせずゆっくり過ごそう。

ストックホルムフィル創立100周年アルバムを聴く。

P4280285BISから出ていた75周年記念アルバムも充実していたが、この100周年BOXセットもすごい。
フルトヴェングラーやワルターの録音のように既出の音源もあるが、トスカニーニのワーグナー、クレンペラーやシルヴェストリのブラームス、ストコフスキーのバッハ、クーベリックのフォーレ、ホーレンシュタイン、フリッチャイなど、ほとんど初出のお宝満載CD8枚組。

今日はこの中からモントゥーのレスピーギとケンペのブルックナーを聴いた。
モントゥーは「リュートのための古風な舞曲とアリア第一番」、1961年のモントゥー最晩年のライヴだ。遊び心溢れる洒落た雰囲気の中に巨匠の風格漂う名演。86歳の老人とは思えない溌剌とした音楽が鳴っている。

もうひとつはケンペがスタジオ録音を残さなかったブルックナーの交響曲第7番。こちらも緻密な音楽造りで、凝集力されたオケの響きがホールの中に壮大に鳴り切っている。
第2楽章の切々たる歌も心に響く。1975年巨匠晩年のライヴで、スタジオ録音の4,5,8番を上回る名演だ。

P4240273沼響のHPに聴き比べコラム「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はザンデルリング&レニングラードフィルの1956年録音。
連載16回目

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2006年4月27日 (木)

ルフェブールのシューマンとラヴェル

今日はオケの練習日。前半は降り番のシューマンなので大ホールの客席で聴く。ピアノとオケのバランスもだいぶ良くなってきた。工藤さんのピアノも相当さらってきた様子。前回合わなかった第3楽章も今日はばっちり。

P4270282帰宅後、リパッティの師にしてフランスの女流ピアニスト、イヴォンヌ・ルフェブールが弾くシューマンのコンチェルトを聴く。
バックは大指揮者ポール・パレーのフランス国立放送管。Solsticeから出ているCDで他に「子供の情景」とラヴェルのト長調のピアノコンチェルトとのカップリング。

フランスのピアニストにはルフェブールの師のコルトーやイーヴ・ナットなどシューマンを得意としているピアニストは多いが、ルフェブールも得意としているらしい。
大きくテンポを揺らしロマンティックに歌うあまり、時として音楽の造形が崩れる寸前となる相当ユニークなシューマン。
ピアニストが自分の世界に入り込み没我の境地となり完全に陶酔している。時々鼻歌のような声も聴こえてくる。バックのパレーはさすがに見事に付けているが、いつものような精彩さを欠く。

カップリングされているラヴェルは即興的なテンポの揺れが自然な名演。しかし同じパレーとORTFのバックによるラヴェルでは、モニク・アースの弾くグラモフォン盤の清楚な演奏が自分にはより好ましい。

P4270284ルフェブールのラヴェルで、次にFY原盤のラヴェルピアノ曲集から、作曲者から絶賛されたという「水の戯れ」を聴く。
こちらは節度のあるロマンティックさが良い。繊細さよりもしっかりとした造形、太くがっしりとした演奏だった。

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2006年4月26日 (水)

スウェーデン放送響の50年

体調を整えながら日々の仕事を粛々とこなす一週間。一日ゆっくり休みたいところだが、そうもいかなくなってきた。

P4240275今日はBISから出ていた「スウェーデン放送響の50年」から初期の録音を聴く。これはオケの草創期の1928年から1979年までの放送録音を集めた5枚組LPで、シェルヘン、ストコフスキー、セルからショルティ、クーベリック、ブロムシュテットまで多彩な指揮者が振っているアルバム。

もともとこのオケはラジオの劇伴用のオケとして創設されたらしく、草創期のメンバー表をみるとメンバーは10人余りでヴァイオリン奏者がサキソフォンを兼ねていたりする。アルバムの1枚目A面も軽いダンス音楽ばかりが入っている。これが時として歌が入ったりして変化に富みめっぽう楽しい。

クラシカルな作品を演奏する時は、ストックホルムフィルやロイヤルオペラから助っ人が入ることもあり、プッチーニの「トゥーランドットからのグラン・ファンタジア」などの珍曲を録音している。
50年代の録音になると、本格的なオーケストラとしての陣容が整い始める。ヒンデミット、ストコフスキーやシェルヘンらの大物が客演、にわかに演奏が充実してくるのが如実に音になっている。デニス・ブレインの吹くモーツァルトのホルン協奏曲第2番のライヴが入っているのも嬉しい。

P4260281ついでに同じBISから出ていた「ストックホルムフィル75周年記念CD」も聴いてみる。こちらはフルトヴェングラー、ワルター、トスカニーニ、クライバー、クレンペラーからカラヤン、ダニー・ケイまで、まさに20世紀の大指揮者たちがずらりと並ぶのが壮観。

P4250280沼響のHPに聴き比べコラム「新世界よりを聴く」をアップしました。
今回は名匠ペーター・マーク晩年のライヴ映像。連載97回目

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2006年4月25日 (火)

プロハスカの「運命」

今日は時々雨がパラついたりと、はっきりしない天気の一日。体調管理のため仕事を早めに切り上げ久しぶりにハードオフに行ってみた。

電気用品安全法の影響で、オーディオ製品にはかつてのような活気は薄れ、特にガラクタが沢山つまったおもちゃ箱を覗き見るような楽しさがあったジャンク品コーナーは面白みがなくなった。

ジャンクLPコーナーからは、目に付いた二つのレコードを購入。
P4250278ひとつはコロンビアが出していた「正統を伝える指揮者たち」シリーズからケンペが指揮するバンベルク響の録音で、「未完成」とウェーバーの「オイリアンテ」序曲、スメタナの「ボヘミアの牧場と森から」が入った一枚。
同時期に録音されたブラームスの交響曲第2番は77年の初出時に購入していたが、この1枚は買いそびれていた。100円。

P4250279あとはキングから出ていた「五大交響曲」というタイトルで、「ジュピター」「未完成」「運命」「悲愴」「新世界より」の5曲がLP2枚に詰め込まれたもの。
演奏は始めの3曲がプロハスカ、「悲愴」と「新世界より」がゴルシュマンで、オケはウィーン国立歌劇場管、米ヴァンガードの音源。

プロハスカの「未完成」とゴルシュマンの2曲は既に外盤で持っていて、これだけ詰め込まれていると音質は相当落ちるが、プロハスカの「シュピター」が聴きたくなって気軽な気持ちで買い求めたもの。200円。

虚心になって聴いてみると、適度にロマンティックですっきりした音楽運びで聴かせるプロハスカの演奏が良い。「運命」の第1楽章展開部のファゴットのみの部分を、ホルンとファゴットを通常の分け方と異なる部分で分担させるなど、初めて聴くアイディアも聴かれてなかなか面白い。推進力溢れる「ジュピター」も好演だ。
初めから大名演は期待していなかったが、ウィーン風のローカルな味わいがなかなか楽しめたアルバム。

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2006年4月24日 (月)

ロジンスキーのR.シュトラウス

昨晩までストーヴを点けていたのに今日は爽やかな天気となった。静岡市は夏日だったという。腰の痛みはなんとか引いてきた。

P4240272今日は、EMI・IMGから出ているCD2枚組シリーズ「20世紀の偉大な指揮者 ロジンスキー編」を聴く。
既に紹介したラフマニノフの交響曲第2番の他に、R.コルサコフやムソルグスキーのロシア物、「ウイリアム・テル」序曲、ワーグナーの管弦楽曲集、R。シュトラウスの「7つのヴェールの踊り」と「死と変容」が収録されている。それにしてもずいぶんと巨大な指揮棒だ。

一般的には、「ウイリアム・テル」序曲に聴かれる男性的で一直線に突っ走った単純な演奏がロジンスキーの演奏スタイルというイメージが強い。確かにそのような一面はあるが、ワーグナーの「ジークフリートの葬送行進曲」のびっしり中身の詰まった濃い響きを聴くと、それほど単純ではないと思う。

中でもR.シュトラウスの「死と変容」に大きな感銘を受けた。これは1957,58年のロジンスキー最晩年の記録で、オケはフィルハーモニア管。
このロジンスキー最後の録音セッションはステレオで収録され、他にロイヤルフィルとのファリアとロシア物が録音されている。

P4240277P4240276こちらは同じジャケット写真を使用したファリアとチャイコフスキーの米セラフィム盤。
最後の録音でも、このようないわゆる通俗名曲しか振らせてもらえなかったのは悲しいが、この2枚に入ってないロジンスキーの死後発売されたという「死と変容」は非常な名演だと思う。

なによりもオケの昇華された純な響きが実に美しい。ティンパニの強打で音楽が急展開する部分の鮮やかさ、フォルティシモも密度の濃い響きから最後の神秘的な終結部まで、どの部分を聴いても超一流の音楽が鳴っている。20数分間があっという間に過ぎ去ってしまう。
生涯円熟とは縁がなかったなどと言われるロジンスキーだが、この演奏を聴くと、最晩年に大きな花が咲きかかっていたのではないかと思えてくる。

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2006年4月23日 (日)

ボイド・ニールのブランデンブルク協奏曲

朝からどんより曇った日曜日、雨もパラついてきた。昨日痛めた腰が重い。
ゆっくり休みたいところだが職場に顔を出す。夜はそのまま高校時代のOB会の会合へ行く。こちらは私的な仲間内の打ち合わせなので気が楽だ。とはいえ帰宅は結局9時過ぎになってしまった。

帰宅後アリアCDから届いていた包みを開けてみる。

P4200264・ボイド・ニール指揮のブランデンブルク協奏曲全曲のDUTTON盤2枚組。
これはホルンのデニス・ブレインと後に指揮者として有名になったデル・マー、トランペットのエクスデール、オーボエのレオン・グーセンス、バルビローリ夫人のエヴィリン・ロスウェルなどの多彩なソリストが加わったもの。

余白にマルコムの弾くチェンバロ協奏曲第7番、デ・ヴィトーのヴァイオリン協奏曲第2番などが入っている。(こちらはアンソニー・バーナード指揮のロンドン・チェンバーオーケストラ)

P4200266・ルイ王朝時代のフランスファンファーレ集。
フランスの第一線の金管奏者たちによるムーレ、リュリ、ラモーら17世紀の作曲家達による金管合奏曲集。かつてドウアットの録音で親しんだムーレのファンファーレが懐かしい。

P4200268・Andranian姉妹による2手のピアノのためのフランスピアノ曲集。
曲はイベールの「寄港地」のピアノ版やフランセの「エキゾティックな舞曲」と他にジョリヴェやミヨーの曲が入ったTUXEDO盤

P4200265・ドラティ&ロンドンフィルによる1930年代録音のバレー音楽集。
曲はシャブリエやボッケリーニの作品をフランセらがオケ用にアレンジした作品に加えてストラヴィンスキーの「妖精の口づけ」が入ったDUTTON盤。など。

P4230271沼響のHPに「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はロジンスキーのスタジオ録音。連載15回目

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2006年4月22日 (土)

今日はPTA総会、腰痛再発す

今日は休日とはいえ娘の通う小学校のPTA総会の日。午前中から準備に追われる。

体育館に行き、式次第を掲示したり椅子を並べたりといった作業を他の役員と共に進める。ところが巨大な演台を運ぼうと無意識に腰に力を入れた時、グキッと腰に激痛が走った。思わずその場にしゃがみこむ。昨年やったぎっくり腰の再発かと思い、顔が青ざめるのが自分でも判った。幸いにして自分で歩くことができた。ぎっくり腰まではいかないが、かなり腰にダメージを受けたようだ。

直ちに帰宅し、湿布を張り横になるが痛みはひどくなるばかり、しかし今日はそのまま家で寝ているわけにもいかない。直ちに近所の整形外科に行き痛み止めの注射を打ってもらう。
これで何とか午後のPTA総会は乗り切ったが、アルコール厳禁ということで、先生方を交えた夜の懇親会はパスさせてもらった。明日は仕事に行かねばならず、夜は高校のOB会の集まりがある日。最悪の一日となってしまった。

P4220269家で横になりながら枕元のCDプレーヤーとヘッドフォンでヘンデルを聴く。
聴いたのは10数年前にキングから出たハルモニアムンディ・バロックマスターシリーズから「ヘンデル編」。ハルモニアムンディの手持ちの音源から、ヘンデルの作品を集めたオムニバス盤で、「水上の音楽」「調子の良い鍛冶屋」といった有名曲もあるが、主に宗教曲やオペラ、歌曲などを集めたなかなか凝った選曲のアルバム。

いずれも名演揃いだが、中でもニコラス・マギーガン指揮するフィルハーモニアバロックによる歌劇「ジュリアス・シーザー」からアリア「物音一つせず」が非常に気に入っている。
これはオペラアリアとはいえ、快適なテンポに気持ちよく乗るカウンター・テナーのドリュー・ミンターとナチュラルホルンとのダブルコンチェルトのような曲だが、歌にぴったり合わせ朗々と歌うナチュラルホルンが驚異的なうまさで聴かせる。さぞ名のある名手だろう。

何度も繰り返し聴いているうちに次第に気分が晴れてきた。明日は明日の風が吹く。

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2006年4月21日 (金)

地震で起きる

今朝午前3時ちょっと前、突然の激しい振動で起こされた。地震だ!
横で寝ていた娘が目を覚まし、不安そうな表情で私を見ている。
激しい揺れはなかなか収まらない。「こりゃ、やばいかな」と思っているうちに横揺れが次第に減衰していった。揺れは20秒くらい続いただろうか。家内は平然と寝入っている。たいしたものだ。

「横揺れの地震だから震源地は遠いぞ。大丈夫だよ」と娘に言い聞かせ再び寝付く。しばらくしてまた揺れてきた。今度はどうでもよくなり、そのまま布団をかぶって寝入る。翌朝のニュースで震源は伊豆東方沖で、マグニチュード5.6、沼津は震度3。

地震といえば子供の頃に祖父に聞いた話を思い出した。
祖父が子供の頃は150年前の安政の大地震を実際に体験した人がまだ生きていて、よく地震の時の話を聞かされたという。

地震の直後、家の前の田が突然陥没し泥水が勢いよく噴き出した。そのうち津波が押し寄せてきて作物や家畜が流されてしまったそうだ。その時海から運ばれてきたカニが、津波が引いても家の近くにそのまま住み着いてしまったという話だった。

自分が子供の頃までは、家の庭先でその時の子孫のベンケイガニをよく見かけたものだ。
この記事を書いているうちにまた揺れてきた。しばらく余震は続きそうだ。

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2006年4月20日 (木)

大ホールでのラフマニノフ

今日は合宿でやり残したラフマニノフの第1楽章を横島先生の指揮で練習。場所は沼津市民文化センター大ホール。細かな音楽造りが始まり曲の面白さもメンバーに浸透してきたようだ。

一方で、小ホールでは12月に行なわれる「第九」演奏会の合唱団の結団式が行われている。練習終了後に第九演奏会の主催者である市の担当者と談笑。今回の合唱団も総勢300名を超えなかなか気合が入っている様子。ラフマニノフの本番が終われば次は「第九」の練習が待っている。

練習の合間にピアニストの海瀬京子さんと電話で練習日程の打ち合わせをおこなう。
昨日共演した広上淳一さんとのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番の本番の様子を興奮気味に話していた。
明日からは鹿児島公演を含む3日連続のコンサート出演だそうである。強行スケジュールが続くがマイペースで無理をせずに頑張って欲しい。

P4190262沼津交響楽団のHPに「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。今回はボールトの演奏。連載14回目。

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2006年4月19日 (水)

フランチェスカッティのパガニーニ

職場で予想外のトラブルが生じ、ただいま帰宅。
土曜日に迫ったPTA総会の資料も作らねばならぬ。PTA役員も当初この3月で任期切れとなりめでたくお役御免のはずだったのが、後継者が見つからずあと一年続投となってしまった (T^T)。

少子化と通学区域の自由化などで地域のコミュニティが薄れ、年々役員を引き受ける人を見つけるのが難しくなってきた。学校への関心が薄いかと思えば、参観日には苦情と御意見の嵐。難しい世の中になってきたものだ。

これ以上P4190263愚痴は言うまい、今日は何かスカッとした音楽が聴きたくなった。
レコード棚から取り出したのはパガニーニの直系の弟子といわれるフランチェスカッティの弾くパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番。
オーマンディ指揮フィラデルフィア管の伴奏の定評のある名盤。この演奏のオリジナルはモノラルだが擬似ステレオ化されて何度か発売され今も現役のはずだ。

艶やかな音色と鮮やかな技巧、確信に満ちた弾きっぷりに聴いてて圧倒されるのみ。オーマンディの伴奏も素晴らしい。

今回聴いたのはML4315という米コロンビアのオリジナルLPで、デンオンのモノラル専用カートリッジDL102で聴く。モノラルながらフランチェスカッティの美音をものの見事に再現し、まさに実在の響きだ。擬似ステレオ化された後のLPやCDと比べると雲泥の差の再生音。
このような音を聴くとオリジナルのLPを探す人の気持ちも理解できる。

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2006年4月18日 (火)

サヴァリッシュのシューマン

家に古くからある夏みかんが今年はいつになく豊作となった。本来は6月まで待たなければ甘くならないのだが、裏山にいるハクビシンに食べられ始めたので思い切って収穫。バケツ3杯ほどになった。
実り始めた冬に食べた時は口が曲がりそうなほどの酸っぱさだったのが、かなり甘くなっていた。

P4180261最近シューマンに凝っている。今日聴いたのはサヴァリッシュの交響曲第3番「ライン」。ドレスデン国立管を振った全集中の1枚。
サヴァリッシュの数多くの録音の中でも代表的な名演で、あまりにも有名な演奏。
ロマンティックで自然な音楽の流れの中に、ドレスデンのオケの柔らかで品格に満ちた響きが非常に良いバランスで響いている。

P4180256もうひとつヤニグロの弾くボッケリーニのチェロソナタを聴く。
ウエストミンスターから出ていたボッケリーニ室内楽曲集のLPで、他にトリオソナタが2曲とフルート五重奏曲が入っている。トリオソナタはワルター・シュナイダーハンらウィーンの音楽家達。フルート五重奏曲はハース指揮のロンドンバロックアンサンブル。

明るさだけでなく内省的な落ち着きも感じられる佳品を、ヤニグロは確実な技巧と幾分柿色を連想させる渋い響きで弾いていた。

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2006年4月17日 (月)

ミトロプーロスのマーラー

今日は爽やかな良い天気となった。年度始めの多忙な状況もようやく山場を越えたようだ。

昨日の合宿の帰りの車中で聴き始めたミトロプーロスのマーラー選集を聴く。
1,10,6,8,9番収録のAriosoから出ているCD4枚組。オケはニューヨークフィル、ウィーンフィル、ケルン放送響による全てライヴで、かつて3,5番を加えたセットがM&Aから出ていたが高くて手が出なかった。
このAriosoは4枚で1,500円ちょいで買えるのがありがたい。第8番は正規音源がOrfeoからも出ているが、このArioso盤の音質は正規盤と比べてもさほど遜色はない。

今日は1960年ライヴといわれる9番を聴く。ニューヨークフィルが細かいところまで実に良い音で鳴っている。第2楽章が終わったところで盛大な拍手が入るが、この時指揮者が舞台袖に引っ込んだのだろうか。
第8番のような狂気を孕んだ異常な熱気は薄いが、早いテンポで進めた骨太の名演だった。

P4140248沼津交響楽団のHPに「ラフマニノフの第2番を聴く」をアップしました。今回はスタインバーグの第一回録音。連載13回目。

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2006年4月16日 (日)

天城、白雲楼での合宿

土曜の夕方、仕事を早めに切り上げオケの合宿に合流する。場所は天城の奥にある「白雲楼」。狩野川の支流の川沿いにある23年前の沼響旗上げの際にも利用した思いで深い宿だ。現在創立当時のメンバーは私を含め3人を数えるのみとなってしまった。

練習場は昔のままだが小さな第2練習場が出来ていた。宿のご主人は沼響の第九公演にも合唱団員として参加してくれた人だ。

練習の中心はラフマニノフの交響曲第2番。3管編成の管楽器メンバーも全て揃い横島先生の指揮にも力が入る。
お楽しみの夜の宴会は、各種地酒や団員手造りのビールなどを持ち込み、ヤンヤヤンヤの大賑わい。これが楽しみでオケを続けてきたようなものだ。

P4160250一夜明けた日曜の天城は雨、二日酔いのメンバーもいるが効率の良い練習が進んでいく。
午後は降り番のシューマンなので、近くの地元の人たちが運営している川沿いの小さな温泉に入れてもらう。入湯料100円を入り口のポストに入れる。地元の人たちと一緒に入ったが、これが熱い。尋常な熱さではなく全身が真っ赤になってしまった。

P4160252早々に退散し近くにある梶井基次郎の文学碑を見に行く。晩年の梶井が川端康成と出会った様子が刻んである石碑は川端康成の筆。ただ、以前は手入れが行き届いていたが、今日は周囲が荒れている様子。どうしたのだろうか。

P4160254帰りに菓子処「梅月」で家人へのお土産を購う。温泉饅頭にしようかと思ったが柏餅とどら焼きにする。すると店内に爽やかなフルートの調べが流れてきた。はて?と思い耳を澄ますと、なんとドビュッシーの「古代のエピグラフ」のアンセルメ編曲のオケ版ではないか。これは珍しい。
嬉しくなってイチゴ大福まで買ってしまった。写真はアリオンから出ていた原曲の「ビリティスの歌」集成。

P4160255なんとなく愉快な気分となり、車の窓を開け温泉に火照った体を冷やしながら車を飛ばす。車中で聴いたのはミトロプーロス指揮するマーラーの第8番、ウィーンでのライヴ。ウィーンフィルが燃えた白熱の名演だ。
家に着いたら鼻水が出てきた。調子に乗って風邪をひいてしまったようだ。

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2006年4月14日 (金)

ミケランジェリのシューマン

仕事に追われた長かった一週間がようやく終わる。とはいえ明日も仕事で、その後夜から天城での合宿に参加予定。
昨日の練習でシューマンのピアノ協奏曲の演奏をいろいろと聴きたくなった。

P4140249今日聴いたのはミケランジェリのライヴ。ミトロプーロス指揮するニューヨークフィルとの共演1948年11月21日のライヴで、ウォーレンシュタイン&ロスフィルとのフランクの交響的前奏曲とガリエラ指揮するミラノスカラ座管によるグリーグのピアノ協奏曲のいずれも40年代のライヴ録音がカップリングされている。イタリアのレーベルAuraから出ていたCD。

シューマンはミケランジェリとミトロプーロスという鬼才二人のぶつかり合いが聴きもの。
ミケランジェリのシューマンにはいくつかの録音があるが、この演奏は最も緩急の落差の大きいスリリングな演奏。最後の音が終わらぬうちに盛大な拍手が沸き起こっている。
ただし録音は良くない。しかし、このような録音でもミケランジェリのクリスタルガラスのような輝かしい七色の音色は充分感じ取れる。全く独特の音だ。

昨日あれほど苦労した第3楽章の難所も、この演奏で聴くとごく自然に音楽が流れていて、全然難しそうには聴こえてこない。これがプロの技というものだろうか。

フランクはシューマンに輪をかけた録音の悪さで聴きとおすのが辛い。一方のグリーグは名匠ガリエラの落ち着いた指揮ぶりが光る名演。こちらの録音は多少は聴ける水準。

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2006年4月13日 (木)

シューマンのピアノ協奏曲

年度の変わり目の送別会と歓迎会が見事に練習日と重なり、3週間ぶりのオケ練習参加となってしまった。今日は降り番のシューマンのピアノ協奏曲が練習の中心なので、練習時間の大部分は客席で観戦。

指揮は横島先生、ピアノはソリスト合わせの日まで弾いてくれることになった工藤真希子さん。代弾きとはいえ相当弾き込んで来ている。骨太な音色でなかなか良いが第3楽章のピアノの流れとオケのリズムの決めが難しい。何度やっても合わない。

思わずスコアを見る。合わない部分の要所要所にはシューマンはアクセントを克明に書き込んでいた。このアクセントを見落とすとオケとピアノは絶対に合わない。オーケストラとピアノを知り尽くしたシューマンの曲の奥深い魅力と演奏の難しさをあらためて発見した思いがする。

後半30分ほどはラフマニノフの第1楽章の練習となった。主部のアレグロモデラートで横島先生は思い切りテンポを揺らす。どうやら譜読みから音楽的な表情造りの段階に入ったようだ。明後日はいよいよ天城で合宿だ。練習も佳境に入ってきた。

ヤフオクで落札したLPが届いた。
P4130246今回はセット物2つで、リフレクセから出ていた全10巻60枚組音楽史のシリーズ「Stationen Europaeischer Musik」の第3巻ドイツ盤。ランディーニやプレトリウスの作品に加えてスペインのルネサンス音楽なども入っている。
演奏者はリンデコンソート、サヴァール、ビンクリー、エリック・エリクソンなど実力者揃い。ゴルフボールのクローズアップのユニークなジャケットが面白い。

P4130245もうひとつは、有名なドラティのハイドン交響曲全集から82番から92番までの交響曲と協奏交響曲の入ったDECCAの6枚組ドイツ盤LP。
いずれも半端物であったためか一枚あたり300~500円。

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2006年4月11日 (火)

前橋汀子ヴァイオリンリサイタル

今日は、沼津市民文化センターでおこなわれた前橋汀子ヴァイオリンリサイタルに行く。明日の大きな会議の資料作製に追われ、職場を飛び出した時は開演時間を大きく過ぎていた。前半のベートーヴェンの「ロマンス第2番」と「クロイツェルソナタ」は聴き逃したものの、仕事に疲れた頭には後半の小品集で充分。

後半は「モスクワの思い出(ヴィニァフスキ)」、「アヴェマリア(シューベルト~ヨアヒム)」、「ウィーン奇想曲(クライスラー)」「感傷的なワルツ(チャイコフスキー)」「ノクターン(ショパン~ヨアヒム)」「ハンガリー舞曲第5番」「ツィガーヌ」など、これだけで盛りだくさんなプログラム。しかもアンコール3曲。

前橋汀子のヴァイオリンは何度が聴いたことがあるが、かつてフルネ&都響で聴いたショーソンの「詩曲」の名演が忘れられない。

今日のリサイタルでも艶のある音色は健在。特にチャイコフスキーやショパンのように遅いテンポでたっぷりと聴かせる曲が良い。一方のヴィニアフスキやたっぷり歌わせ過ぎの「アヴェマリア」は今日の自分の体調ではちょいと重い。

外で激しい雨が降りしきる中、弦楽器にとって万全なコンディションとは言えないが、曲が進むほどに楽器が豊麗に鳴りはじめた。
「ツィガーヌ」序奏での厚い妖艶な音には、思わず身を乗り出してしまった。髪を振り乱しての後半も印象的。アンコールは「タイスの瞑想曲」が良かった。この種の小品を弾かせると実にうまいものだ。

それにしてもこの人、自分が最初に聴いた20年以上前と容姿がほとんど変わっていないのには驚いた。ピアノはイーゴリ・ウリアシュ。

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2006年4月10日 (月)

ホースレイとモラルトのモーツァルト

今日はヤフオクで購入した二つのモーツァルト演奏を聴く。

P32502011枚は、天才ホルニスト、デニス・ブレインとの共演で知られるコリン・ホースレイのモーツァルト。
今日聴いたLPはモーツァルトのピアノ協奏曲第14番K449とピアノと木管楽器のための五重奏曲K452とのカップリング、コンチェルトはバージル・キャメロン指揮のフィルハーモニア管、クインテットはブレイン管楽合奏団が共演している。EMI原盤の東芝から出ていた国内赤盤LPで、ヤフオクでは他に競合する人もなく500円。

この2曲はほぼ同時期に作曲された曲で、おそらくこのカップリングがオリジナルだと思う。ブレインと共演したクインテットは何度も再発されCDでも現役だが、ホースレイの弾くピアノコンチェルトは、一度出ただけで忘れ去られているのではないか。

演奏は2曲とも素晴らしい。粒立ちのはっきりとした音と確かなテクニックの持ち主のホースレイだが、コンチェルトの第2楽章では純な叙情がごく自然に流れていて実に素晴らしい。
この誠実すぎて幾分控えめな音楽造りが、ホースレイの名が広く知られることなく忘れ去られた原因かもしれないが、モーツァルト中期のピアノコンチェルトはこのような演奏が特に好ましいよう思う。
それにしてもこの14番の第2楽章の美しさはなんとも形容し難い。モーツァルトのピアノコンチェルトの中でも特に際立った名作だと思う。

クインテットでのブレインのホルンは相変わらずの天才肌のお仕事で全く文句のつけようもないが、コンチェルトでのキャメロン指揮の素直な伴奏にも不満はない。

P3250215もう一枚はR.シュトラウスの甥のドイツの指揮者ルドルフ・モラルト指揮するウィーン響によるモーツァルト歌劇序曲集。
「フィガロの結婚」や「魔笛」などのおなじみの曲に加えて「イドメネオ」「皇帝ティトウスの慈悲」などの7曲の入ったフィリップスのお買い得10吋モノラル盤。ヤフオフで200円。

こちらはいささか詰めが甘いノンキなモーツァルト。「魔笛」など管楽器の入りが微妙にずれていたりする。「フィガロの結婚」や「後宮からの誘拐」などは劇場的な気分が横溢していて楽しめたが、「ドンジョバンニ」はモーツァルトに不可欠な生き生きとした躍動感が不足し鈍重な印象だ。

当初詰め込み過ぎで音が丸く聞こえたが、カートリッジをデンオンのモノラル専用カートリッジに変えたら引き締まって良い音になった。

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2006年4月 9日 (日)

ギュットラーのトランペット

今日は朝から親戚の結婚式。結婚式場のチャペルでオルガンの伴奏に乗り、トランペット奏者がクラークのトランペット・ヴォランタリーを吹く中で新郎新婦が入場。なかなか味のある演出だ。

披露宴が早めに終わったので、韮山まで次の定演で共演する海瀬さんの自宅へ定演のポスターを届けに行く。楽しい音楽談義の後、近くにある鎌倉北条氏ゆかりの「願成就院」の境内を歩く。桜も散り始め、北条時政や足利茶々丸の眠る境内には静けさだけが支配し誰もいない。

P4090240今日は旧東ドイツを代表するトランペット奏者ギュットラーの演奏を聴く。トレルリ、ファッシュ、グロッシ、アルビノーニ、ヘルテルといった17世紀イタリア、ドイツの作曲家たちのソナタやコンチェルトを集めたアルバムで、ETERENA原盤の徳間音工が発売したLP。
レーグナー指揮のベルリン室内管が伴奏を付けている。

雅やかで気品のあるギュットラーの音色とレーグナーのしっとりとした伴奏。いくぶん渋い落ち着いた演奏に心が洗われるようだ。74年録音でアナログのしっかりとした再生音も心地よい。

P4090244沼響のホームページに、聴き比べコラム「新世界よりを聴く」をアップしました。今回はスプラフォン新版を使用したインバルの演奏。連載96回め。

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2006年4月 8日 (土)

クラシカル・バーブラ

雷を伴った猛烈な雨が止んだ後明るい青空が覗く。時が経つにつれて次第に黄砂で遠くの山々が霞んで来た。目まぐるしく天候が変化した一日。

P4080237土曜の静かな晩、今日は女声ボーカルが聴きたくなった。レコード棚から取り出したのは私のお気に入りの一枚で、バーブラ・ストライザンドが歌うドビュッシーやフォーレ、カントルーヴ、シューマン、ヘンデル、ヴォルフなどの歌曲を取り上げた「クラシカル・バーブラ」というアルバム。

第一曲のドビュッシーの「美しい夕暮れ」からオーケストラの幻想的な響きに乗って耳元でそっと囁くような甘いバーブラの歌声が部屋に漂う。

全てスローバラードの遅いテンポの曲ばかりだが、曲の絶妙な配列と作曲者の個性を見事に捉えているバーブラの確かな歌唱力のおかげで、あっという間に最後まで聞きとおしてしまう。
幻想的なドビュッシーと、ちょっぴり艶のあるヴォルフの「語らぬ愛」が特に印象に残る。
ヘンデルの歌劇「リナルド」や「感謝の歌」も格調の高い感動的な歌唱だ。全て原語で歌っているのも素晴らしい。

このアルバムのプロデユーサーは、坂本龍一が尊敬しているというクラウス・オーガーマンという人で、編曲と指揮、ピアノ伴奏までおこなっている。オケはコロンビア響。
このオケアレンジが実に良く、ドビュッシーの伴奏などドビュッシー自らの編曲と錯覚してしまうほどだ。もともとオケ版のあるフォーレの「パヴァーヌ」や「カルミナ・ブラーナ」はほぼそのまま、そしてヴォルフ、シューマンのようにピアノ伴奏が大きく物を言う曲はアレンジせずに自らがピアノを弾いている。このアルバムの最後を飾るの「I love you」はオーガーマンの曲だが他の作品との違和感は全く感じられない。

このアルバムを聴いたバーンスタインは「彼女は私達に尋常ならざる音楽体験をさせる」という言葉を残している。

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2006年4月 7日 (金)

パリ・ギャルドのバッハとシュミット

昨日は職場の歓迎会だったため音楽は聴いていない。

P4070236今日は、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の演奏を聴いた。
「トッカータとフーガ」や「ハンガリー狂詩曲第2番」、スッペの「詩人と農夫」序曲などが入ったおそらくこの楽団の録音としては最も有名なアルバム。
1961年の来日時に録音された「牧神の午後への前奏曲」とフローラン・シュミットの「デユオニソスの祭」、「軍艦行進曲」などの日本の行進曲集と組み合わせた2枚組LPだ。

いずれも60年代のジュリアン・ブラン楽長時代の録音で、行進曲集はレイモン・リシャール副楽長が振っている。10数年前に静岡市の中古レコード店で購入したもの。2枚組500円で投売りしていて、このお店はまもなく店じまいしてしまった。

フランスの管楽器独特の華やかな中にもしっとりとした気品の漂う音色に酔う一枚。
メンバー全員がパリ音楽院の卒業者で、この録音当時はパリ音楽院管と掛け持ちの団員もいたという。統一された奏法、緻密なアンサンブルと同一の音色感で全ての楽器が見事に溶け合っている。現在もメンバーの多くがパリの私設オケや音楽大学の教授を兼務している。ウィーンフィルの吹奏楽版のようなものだ。

ストコフスキーのゴージャスなバッハとは対照的な室内楽風のバッハだった。「牧神の午後への前奏曲」もとても吹奏楽とは思えない柔軟な動きを聴かせてくれる。ソロも極上。
ギャルドのために書かれた「デユオニソスの祭り」では、ダイナミックな躍動感と原色の絵の具をキャンバスにぶちまけたような音の洪水に圧倒される。

ロジェ・ブトウリー楽長の時代になってからは楽器の編成も変わってしまい。この独特な響きを聴くことができなくなってしまった。

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2006年4月 5日 (水)

ボールトのヴォーン・ウイリアムス

今日は朝から雨、駐車場から職場までの間狩野川の堤防沿いを歩く。
途中の小学校の敷地内に樹齢数十年の見事な欅が10数本並んでいたのだが、校舎の新築工事で無残に切り倒されてしまった。お情けに苗が数本植えてあったが、あの威容を取り戻すことができるのだろうか。

P4050235今日はボールトのヴォーン・ウィリアムスを聴く。A.デーヴィスの交響曲全集を聴いて以来、苦手のヴォーン・ウィリアムスが身近になった。
ボールトのヴォーン・ウィリアムスは定評のあるところだが、聴いたのはロンドンフィルとの有名な全集ではなく、ロンドン響との1949年録音の交響曲第5番とロンドンフィルとの「A Song of Thanksgiving」と「ひばりは揚る」がカップリングされた一枚。Dutton から出ているCD。
交響曲第5番は、第3楽章スケルツォのオリジナル版と改訂版の両方が収録されている。

最初の2曲は第二次世界大戦中に作曲された曲で、特にオーケストラに合唱、ソプラノとナレーターとオルガンが加わる「A Song of Thanksgiving」は第二次世界大戦の勝利を祈って作曲されただけに、親しみやすい旋律とブラスの輝かしい吹奏が印象的な曲。1944年にボールトによって録音され、終戦の五日後に全英に放送されたという。

いずれもボールトの確信に満ちた雄大な演奏に圧倒されるのみ。やはりボールトは素晴らしかった。DuttonのCD復刻も見事なものだ。「ひばりは揚る」は一転して、控えめでしみじみとした音楽を聴かせてくれる。

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2006年4月 4日 (火)

カペルのプロコフィエフ

早朝、カカカカ・・・・という異様な音で目が覚めた。どうやらここ数年姿を見せなかった啄木鳥が裏の山に来たらしい。時計を見たらまだ5時前だ。
再び寝るには中途半端な時間なので、そのまま家の周りを散歩する。啄木鳥の音は木々の奥から聴こえてくる。歩きながら、前の晩もう少し早く寝ておけばよかった、と後悔する。年度始めの多忙な日を睡眠不足のまま迎えてしまった。

P4020230今日はアメリカのピアニスト、ウイリアム・カペルのプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を聴く。
1949年2月20日のライヴ録音で、ストコフスキー指揮のニューヨーク市響がバックを付けている。カップリングはラフマニノフの交響曲第2番で、こちらのオケはハリウッド・ボウル響。

荒馬が暴走しているかのような目まぐるしいテンポの変化に、さしものストコフスキーもたじたじの凄まじいライヴ。カペルの強靭な打鍵、気合の入れ方も尋常でない鬼気迫る演奏。あまりのテンションの高さに第1楽章が終わったところで盛大な拍手が入る。
若気の至りで突っ走ったかのような演奏だが、カペルはこの若さを永遠に刻んだまま30才の若さで飛行機事故のために逝ってしまった。

P4040234このライヴの一ヶ月前のスタジオ録音も聴く。こちらの伴奏はドラティ指揮のダラス響。
録音も良くカペルの硬質で美しい音も見事に捉えている。力強さと深い叙情が絶妙なバランスを見せている名演。


沼津交響楽団のHPに聴き比べコラム「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。今回はこのカペルのプロコフィエフとカップリングされているストコフスキーのライヴ。連載12回目。

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2006年4月 3日 (月)

スゼー、コルトーの詩人の恋

気温も上がり爽やかな素晴らしい天気となった。昨日の風雨に耐えた満開の桜が眩しく目に映る。

P4030233今日聴いたのは、若き日のスゼーの歌うシューマン「詩人の恋」全曲。1956年のパリでのライヴで伴奏はコルトー。
チェトラから出ていた国内盤LPで、A面はフラグスタートが歌うR.シュトラウスの「4つの最後の歌」、伴奏はフルトヴェングラー指揮のロンドンフィルでこちらは1950年録音。

スゼーの声は同じフランスの名歌手モラーヌの気品豊かな歌唱には及ばぬものの、のびやかで息の長い歌を聴かせてくれる。後のステレオ期の声よりも太い声の力強いシューマンだ。第7曲で選択譜の低い方の音符を歌っているのは、コルトーの指示だろうか。

コルトーの「詩人の恋」はパンゼラとの有名な録音もあるが、ここでも詩情豊かな見事な伴奏を聴かせてくれる。往年の艶が失せ音が濁る部分もあるが、技巧の衰えはさほど気にならない。シューマンを得意としたコルトーの貴重な歌曲伴奏の遺産だ。

P4020231あとひとつ、平凡社のファブリ名曲集モーツァルト編から「アヴェヴェルムコルプス」とクラリネット協奏曲の入った一枚を聴く。演奏はB.コルラディーニ神父の指揮するチェラーノ聖歌隊、カンテルリ四重奏団の伴奏。クラリネット協奏曲はヨースト・ミヒャエリスのクラリネット、ライヒェルト指揮のウエストファーレン管、ブックオフのジャンクコーナーで見つけたレコード。

ファブリのVOX原盤録音では、カサドの弾くドヴォルザークのチェロ協奏曲が生々しい再生音だったので期待したのだが、こちらは霞がかかったような腰が抜けた音でがっかり。演奏も冴えない。特に「アヴェヴェルムコルプス」は少年合唱の純な声は良いが、このような隙間風の吹くような稚拙なアンサンブルでは曲の良さが伝わってこない。
名指揮者カンテルリの名を冠した四重奏団もルーティーンな伴奏に終始。

「アヴェヴェルムコルプス」は、未だに決定的な名演というものに出会ったことがない。演奏が難しいのだろうか。

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2006年4月 2日 (日)

マリナーのエニグマ変奏曲

今日は出勤、職場の窓から7分咲きの香貫山の桜を眺めながら黙々と仕事を消化する。
午後から振り始めた雨が夕方には雷を伴いながら強烈な風雨となった。ちょうど帰宅の時期と重なり、ズボンがずぶ濡れとなってしまった。この風で、桜も散ってしまったかもしれない。

P4020229夕食後に、先日いただいた300枚余りのLPの中からネヴィル・マリナー&コンセルトヘボウ管による「エニグマ変奏曲」を聴く。フィリップスのLPで「威風堂々」の1,2,4番とのカップリング。1976年録音。

膨大な録音量を誇るマリナーも、もう80の齢を超えた。マリナーは、ちょうどこの録音の頃から大編成オケの録音が増え始めたと記憶している。
直前に録音された「惑星」が発売された時、日本フォノグラムが一大キャンペーンを張り各地でレコードコンサートが開かれた。
当時学生だった私は、行きつけの名曲喫茶でおこなわれたレコードコンサートでマリナーの「惑星」を聴いたが、小さなガラスの小瓶に入った金平糖をお土産に頂いたことだけしか覚えていない。星型の金平糖と惑星をひっかけたのだろうか。

このエルガーは情に流されないスマートで明快、曲の構造が手に取るように判るような演奏だが、コンセルトヘボウ管のウェットなオケの響きが無味乾燥に陥る寸前で救っている。
むしろ楽しめたのは「威風堂々第2番」で、有名な第1,4番よりもよほど面白く聴こえてくる。つまらぬ曲を面白く聴かせるのがマリナーの個性なのだろうか。

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2006年4月 1日 (土)

バルトーク自作自演とデファイエ・サックス四重奏団

P4010225今日はバルトーク自身が弾く「ミクロコスモス」抜粋を聴く。日本コロンビアのLPで94番以降の曲が32曲入っている。1940年ころの録音らしい。バルトークの自作自演録音では、日本コロンビアの「二台のピアノと打楽器のためのソナタ」や「子供のために」の放送録音がバルトークの肉声も聞ける貴重なものだった。CD化されているのだろうか。シャイで優しげなバルトークの声が印象的だった。

この「ミクロコスモス」も密やかに呟くようなタッチで淡々と弾いている。哀愁を帯びたブルガリアの民族音楽のメロディーも切々と心に迫る。

P4010226ダニエル・デファイエ・サックス四重奏団によるピエルネやシュミットなどの作品を収めたアルバム。1976年の録音で、来日記念盤として発売されたと記憶している。この時の来日公演はNHKテレビで放映され、従来のサキソフォーンのイメージを吹き飛ばすような格調の高さと幅広い表現力、そして華のある音色に痺れて夢中になって聴いたことも懐かしい思い出だ。ヤフオフで購入。

この中のリヴェの「グラーベとプレスト」は、テレビで聴いた時には驚異的なテクニックと躍動感に圧倒された記憶があるが、このアルバムではしっとりと落ち着いた演奏に聴こえる。30年の時の経過の中で、演奏の印象が自分の頭の中で理想の形に変わってしまったのだろうか。

P3190176沼津交響楽団のHPに聴き比べコラム「新世界よりを聴く」をアップしました。
今回はイタリアのオペラ指揮者として名高いパターネの「新世界より」。連載95回目

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