昨日沼響22回目の定演が終了した。シューマンのピアノコンチェルトとラフ2という渋いプログラムながら1000人を超える入場者となった。やはり昨年音コン1位となった海瀬京子さんの出演が効いたようだ。
金曜の前日練習では、ピアノの輝かしさに比べオケの反応はいまひとつ。ラフ2も全曲を1回通したのみで時間切れとなってしまった。やはりアマオケの宿命か、一週間の仕事の疲れを背負った練習となるとメンバーの表情にも疲れが見える。自分は帰宅後すぐ寝るつもりが結局床に入ったのは1時過ぎとなってしまった。翌日の集合が午後2時なので、ちょっと朝寝坊しようと思ったがその後予想外の展開となり調子が大幅に狂ってしまった。
朝五時に突然の電話で叩き起こされる。何事かと思ったらPTAの連絡網だった。
今日が球技大会の当日だったのを思い出す。天候不順のため急遽体育館でやることになったという連絡だった。「今日は出れません」と言ってあるのに。
頭に血が上り寝るに寝られず睡眠時間4時間のまま、昼すぎに文化センターへ向かう。
ホールでは海瀬さんが黙々と練習している。体調も万全のようで安心する。
いよいよGPの開始、まずコンチェルト全曲を最初から通す。ピアノもオケも昨日とは段違いの出来で驚いた。音楽の流れに実にうまく乗っている。これは良い調子。名演だ。
続くラフマニノフも、シューマンの調子そのままにオケが良い方向に向かっているのがよくわかる。ただし自分は睡眠不足で集中力に欠け絶不調。
ここでひとつ嬉しいサプライズがあった。5月27日は横島先生の誕生日だったのだ。GPの最後に先生に内緒でケーキを用意し、皆でハッピバースデーの大合唱。先生の嬉しそうな顔も楽しい。良い演奏会となりそうな予感が団員の中に満ちてくる。
沼響の定演は20回定演の台風直撃以来雨ばかりだが、今回も朝から雨。だが開場の一時間前からお客さんが並び始める。ありがたいことだ。
開場寸前には出口まで長蛇の列。当日券の売れ行きも良い。フルートとブラスアンサンブルのロビーコンサートの後、いよいよ開演。
コンチェルト降り番の自分は舞台袖でインペクと待機。いよいよ海瀬さんが楽屋から出てきた。青のシックなドレス。一言声をかけるつもりだったが、人を寄せ付けない厳しさが全身から漂っている。これから真剣勝負に向かうプロの表情だ。軽く柔軟体操をしながら独特の呼吸法で集中力を高めている姿はとても20をちょっと過ぎた女の子には見えない。やはり彼女は只者ではなかった。
演奏は素晴らしかった。力強さと叙情の対比も見事、多少荒削りなところもあるがオケを挑発しながらバリバリ弾いていくところなど、大器の貫禄充分だ。
特にアンコールのラフマニノフの「楽興の時第4番」は、彼女の最も得意な曲だけに圧倒的な演奏だった。すぐそばで聴いていた団員の一人は、目を潤ませながら私に曲名を聞いてきた。舞台から帰ってきた彼女は普通の女の子の表情に戻っていた。お客さんのサインにも慣れない手つきで気軽に応じている。
休憩の後いよいよラフマニノフ。結局本番が一番良い出来だったと思う。特に第3楽章の出来は良かったのではないかと思う。馴染みのない曲でお客さんが寝てしまうのではないかと心配だったが、舞台から会場を見渡しても寝ている人はほとんどいない。一時間あまりをじっと真剣に聴いてくれる。楽章間の静けさも不気味なほどだ。
ただし自分自身の出来は最悪。途中で緊張の糸が切れ、何度も音楽の流れを見失ってしまった。今回は特に体力の衰えを痛感する。若い頃は多少体調不良でも精神力で乗り切れたのだが。
ともあれ定演は無事終わった。今回はソリストと深い関わりがあっただけに特に印象深い演奏会となった。
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