« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »

2006年6月に作成された記事

2006年6月30日 (金)

沼響定期総会

昨日は仕事で伊東に行っていた。中心街を歩くが、昼間だというのにシャッターの閉まった店が続く。地方都市の商店街はどこも同じような状態だが、長引く不況に歴史のある個人商店の多くが消えていく。傍らで大きなマンションの建設が始まっていた。

仕事を追えた後にオケの練習に顔を出す。二週間ぶりとなってしまったが、今日は年一回の定期総会の日だ。欠席するわけにはいかない。
団員の8割方が顔を揃え、昨年の活動報告や会計報告、今年の予算や活動予定が次々と承認されていく。新体制の役員の選出も順当に終わる。

沼響も創設当時の家内工業的、自転車操業的なアバウトさから、20年を経て、成熟した組織となった。役員の人材にも本当に恵まれていると思う。今後の課題は、世代交代をいかにうまく図ることが出来るか、にかかっている。

沼響独特の大らかで和気藹々とした大陸的な雰囲気は、創立当時から変わらない。これは初代事務局長だった亡き鈴木さんの暖かな人柄がそのままが団のカラーとして定着したとしか思えない。
鈴木さんは故芥川也寸志さんが率いていた新響設立にも係わった筋金入りのアマオケマンだった。

P6010367昨日は音楽は聴いていない。今日も帰宅が遅くなってしまったが、ネヴィル・マリナーの指揮するレスピーギの「古風な舞曲とアリア」全曲から第二組曲を聴いた。オケはロスアンジェルス室内管の国内盤LP。

モントゥー盤のような飄々とした軽みには及ばないが、モントゥーの弟子であるマリナーも溌剌としたリズム感でなかなか楽しく聴かせてくれる。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月28日 (水)

リパッティ、ブザンソン告別演奏会

P6280452今日はビゼーのオペラが聴きたくなって、歌劇真珠採り」のハイライト盤を聴く。独EMIのLPで、チェコの指揮者ペシェクがロッテルダムのオペラハウスのメンバーを振っている。かなり以前に秋葉原のレコファンで購入したLPだが、ずっと聴かないままだった。
針を下ろしてみると、ちょっと珍しいほど低水準の演奏。テノールなど高音部分が限界ぎりぎりで歌っていて、聴いていて苦しくなってきた。ペシェクの指揮も雰囲気の乏しい単調なもの。

P6280455このまま今日が終わるのも寝つきが悪いので、「リパッティのブザンソン告別演奏会」を取り出した。こちらも独EMIで、Da capoシリーズのLP。
この中から第一曲めのバッハのパルティータ第1番と、シューベルトの即興曲を聴く。あまりにも有名なリパッティ最後の演奏会ライヴ。
聴衆の拍手に続き、リパッティの羽毛のような軽いタッチの指慣らしの音が聞こえる。
続いてバッハの音楽が始まると、力強さの中にふわりとした精妙な音楽が聴こえてくる。
とても病人とは思えないしっかりとした音楽運びが驚異的だ。シューベルトもなんと軽やかで自然な音。
このリパッティの最後の演奏会の素晴らしさについてはいろいろな所で言い尽くされているが、私にはリパッティの音楽に病的な青白さを感じたことはなく、健康的な力強さを感じることの方が多い。この最後の演奏会の前半のプログラムでも同様だ。確かにフラッとする危うい部分もない訳ではないが、リパッティはひたすら自分の音楽を黙々と引き続けている。誰のためでもない自分自身のために。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月27日 (火)

コレギウムアウレウムのモーツァルト

ここ一週間ほど自転車で通勤する日が続いているが、ちょうど近所の工業高校の通学の時間と重なっている。そのマナーの悪さは目を覆うばかり、昨年バイクで通っている時など、いきなり飛び出した自転車の高校生を避けるために転倒。ズボンが裂けてしまった。
幸い軽い打撲で済んだものの、その高校生はスタコラと遁走してしまった。

今日はコレギウム・アウレウムのモーツァルトを聴く。70年代に古楽器演奏のパイオニアのような形でハルモニアムンディが組織したコレギウム・アウレウム。
今ではすっかり時代遅れの感があるが、そのロマンティックで典雅な響きは捨て難いものがあり、特にティチクのプレスしたハルモニアムンディのLPの独特の艶のある響きが好きで、中古屋で目にすると思わず手が伸びてしまう。

P6270451今日もそんな一枚で、ディヴェルティメントK.563。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各一本のための曲で、モーツァルトはこの編成で書いたのはこの一曲だけだ。
ディヴェルティメントとはいえ室内楽曲のこの曲はコレギウム・アウレウムのメンバーは極めてストイックに演奏していく。

P6270450もうひとつ、同じくコレギウム・アウレウムの交響曲第40番と第41番。これは1991年のモーツァルト没後200年の際にBMGビクターが出した「素顔のモーツァルト」というCD3枚組シリーズ物のひとつ。かつて駅前のデパートで1セット500円で投げ入りされていたもの。

緻密なアンサンブルの見事な演奏。特に一つの強い意思で貫かれた第40番は、とても指揮者なしの演奏には聴こえない。この集団が極めて高度な技術を持った演奏家たちの集合体だったことが如実に判る演奏だ。

沼響のHPに聴き比べ「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はケルン放送響のシェフ、ビシュコフの演奏。フジテレビのドラマ「妹よ」で実際に使われた演奏です。連載28回目

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月26日 (月)

ボールトのワーグナー

今日も朝から雨。昨日中途半端な聴き方となってしまったボールトのシューベルトを聴き直した。
BBC響とのライヴの方だが、ぼやけた録音の印象は変わらないものの、聴いているうちに演奏の素晴らしさに録音の不備が気にならなくなってきた。これはスタジオ録音を大きく上回る名演だ。

ボールトの音楽は、作品自らの力によって聴き手に大きな感銘を与えるという自然体の音楽造り。それが第2楽章から後半にかけて、次第に大きな説得力を持ってじわりじわりと迫ってくる。とりわけ音楽が大きく開放される終楽章の熱気は尋常ではない。オケも大きく燃えている。

P6260449続いてボールトのワーグナー。EMIから出ていたワーグナー曲集第3集で、「ファウスト」序曲、歌劇「リエンチ」序曲と「パルシファル」から前奏曲と聖金曜日の音楽、二つの場面転換の音楽他が入ったCD。
オケはロンドンフィル。1974年の録音。

この中の「パルシファル」からの音楽を聴いてみる。先日クレンペラーの「タンホイザー」序曲に大きな感銘を受けたが、ボールトのワーグナーも決してクレンペラーに劣るものではない。密度の濃い充実した響きのフォルティシモと神秘的なピアニシニモ。オケを確実にコントロールしながら冷静に壮大なワーグナーの世界を築き上げている。

P6260448ついでにボールトでウォルトンの交響曲第1番の第一、ニ楽章を聴いてみた。Pye原盤の国内盤LPだが、ステレオ録音にもかかわらず録音があまりにも悪い。このふやけた響きではせっかくの名演も台無しだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月25日 (日)

ボールトのシューベルト

昨日良い天気から一転して本日は午後から雨、久しぶりの休日で一日ゆっくり休みたいところだが、朝から町内の子供会の古紙回収に回る。軽い汗を掻いたついでに、雨が降らぬ間に家の桃を収穫する。ところが大部分が虫やハクビシンにやられていてがっくり。

そして夜はお寺の役員会。役員の大部分は人生の大先輩方たちで、自分一人で平均年齢を引き下げている。続く宴会も最年少ということで、コンパニオンと一緒にお酌に回る。

P6250445いささか気疲れして帰宅後聴いたのは、ここ連日聴き続けているシューベルトの交響曲。
今日はボールトの指揮する「ザ・グレート」と呼ばれている交響曲第9番を聴く。1972年録音のEMIへのスタジオ録音。オケはロンドンフィル。

アルコールが回っている頭に、この「天国的な長さ」の交響曲。
聴き始めて数分後、第1楽章主題前の鮮やかなアチェレランドに感心した直後に睡魔に襲われてしまった。目を覚ましたらまだ第3楽章が鳴っていた。後半は真剣に聴きました。メリハリのついたがっしりとした風格溢れる名演だと思う。

P6250446もうひとつ1969年のプロムスのライヴのボールトの同曲を聴いてみる。こちらはBBCレジェンドのCD。オケはBBC響。
ステレオ録音だが、巨大なロイヤルアルバートホールの録音のためか、オケが遠くから聴こえる。ちょうどNHKホールの一番遠くの席で聴いているような音だ。それでいて聴衆のざわめきが身近にリアルに聴こえているのが不思議。

スタジオ録音よりも遅いテンポで、きわめて柔らかな響きの演奏。シューベルトのメロディの美しさが十分に伝わってくる演奏だが、ふわふわとした心地良い響きに再び眠くなってしまった。酔った頭にもその名演ぶりは伝わってくるが、体調が万全の時にちゃんと聴き直そうと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月24日 (土)

ブレックのシューベルト

ここ数日、通勤も含め天気の良い日は自転車を乗り回している。酸素が体の隅々に行き渡るような気がしてすこぶる気分が良い。

今日は昨日に引き続きシューベルトの交響曲を聴く。
P6240445聴いたのはハリー・ブレック指揮のロンドン・モーツァルトプレーヤーズによる交響曲第4,5番の入った一枚で、英HMVの初期LP。
最近ヤフオクで格安で落としたものだが、埃まみれのためディスクウォッシャーで洗浄してから聴いた。傷が多く、時おり音飛びが有り閉口する。しかし演奏は一級品。自然体に流しながら実に爽やかで密度の濃い演奏だった。
第4番の第2楽章のロマンティックな歌などなかなかのものだ。この中の第5番はかつて新星堂からCDが出たことが有る。

当時のロンドンのオケの首席クラスを集めたオケが実にうまい。特にクラリネットのソロのうまさが際立っている。このソロは、伝説的名手フレデリック・サーストンのような気がする。ホルンにはデニス・ブレインが加わっているようだ。

P6240443続いてクレンペラーのワーグナー。フィルハーモニア管を振ったEMIの管弦楽曲集から歌劇「タンホイザー」序曲、歌劇「リエンチ」序曲。CDも所有しているが今日は国内盤LPを聴く。
気宇雄大なワーグナー、細部の仕上げも入念で、クナッパーツブッシュとはまたタイプの異なるスケールの大きさを感じる。
タンホイザーはドレスデン版だが、この曲はやはりドレスデン版に限る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月23日 (金)

クライバー父子のシューベルト

今日は朝からワールドカップ日本vsブラジル戦を見てしまった。1点先取の健闘は見せたものの実力の差は歴然だった。4年後を期待したいところだが、うまく世代交代を図ることができるだろうか。道のりは険しい。

仕事中は感じなかったが、帰宅してから急に眠くなってきた。今日はクライバー親子のシューベルトを聴く。
P6230442聴いたのはエーリッヒ・クライバーの指揮する交響曲第5番。北ドイツ放送響を振ったライヴ録音で、「20世紀の偉大な指揮者シリーズ」中の一枚。1953年録音のモノラルだが状態は極めて良好。シューベルトの愛らしい交響曲を父クライバーは颯爽と、そして幾分ロマンティックな翳りも漂わせながら進めていく。

P6230440P6230441もうひとつはカルロス・クライバーの指揮する交響曲第3番。オケはウィーンフィルのスタジオ録音。常に偉大な父の影を意識しながら演奏活動を続けていたカルロス・クライバー。この曲も明らかに父のレパートリーだ。曲は違えども演奏のスタイルは驚くほど父と良く似ている。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月22日 (木)

ブールのラヴェル

今日は母の誕生日なので仕事も早く切り上げ、早めに帰宅。オケの練習も休ませてもらい。家でささやかなお祝いをおこなった。

P6190424今日はフランスの指揮者、エルネスト・ブールのラヴェルを聴く。
聴いたのはドイツのhansslerから出ているCDで、ブールの手兵バーデン・バーデンの放送オケを振った一枚。「クープランの墓」、「古風なメヌエット」歌曲集「シェラザーデ」「ツィガーヌ」そして「ダフニスとクロエ」の二つの組曲が入っている。

P6220438ブールのラヴェルではフランスAstreから出ているCDがあり、こちらは「スペイン狂詩曲」「マ・メール・ロア」「優雅で感傷的なワルツ」「クープランの墓」が入っている。クープランの墓はhansslerと同じ音源だが、聴き比べるとhanssler盤の方が僅かに録音レベルが高いようだ。

P6220437「ボレロ」と「ラ・ヴアルス」もドイツIntercordのCDから出ていて、こちらは「展覧会の絵」も収録されている。

以上の3枚で、ブールの演奏でほぼラヴェルの主要な管弦楽作品が揃うことになる。録音は1967年から1977年。

これらの3枚からいくつかの曲を聴いてみたが、いずれもラヴェルの精緻を極めたオーケストレーションを驚くべき精密さで再現した素晴らしい名演だった。
これほど冷静で明晰なラヴェルは他に類を見ない。その硬質な音楽造りが時として冷たさを感じさせることもあるが、「マ・メールロア」終曲冒頭の神秘的な中に暖かさを秘めた開始など、実に感動的な響きを聴かせている。

「ツィガーヌ」のヴァイオリンは、80年代にイ・ムジチのコンマスだったピーナ・カミレッリが弾いている。これも、また渾身の情熱を秘めたとてつもない名演だった。

P6220439この演奏を聴いているうちに、来日公演で聴いたカミレッリ&イ・ムジチの「四季」の演奏を思い出した。
あの時の「冬」の第2楽章、カミレッリが聴かせたヒューマンな祈りに満ちたソロに会場全体が大きな感動に包まれていた。あれは本当に素晴らしいヴァイオリンだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月21日 (水)

カラヤンのロ短調ミサほか

手持ち音盤は現在完全飽和状態だが、ネット上のCD通販ショップやオークションで欲しいものがあるとついつい手が出てしまう。今日もアリアCDからCDが届いていた。

P6210435カラヤンの指揮するバッハの「ロ短調ミサ」全曲。1952~53年録音のEMI盤。
これはオケの実体に問題のある録音で、LPの発売当初はウィーン楽友協会管。実体はウィーンフィルとされているがウィーン響としているディスコグラフィーもあり、どうもはっきりしない。そして、管楽器のソリストはデニス・ブレインなどの当時のフィルハーモニア管の首席奏者たちが参加している。本日届いたCDの表記はウィーン楽友協会管&フィルハーモニア管によるウィーンとロンドンでの録音となっている。オルガンとチェンバロはカラヤン自身が弾いているという。

このCDにはおまけとして1950年録音の同曲のリハーサルが含まれていて、こちらのオケはウィーン響となっている。シュワルツコップとフェリアーという大物歌手が参加している録音。

P6210433続いてクナッパーツブッシュ指揮するウィーンフィルによる楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全曲。1950~51年録音のデッカへのスタジオ録音からNAXOSが初期LPからCD化したもの。何種かあるクナのマイスタージンガー全曲中で最も評判の悪い演奏。怖いもの見たさで購入したCD.どんな演奏だろう?

P6210436もひとつフリッチャイ指揮RIAS響の1951年録音からコルトーの弾くシューマンのピアノ協奏曲のライヴとティヴォール・ヴァルガによるバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番URANIA盤。
どうやらこちらもクナ盤同様、著作権切れのLPからの板起こしCDらしい。
特にコルトーのシューマンは、初出当時相当評判となったもの。

P6200429P6210432沼響のHPの聴き比べコラムに「新世界よりを聴く」をひさしぶりにアップしました。
今回はレヴァインの2つの録音。連載98回目。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月20日 (火)

マルティノンの「夏の牧歌」

ここのところ寝不足と不規則な食事、運動不足が崇り、ウエスト膨張気味で購入するズボンはアジャスターのついたものばかり、これでは完全に生活習慣病予備軍だ。

今日は天気も良いし、通勤に自転車を使うことにする。朝の渋滞の合間をスイスイと通り抜けるので、思いのほか通勤時間も掛からない。カルガモのつがいを眺めながら狩野川沿いの堤防を走る時などなかなか爽快。
だが、仕事で帰りが遅くなってしまうと辛いものがあることも事実。夜道の中、ペダルを懸命に踏んでもなかなか前に進まず、次第に空しい気持ちになってきた。

P6200433今日はマルティノンの指揮するオネゲルの「夏の牧歌」を聴いてみた。1953年録音でオケはラムルー管。マルティノンが世界に雄飛する直前のラムルーの常任指揮者時代の録音だ。
「マルティノン・フランス音楽集」というタイトルのエピック原盤のフィリップスの国内盤LP、他にドビュッシーやフォーレ、ルーセル、デユカスなどが入っている。
早いテンポでスイスイとすすめたスタイリッシュな演奏。毅然とした気品も感じられ、中間部の陽光が降り注ぐようなキラキラとした感覚も見事なものだ。

P6200434再録音も聴いてみる。こちらはフランス国立放送局管を振ったオネゲル作品集。「パシフィック231」、「ラグビー」、「クリスマス・カンタータ」が入ったEMIの国内盤LP。
こちらは旧録音よりも多少遅くなったが、標準よりも早めのテンポの明晰な演奏。内声部の細かな動きもはっきりと響いてくる。だが旧録音の溌剌とした気分はかなり薄れている。

P6200432さらにラムルー管時代のマルティノンを聴こうと、ルーセルの「バッカスとアリアーヌ」の2つの組曲が入ったエピック盤に手が伸びたが、B面のフルネのドビュシーの「小組曲」の演奏に聴き惚れ、今日は仕舞いとした。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月19日 (月)

岩城宏之の悲愴

今日は暑かった。昨日雨だったこともあり湿度も高い。
昨日は、昼過ぎに音楽仲間が遊びに来てCDやLPを聴きながら3時間ほどの音楽談義。彼は相当なオーディオマニアだったりするので、私のオーディオの組み合わせのポリシーのなさについて耳の痛い指摘をされてしまったが、元々音楽の聴き方がお互いに異なるのでさらりと聞き流す。

夜はワールドカップ三昧。日本VSクロアチア戦に引き続き、ブラジルVSオーストラリア戦まで見てしまった。
ブラジルは別格としても、日本の選手たちの個々の力量はオーストラリアやクロアチアの選手に劣るものではないが、チャンス時の集団としての打撃力と個々のプレーの有機的な連携が他のチームに比べて著しく見劣りがするように思う。昨晩のクロアチアとの試合もやっと引き分けに持ち込んだという印象だ。
ジーコと選手達の意思の疎通が、最後までうまくいかないまま本番に突入してしまったのではないか。

今日は録画しておいた岩城宏之の追悼番組を見た。1996年4月のN響定期で、チャイコフスキーの「悲愴」。岩城宏之の生前最後のN響定期出演の映像だという。
得意としていたチャイコフスキーだけにオケを豊麗に鳴らした壮大な名演だった。第3楽章のシンバルの1発も実に鮮やかだ。

P6190416若き日の録音も聴いてみる。岩城宏之が30代だった頃の1967年録音で日本コロンビアのLP。CDでも出ているようだ。
実に丁寧な第1楽章、過剰なほど叙情的な第2楽章、最後の二つの楽章の赤裸々な感情の爆発など、やりたいことを思い切りぶつけたかのような体当たりの演奏。その分細部の仕上がりに粗が目立つのはやむおえない。

P6190428ついでに岩城宏之の録音歴の初期のアルバムも聴いてみる。
聴いたのはクラシック音楽でなく、「荒城の月」や「浜辺の歌」「赤とんぼ」などの日本の歌をオーケストラにアレンジした一種のムード音楽集で、タイトルは「日本の叙情」。日本コロンビアからの発売でオケはコロンビアポップスオーケストラ。こちらは南安雄の巧みなアレンジで聴かせる一枚。

実は、同じコロンビアに「日本の郷愁」という1958年録音のアルバムがあり、こちらが岩城宏之の記念すべき初レコーディングとなる。ところが当時N響の指揮研究員だった岩城宏之の名を表に出すことが出来ず。実際発売されたレコードには水木潤という仮名で発売されている。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年6月17日 (土)

ムターのモーツァルト

長かった一週間もようやく終わるが今日も仕事。
娘の通う中学校が学校開放日とかで自由に見学できると聞き、仕事の合間にちょいと顔を出す。行ってみたらちょうど部活の時間で、吹奏楽の練習をやっていた。

顧問先生の指揮で課題曲と自由曲「キャンディード」序曲を聴かせてもらう。課題曲は良くわからぬ曲だが「キャンディード」はお馴染みの曲。中学生が演奏する曲としては相当な難曲だ。
正直なところ演奏の出来はかなり苦しい。来週から期末試験ということもあろうが、生徒の集中力がはなはだしく欠けている。ただただうるさいだけの演奏。コンクールまでの道のりは遠い。

P6160407夜から再び激しい雨。娘を塾へ迎えに行った帰りに車を駐車場の壁面に擦ってしまった。(T^T)
疲れた頭にはやはりモーツァルトだろうか。
棚から取り出したのは、ドイツの女流ムターの弾くヴァイオリン協奏曲第3,5番。カラヤン&ベルリンフィルのバックで、彼女のデビュー盤。
この録音は、発売当時にかなりセンセーショナルな取り上げられ方をしたように記憶している。当時彼女は14才だった。

品の良い美しい音色のモーツァルト。初々しさの充分に残るヴァイオリンソロにカラヤンが大切に、そして実に丁寧な伴奏を付けている。結局この演奏がカラヤン唯一のこの曲の録音となった。

ヤクオフ落札で昨日紹介しなかった物二つ。
P6160415P6160410女流ピアニスト、ノヴァエスの弾くショパンの24の前奏曲。VOX盤。
そしてアンドレ・コステラネッツ指揮の管弦楽団による”Spirits of 76’というタイトルの、グリフィス、ガーシュインからホヴァネス、クレストン、アイヴスらの作品を集めたCBSの2枚組LP。この中のガーシュインのピアノ協奏曲は、最近ムターの亭主となった若き日のプレヴィンが弾いている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月16日 (金)

モグラ出没す

ここ数日予期せぬトラブルもあり多忙となってしまった。
昨日の練習も終了間際にようやく間に合ったが、楽器を取り出す気になれず、後ろで第九の練習をボーと聴いていた。
今朝は昨晩からの雨が大雨警報となり、下の娘を学校まで送り届ける羽目になる。その後職場に向かうも渋滞に巻き込まれてしまった。朝からついていない一日。

P616040610時頃に帰宅、ようやく週末と思いたいところだが明日も仕事に行かねばならぬ。
庭先に異様な土の盛り上がりがあるのに気がついた。どうやら敷地内のモグラが活発に動き出したらしい。そういえば昨晩はハクビシンが庭先を横切っていた。家の周りの野生動物が跋扈し始めた今日この頃。

ヤフオフで落としたLPが届いていた。ゆっくり聴けるのはいつのことになるのやら。

P6160411ノエル・リーとイヴァルディによる「4手のためのフランス音楽集」。仏アリオンの6枚組で、ラヴェル、ドビュッシー、フォーレ、キャプレ、マスネ、サンサーンスなど。有名無名のピアノ曲15曲。ノエル・リーのフランス音楽はハズレがない。中でもドビュッシーの「6つのエピグラフ」は同じアリオンに独奏版も録音していた。これでリーによる二つの版の演奏が揃う。

P6160413ルイ・フレモー&バーミンガムシティ響によるイベールの「海の交響曲」、「バッカナーレ」などの英EMI盤。一時期多数の録音があったフレモーも、最近ではすっかり忘れられた存在だが、がっしりとした構成感と剛直な芸風に好きな指揮者だ。

P6160412P6160414同じくイベールの二つの「寄港地」。自作自演とマルティノンの定評のある演奏。これは前から探していた国内盤LP2枚組。
そしてデルヴォー&コロンヌ管によるルーセルの交響曲第2番、「管弦楽のための協奏曲」、名コンビのデルヴォー晩年の録音。仏パテマルコニ盤。

P6160409P6160408近代フィンランドの作曲家、パルムグレンとエングルドのピアノ協奏曲。館野泉のピアノ、パヌラ指揮のヘルシンキフィルによる東芝国内LP盤。とても売れそうもないようなレコードを良く出したなぁと感心してしまった一枚。
もひとつバッハと同時代のボヘミアの作曲家ゼレンカの「マニフィカト」、「深き淵より」などの宗教曲集、エラート原盤国内LP。ゼレンカの作品でハズレたものに出会ったことがない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月14日 (水)

グレンジャーのリンカンシャーの花束

P6140402_1仕事の帰りに狂言を見に行った。「野村万作・萬斎による狂言の世界」、番組は「附子」「六地蔵」というポピュラーなもの。沼津市民文化センター大ホール。
著名な二人の出演とあって、広い文化センターは8割ほどの入り。最初に丁寧な解説が入るのが私のような門外漢にはありがたい。

たあいのない単純なストーリーの喜劇。極限まで簡略され、洗練された舞台と出演者の動きに時間と空間が凝縮している。

野村万作は何度か見たことがあるが今回は「六地蔵」のすっぱ役。飄々とした枯れた滋味のある演技はやはり見事なものだ。だが広い大ホールでは、他の出演者との声量の落差が気になってしまう。

今日は、オーストラリア生まれの作曲家・ピアニスト、パーシー・グレンジャーの曲をいくつか聴いてみた。

P6010368最初に聴いたのは吹奏楽のための作品で、イングランドの民謡をアレンジした曲集「リンカンシャーの花束」。ベルゲンフィルのコンマスだったE.Aadlandの指揮するノールウェイ陸軍軍楽隊による演奏で、ノルウェイのSIMAXというレーベルから出ているCD。
若々しくユーモアのセンス溢れる曲の連続、聴いていて自然と愉快な気分になってくる。

P6140404続いて、「リンカンシャーの花束」の終曲「行方不明の乙女が見つかった」の合唱バージョンを聴く。サイモン・ハルシー指揮のバーミンガムシティ響合唱団による、ディーリアス&グレンジャー・パートソング集というアルバム。英ConiferのCD。
幾分素人っぽい元気な歌唱ながら足踏みの音まで入り、これまためっぽう楽しい演奏。

P6140403最後にヴァンガードから出ていたユージン・リストによるグレンジャー・ピアノ曲集。
こちらは同じ曲でも吹奏楽や合唱とは異なった趣の美しくも上質なサロン音楽。黒光りするような音色のユージン・リストのピアノも見事なものだ。

このアルバムには、ピアニストとしても達者だったグレンジャー晩年のライヴが2曲収録されている。1957年、デンマークでのライヴ録音で、グレンジャーが75才の時のステレオ録音。曲は、R.シュトラウスの「バラの騎士」をアレンジした「Ramble on Love」と、有名な「Country Gardens」。

サロン的なリサイタルのアンコールなのだろう。身近に聴こえる聴衆のざわめきと暖かな拍手が臨場感豊かに聴こえてくる。
グレンジャーのピアノはさすがに技巧の衰えは隠せないものの、飄々として自らが楽しんでいる曲運びに、今日見た野村万作の演技がオーバーラップしてきた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月13日 (火)

岩城宏之さん逝く

指揮者の岩城宏之さんが亡くなった。
体調が悪いことは聞いていたが、大晦日のベートーヴェンの交響曲全曲演奏会の模様がドキュメンタリーで放送されたりしたので、まだまだ元気だと思っていたので驚いた。

実演では、学生時代に何度か聴いた札幌交響楽団との演奏が懐かしい。爽やかな涼風が吹きぬけるようなベートーヴェンの交響曲第4番。野外コンサートで聴いた燃えるようなチャイコフスキー、いずれも深く思い出に残る名演だった。

最後に聴いたのは三島でのアンサンブル金沢との「エロイカ」を中心としたベートーヴェンプロだったと思う。端正で緻密、そして大きなスケールで緊張感に満ちた大変な名演だった。

P613040060年代は精力的な数の録音をおこない、一時期は小澤征爾と人気を二分する存在だった。
N響とのベートーヴェン交響曲全集や尾高尚忠のフルート協奏曲は今でも第一級の録音だ。

P6130401P6130399今日は尾高尚忠のフルート協奏曲と、日本フィルとのハイドンの「軍隊」を聴いて、その偉業を偲ぶことにする。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月12日 (月)

オイストラフのシベリウス

今日はダイヴィッド・オイストラフのシベリウス、ヴァイオリン協奏曲を聴く。

P6120402聴いたのはオイストラフの4つある録音のうちの3回目、オーマンディー&フィラデルフィア管との1959年録音で、CBSソニーから出ていた廉価盤LP。
ちょっと汁気の多い豊麗さの中に毅然とした輝かしさの漂うシベリウス。大地にしっかりと根付いた安定感のある技巧も素晴らしい。シベリウスを得意とするオーマンディのバックも見事なものだ。カップリングの「トゥオネラの白鳥」も幻想的な雰囲気漂う名演。

P6120403続いて3回目の録音も聴きたくなった。こちらはTestamentから出ているCDで1954年のモノラル録音CD。シックスティン・エールリンク指揮のストックホルム祝祭管の伴奏。
こちらはオーマンディーと並ぶシベリウス指揮者、エールリンクの荒削りで豪快な伴奏が聴きもの。オイストラフのヴァイオリンはエールリンクの指揮に触発されて、ライヴを彷彿させる熱の入った演奏を聴かせてくれる。

P6120401まだまだ続けてオイストラフ。オイストラフ最晩年のベルリンフィルを弾き振りしたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集から第5番。
聴いたのはEMIとメロディアの共同制作だった録音の日本ビクターから出ていた2枚組LP。

モーツァルト19才の作品をオイストラフは慈愛溢れるゆっくりとしたテンポで歌いあげていく。太く暖かな落ち着いた音色も印象に残る。
ただしこの頃のSMK規格の日本ビクターのLPは音が良くない。使用したマスターテープの鮮度が悪いようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月11日 (日)

海瀬京子 ピアノ・リサイタル

昨晩からの雨が降り続く一日。
来月実施するPTAの奉仕作業の用具点検のため、朝から娘の通う小学校へ向かう。降りしきる雨の中、作業の能率がなかなか上がらない。このままだと午前中に終わらないかもしれない。昼から海瀬さんのピアノリサイタルがあるというのに・・・・・。
だらだら作業を進める役員のお母様たちにハッパをかけ、なんとか11時前に終了させる。

P6110399帰宅後、雨の中家族を乗せ急ぎ三島の演奏会場へ車を走らせる。会場は三島の繁華街にあるVia701というギャラリー&ホールで客席数は80名ほど。開演の10分前の到着だったので席は最後列。

プログラムは、第一部が舟歌、英雄ポロネーズ、ノクターン第5番、ピアノソナタ第2番「葬送」というショパンプロ。第二部は、夜のガスパールとラ・ヴァルス。いずれも私の好きな曲ばかりだ。
特に「夜のガスパール」は、ベルトランの詩の朗読を織り交ぜながら演奏するという意欲的なもの。朗読は山口かつ代さん。同様の試みでは、ラフマニノフの弟子だったギリシャの名女流ピアニスト、ジーナ・バッカウアーの録音があったが、実演では珍しい。

P6110400曲の最初に京子さん自らのトークが入る。海瀬さんのピアノは素直なストレートの直球勝負。抜群のテクニックを武器に「英雄ポロネーズ」など爽快そのもの。しかし剛速球で飛ばすだけではなく、最初の「舟歌」のように歌うべきところはたっぷりと充分に歌わせていく。前半では、ゆったり深い呼吸の中にさらりとした叙情が漂う「葬送ソナタ」が印象に残った。
最初の二曲では、狭い会場と古いピアノのため音が多少暴れ気味なのが気になったが、弾いていくうちに次第に音が練れてきたようだ。

休憩時間はカフェ・タイム。本格的なコーヒーと紅茶のサービスがあった。このようなちょっとした気遣いに会場が和やかな雰囲気になる。自分も午前中の作業の疲れが自然と癒される。

後半は、目の覚めるような薄いブルーのドレスにお色直しをして京子さんの登場。そしてインタヴューとトークショ。コンサートの雰囲気を自らが楽しんでいる気持ちが会場内に自然に伝わってきて微笑ましい気分となる。そしていよいよラヴェルの演奏が始まる。

「夜のガスパール」ではベルトランの詩の朗読に続き、性格の異なる3曲をビジュアルにそして丁寧に描き出していく。この曲の持つ深い闇、退廃的な気分や艶を描き出すには、これからの人生経験が物を言うことになるが、曲への深い共感が聴き手に素直に伝わる「絞首台」、怪奇性を見事に描き出していた「スカルボ」は秀逸だった。

そして最後は「ラ・ヴァルス」。オケの曲をピアノで演奏すると、どうしてもモノクロームになりがちだが、京子さんのピアノは、オケの演奏に匹敵するほどのダイナミックレンジとブリリアントな色彩感に満ちた圧倒的なものだった。時としてフランス風の洒落たフレージングを聴かせるのも心憎い。実に見事なテクニック、特に高音部分の音の冴えが輝かしい。

アンコールはショパンの「ノクターン第2番」、ラフマニノフの「楽興の時第4番」、ドビュッシーの「月の光」の3曲。中でも自信と余裕に満ちたラフマニノフは、わずか2週間前の沼響定演の時をさらに上回る大きなスケールの名演で驚いた。

非常に聴き応えのあるリサイタルだった。聴き手を楽しませながら、自分の主張をいかに聴衆に判りやすく伝えるかという、工夫と表現意欲が自然に伝わって来るのが素晴らしいと思う。これからの活躍がますます楽しみになってきた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月10日 (土)

若きモーツァルトの旅

4日の日曜から連続出勤の一週間、ちょっと疲れ気味だ。明日は休みだが、早朝からPTAの奉仕作業の準備が待っている。帰宅したらヤフオクで落札したLPが届いていた。

P6100398今年はモーツァルト生誕250年ということで、さまざまなイベントやらなにやらが盛んだが、これは70年代にCBSから出ていた「若きモーツァルトの旅」という5枚組のアルバム。
モーツァルト9才から22才までの間にモーツァルトが旅先で作曲した曲を集めたもの。

ロンドンで作曲された交響曲第1番から始まりパリで書かれた「レ・プティリアン」で終わっている。モーツァルトだけではなく旅先で影響を受けたJ.C.バッハやサンマルティーニ、ピッチーニらの交響曲やシンフォニアも入っている。
演奏はH.Koppenburg指揮のフランクフルト室内管が中心で、ピアノのエンゲルやソプラノのH.ドーナトらが加わる、どちらかといえば地味なメンバー。

P6100397もひとつはバルトーク夫人の弾く、バルトークの「ミクロコスモス」全曲。
ハンガリーのフンガトロン原盤のキング盤3枚組LP。



P6100396今日は重い曲を聴く気がせず、ボロディンの弦楽四重奏曲第二番を聴く。
ベルリンフィルやベルリン放送響のメンバーによるドロルツSQのグラモフォン盤だが、四角四面のボロディンで、彼らの芸風から一番遠い所に有る曲を録音してしまった、という印象だ。有名なノクターンも、難しい顔でひたすら真面目に弾いているような趣で楽しめない。

P6060384沼響のHPに「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はラフマニノフと同郷のアシュケナージの全集録音から。
連載27回目。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 9日 (金)

スイトナーのモーツァルトとハイドン

東海地方も梅雨入りとなった。しとしとと雨の降り続く一日。

P6090393昨日久しぶりに「魔笛」序曲を吹き、良い演奏が聴きたくなった。
いろいろ迷った末に取り出したのはスイトナーがシュターツカペレ・ベルリンを振った演奏で、徳間音工から出ていた序曲集。ドイツ・シャルプラッテン音源の有名な録音だ。
羽毛のような繊細なオケの響きに乗って、モーツァルトの爽やかな音楽が自然に呼吸している名演。

P6090395続いて同じくスイトナーのモーツァルトで、交響曲第39番。こちらはシュターツカペレ・ドレスデン。
ベルリンのオケに比べ、奥行きとふくらみで僅かながらこちらが勝るが、両者ともスイトナー固有の音で鳴っているのが凄いと思う。

このLPは70年代に出た国内盤LPでジャケットもかなり痛んでしまったが、このシリーズは後に出たCDに比べると音が格段に良い。

P6090394スイトナーが振ったもう一つの旧東ドイツの名門オケの録音で、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管を振ったモーツァルトの交響曲第25番とハイドンの「軍隊」を聴く。
これはスイトナーがかなり若い頃の録音で、ジャケット写真も若々しい。
独エテルナのオリジナル・ステレオLP。国内盤ではハイドンは出たがモーツァルトは出なかったように思う。

モーツァルトの交響曲第25番は一度演奏したことがあるが、ホルン4本編成で弦楽器とのバランスの取り方が難しかったように記憶している。
颯爽としたスイトナーの演奏は、疾風のように駆け抜ける小ト短調のこの曲にふさわしい。

このモーツァルト以上に素晴らしかったのは「軍隊」の演奏。ドレスデン、ベルリンのオケとも違うタイプのずしりとした重量感のある充実したオケの響き。この中でいつもながらの自然にトウトウと流れるスイトナーの音楽。中でもフルート奏者の抜群のうまさが印象に残る。

畏友山本昌邦がジュビロ磐田の監督の座を退いた。3年の任期をあと一年残していたのだが彼らしい潔さだ。彼はまもなくワールドカップの解説者としてドイツへ飛ぶ。帰国後ゆっくり話す機会もあるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 8日 (木)

第九初見

今日はオケの練習日で12月の「第九」公演の初見大会。文化センターの大小のホールと他のリハーサル室では合唱団がパート練習をおこなっている。まさに「第九」一色の夜だ。

定演後の初練習となると出席率が悪いのが常だったが、今日は出席率が良い。しかも新たな入団者数名、そのうえ長い間団から離れていて復帰した人が2名。

練習は「第九」の前プロの「魔笛」序曲から始まる。この曲は沼響第一回定演に取り上げた思い出の曲で、実に22年ぶりの再会だ。
ホルンはさほど難しくなく懐かしさも手伝って気持ちよく吹けたが、弦楽器は苦戦。ほぼ初見の団員が大部分なので無理もない。

休憩の後は、「第九」の第一楽章、こちらは3年前に演奏しているので、さほどのこともなく進む。これから12月までの約半年間「第九」だけとなると少々シンドイなというのが正直な感想。いかにダレずに本番まで持っていくかが成功の鍵となりそうだ。

定演のDVDが出来た。ちょいと飛ばし聴きしてみたがなかなか良い、オケの響きは相変わらず粗いがそれなりのサウンドで鳴っている。
海瀬さんのピアノも、若々しい張りと鋭い切れ味が印象に残る良い演奏だ。特にピンと張り詰めた硬質なピアノの響きは彼女独特の個性的な音。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 7日 (水)

ロザンタールのラヴェル

ここのところ不眠症気味で昼と夜が逆転してきた。仕事もハードとなりちょっと疲れ気味。
ヤフオクで落札した品が二点届いた。

P6070389ひとつはラヴェルの弟子だったロザンタールのラヴェル管弦楽曲全集。Adesから2003年に出た3枚組CD。
ラヴェル直伝の演奏として非常に有名な全集で、既にAdesのLPで全集は所有している。
しかし、これがキングから出ていた国内盤LPに比べて音が硬い印象があったので、最新のリマスタでは改善されているかと思い落札したアルバム。

試みに「クープランの墓」を聴いてみたが、細部の明瞭度は増しているものの、LPで感じられた仄かに香るアンニュイな雰囲気が失われてしまっている。LPの方が音がよかった、がっくり。

P6070388もうひとつは、コンドラシンがコンセルトヘボウ管を振った晩年のライヴ。Tahraから出ていた2枚組CDで、シューベルトの「ロザムンデ」抜粋、ベルリオーズの「ロメオとジュリエット」抜粋、フランクの交響曲とシベリウスの交響曲第2番というもの。

全て初出らしい。コンドラシンの晩年のライヴはフランクとシベリウスの交響曲第5番がフィリップスから出ていた。最近聴いたコンセルトヘボウとのラフ2のライヴが凄まじい演奏だった。この中のシベリウスが同じ頃の演奏で、これは期待できそうだ。

P6070392_1今日は、オーマンディ時代のフィラデルフィア管首席オーボエ奏者のジョン・ディ・ランシーの吹く「オーボエと管弦楽のためのフランス音楽」というアルバムを聴いた。プレヴィン指揮のロンドン響がバックを付けているRCAのLP。ランシーに献呈されたフランセの「花時計」、サティ~ドビュッシー編曲の「2つのジムノペディ」、イベールの交響的協奏曲がカップリングされている。

プレヴィンにこの手の曲を演奏させると実にうまい。可憐さと艶っぽさの絶妙な共存。フランス系の流れを組むランシーの絹のような滑らかな音色も美しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 6日 (火)

民族楽器によるリスト

P6060386今日は、ハンガリー国立民族アンサンブルによるリストの「ハンガリー・ラプソディー集」を聴いてみた。有名な第2番をはじめ「ラッコツィ行進曲」の15番の他第13,14,19番の5曲入り。指揮はIstvan AlbertとLaszlo Berkiの二人で振り分けている。ハンガリーのクオリトンのLP。
比較的小編成の弦楽器中心のアンサンブルにクラリネット数本と民族楽器ツィンバロンが加わる。

リストの音楽をベースにテンポを自由に動かし、変化に富んだアドリヴを聴かせるクラリネットとツィンバロン。剣を振り回し乱舞するかのような野趣に満ち、マジャール人の血の沸騰を感じさせる迫力充分の演奏だ。

P6060387もひとつハンガリーの名指揮者ドラティの「ハーリ・ヤーノシュ」を聴く。こちらはフィルハーモニア・フンガリカを振ったドラティ2度目の録音で、コダーイ管弦楽曲全集からのデッカのLP。

師コダーイへの深い共感に満ちた、ドラティの隙のない曲運びが見事な演奏だが、熱狂的な民族楽器の演奏の後に聴くとずいぶんと上品に聴こえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 5日 (月)

デルヴォーのドビュッシー

ここ数日涼しい日が続くが、先月の長雨が野菜の生育に影響を与えているようだ。スーパーで買ったキャベツが随分と小さかった。

P6050382今日は、フランスの指揮者、ピエール・デルヴォーのフランス物を聴く。
聴いたのは、35ミリ・マグネティックフィルム使用のコマンド原盤で日本コロンビアから出ていたLP。
この中からドビュッシーの「海」を聴いた。「イベリア」と「夜想曲から祭り」がカップリングされている。オケはデルヴォーの父がトロンボーンを吹いていたというコロンヌ管弦楽団。
色彩的でダイナミックなドビュッシーだが、大味な録音のために原色的などぎつさも感じられ、繊細さは感じられない。

P6050379同じコロンヌ管との演奏で、EMIから出ていたフランス管弦楽曲集も聴いてみる。こちらは「魔法使いの弟子」、シャブリエの「狂詩曲スペイン」、「牧神の午後への前奏曲」、「ボレロ」、交響詩「死の舞踏」というもので、かつてセラフィムの廉価盤で出ていた。今でも良く見かける盤だ。

EMIのバランスの良い録音が、デルヴォーの小粋で洒落た芸風を見事に捉えている。特に冴えたリズム感とオケのカラフルな音色は、シャブリエやサン・サーンスのような小品に大きな威力を発揮している。オケをたっぷり歌わせたドビュッシーも十分に美しい。

P6060383_1沼響のHPに聴き比べコラム「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はフェドセーエフの第一回録音。連載25回目。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 4日 (日)

ルチア・ポップ愛唱集

P6030373今日はチェコの名ソプラノ、ルチア・ポップの歌を聴く。
聴いたのはモーツァルトの「ヴェスペレK.339」や「イドメネオ」からのアリア、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」、「夜は青く」、シューベルトの「アヴェ・マリア」、「カロ・ミオ・ベン」、グリーグの「過ぎた春」、そしてポップが得意としたR.シュトラウスの歌曲の数々までの有名曲を集めたアルバム。
オイロディスクへの録音でBMGビクターから出ていた国内盤CD。1986年録音。バックはアイヒホルン指揮によるミュンヘン放送管。

同じソプラノとはいえ、昨日聴いたアンナ・モッフォの大人のダークさとは対照的な可憐な声色。それでいて毅然とした気品にも満ちている。
モーツァルトやヘンデルに聴かれる敬虔な祈り、そして深い愛情に包まれた「カロミオベン」や「アヴェ・マリア」、いずれも心が洗われるような感動的な名唱だ。

晩年にブルックナーで名演を聴かせたアイヒホルンが、慈愛に満ちた素晴らしい伴奏を付けている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 3日 (土)

モッフォのヴォカリーズ

P6030377今日は休日、天気も良い。
押入れにしまっていた蔵書の虫干しをするつもりで整理を始めたが、久しぶりに手にする懐かしい本の数々にどうしても片付けの手は止まりがちだ。吉村昭の「長英逃亡」のページをパラリとめくったが運の尽き。結局その場に座り込み読み出してしまった。

夜、隣町の三島市まで娘の通う塾の迎えに行ったところ、祭囃子が聴こえて、ちょっとした賑わい。はて?と思い車を降りると街中を流れる清流のほとりで「水と蛍のフェスティバル」というイベントをやっていた。三島は富士山の雪解け水の湧水が豊富な町で、市街地を流れる清流で蛍を見ることができる稀有の町。目をこらすと黄緑色の蛍の光がチラホラ見えた。

P6030374今日は、今年の3月に亡くなった美貌のソプラノ、アンナ・モッフォがストコフスキーと共演したアルバムを聴く。内容は、カントルーヴの「オーヴェルニュの歌」抜粋、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第5番」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」というもの。
1964年録音というからモッフォ30代の録音。90年頃にBMGから出ていた国内CDで、今でも再発盤が現役。

カントルーヴではオケが前面に出すぎ、過度に華やかなのが曲想とズレているが、ヴィラ=ロボスとラフマニノフは良い。ブラジル風バッハは出版譜の8本のチェロ伴奏ではなく、作曲者が上演の際に望んだという12本のチェロと2本のコントラバスの版で演奏している。

しかしこのアルバムの最大の聴きものは、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」。
これは今から20年以上前にNHKFMの朗読番組、「夜の停車駅」のエンディングに使われていた懐かしい演奏だ。江守徹の落ち着いたナレーションに被って遠くから近づいてくる汽車の音を背景にして、ひそやかに流れて来る「ヴォカリーズ」。
甘いストリングスの響きに乗って、モッフォのしめり気を帯びた艶のある声が空中を漂う雰囲気満天の演奏だった。まさに夜の音楽。
モッフォのコントロールの効いた歌が低俗に陥る一歩手前で踏み止まっている。

P6030375ところが、今聴いてみると当時FMで聴いた時の方が、このCDよりも鮮明で、奥行きがあったような気がする。手持ちの米RCAのLPも聴いてみたがどうも違う。思い出の中で演奏が実際以上に美化されてしまったのだろうか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月 2日 (金)

ジョリヴェのトランペット音楽

P6020369フランスの作曲家アンドレ・ジョリヴェのトランペットのための作品を聴く。
聴いたのは、「トランペットとパーカッション」というタイトルのエラート原盤の国内盤LP。
いずれも協奏的な作品で、トランペットと打楽器ための「エプタード」、トランペットとオルガンのための「アリオーソ・バロッコ」、そして二つのトランペット協奏曲というもの。

打楽器はS・グアルダ、オルガンはH.ビルグラム、そしてジョリヴェ指揮のラムルー管がバックを付けている。トランペットソロは歴史的名手モーリス・アンドレ。

ジョリヴェの魔術的な摩訶不思議な世界をアンドレの超絶技巧で楽しむ一枚。
宗教的な静けさに満ち、メシアンの音楽を彷彿とさせる「アリオーソ・バロッコ」、低音弦楽器とファゴットから始まるラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」に極似したジャスオーケストラの伴奏によるトランペット協奏曲第2番が印象に残る。この曲の第3楽章はシャブリエへのオマージュらしいが、全然シャブリエを連想させないのが面白い。

スピーカーの外側で火花散る打楽器がリアルに再生されるゴキゲンな超優秀録音。

P5290363沼響のHPに、聴き比べコラム「ラフマニノフの2番を聴く」をアップしました。
今回はロジェストヴェンスキーの演奏。連載25回目。



| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月 1日 (木)

10人の指揮者によるレオノーレ

今日から6月。爽やかな良い天気が続いたのでバイクで通勤。心地よい風を切りながらバイクを飛ばす。

P5290364ここ数日聴いているのは、10人の指揮者による序曲「レオノーレ第3番」というアルバム。韓国のMonopolyというレーベルから出ている2枚組CDで、すべてモノラル録音。
それぞれに同じ小節区分で10分割のチャプターが振られ、解説書にはチャプター毎の演奏時間が明記されている極めてマニアックなCDだ。

登場する指揮者は、クレンペラー&ベルリン国立歌劇場管(1927)、メンゲルベルク&アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1930)、ワルター&ウィーンフィル(1936)、トスカニーニ&NBC響(1939)、ミトロプーロス&ミネアポリス響(1940)、カラヤン&アムステルダム・コンセルトヘボウ管(1943)、ベーム&ウィーンフィル(1944)、フルトヴェングラー&ウィーンフィル(1945)、ロジンスキー&ニューヨークフィル(1946)、チェリビダッケ&ベルリンフィル(1946)というもの。

このうちロジンスキーとチェリビダッケはライヴ録音で、フルトヴェングラーは1945年1月28日録音とあるが、これが真実だとすると初出となる。が、実際は1944年録音のスタジオ録音だと思う。

演奏はいずれも個性的で面白いが、この中でとりわけ傑出していたのはメンゲルベルク。13分を切る速いテンポ、密度の濃い響きと緊張感に満ちたドラマティックな演奏。特に一糸乱れぬオケのアンサンブルには聴いていて鳥肌が立って来た。

16分を超えるスローモーな演奏ながら、異様な狂気の漂うチェリダッケのライヴも印象に残る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年5月 | トップページ | 2006年7月 »