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2006年12月に作成された記事

2006年12月31日 (日)

トスカニーニの第九

2006年も今日で終わり、昨日早めに就寝し本日完全復調。今日は庭の周辺や家の大掃除で慌しい一日が終わる。夕食後紅白を見ている家族を横目に見つつ自分は別室でゆっくり音楽を聴く。

Pc310711 先日聴いたオボーリンの弾くハチャトリアンのピアノ協奏曲でフレクサトーンが使用されていなかったのが気になり、フレクサトーンの音を確かめたくなった。そこで取り出したのがルーマニアのピアニスト、ミンドル・カッツの弾く演奏。伴奏はボールト指揮のロンドンフィルによるPye原盤によるテイチクのLP。

第2楽章で聞こえてくる摩訶不思議なる玄妙な音、テルミンの音にも似ているが日本の怪談話に出てくるノコギリ音楽のような音だ。カッツの冷えたタッチが寒々しさを助長している。

Pc310712続いて見事な伴奏を聴かせていた ボールトの指揮で、プロコフィエフの交響曲第1番。これはハチャトリアンとほぼ同時期の同じPye録音。

自然に淡々と進めながら深い自愛の感じられる第2楽章が素晴らしい。数多くのこの曲の演奏の中でも傑出した演奏だ。

そして最後は「第九」。12月に「第九」を演奏した関係で今年も沢山の演奏を聴いた。

ここのところトスカニーニの「第九」を続けていくつか聴いている。トスカニーニの演奏は、20世紀の演奏スタイルに大きな影響を与えた楽譜に忠実なインテンポのスタイルということになっているが、「第九」のライヴをいくつか聴くと、その場の状況とオケによって驚くほど自由に細かな所で表情を変えている。演奏しながら絶えず最良の方向を探っているのだ。

Pc310721 Pc310725 Pc310727 今日聴いた(視た)のは1948年の全曲映像でTestamentから出ているDVD。

実際に見るトスカニーニの指揮ぶりは実に明快、聴くだけよりもずっと多くのことが見えてくる。

実に素晴らしい指揮と演奏だ。この偉大な指揮者の第九の全曲映像が残されたことに感謝。感想の詳細はコラムに書きます。

Pc310715 最後にモーツァルトイヤーの締めくくりとしてハ短調の「大ミサ曲」からキリエとグローリアを聴く。演奏はP.マーク指揮のパドヴァ管によるライヴ録音。のびやかで大らかなファンタジーに満ちた名演。

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2006年12月30日 (土)

オイストラフ・トリオのメンデルスゾーン

今日の午前中は職場へ行き、所用を済ませる。無人のオフィスは電話がかかることもなく、仕事の能率も上がる。
帰りに今日を限りに店頭販売を止めてしまうパン屋に寄り、食パン3斤とブドウパン、アンパンを購入。途中弟の家に寄り、パンを渡した後に帰宅。

どうもその頃から腹の具合がおかしくなり始めた。昨日食べたものに当たったのかもしれない。昼食も摂らずに薬を飲み横になったところ、そのまま寝入ってしまった。目が覚めたのはなんと夕方の6時。貴重な年末の一日を浪費してしまった。お腹の具合は多少は治まったがまだ本調子ではない。

そんな具合で、今日はあまり音楽を聴く気にはならないが、昨日聴いたオボーリンメモリアムアルバムからメンデルスゾーンのピアノトリオ第一番を聴いた。
オイストラフのヴァイオリン、クヌシュヴィツキーのチェロによるもの。

ほどよいバランスと緊張感。メンデルスゾーンの、のびのびとした芸風がストレートに伝わってくる名演だ。続いて第2番も聴こうと思ったが、またお腹の調子が悪くなってきたのでやめにする。

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2006年12月29日 (金)

オボーリンのラフマニノフとハチャトリアン

年末年始休業に突入。天気は良いが夕方から冷えてきた。朝から部屋の片付けと大掃除、気分転換に買い物などをしているうちにあっという間に一日が終わる。

Pc130697 今日はロシアのピアニスト、オボーリンのラフマニノフとハチャトリアンの協奏曲を聴いた。
1974年にオボーリンの追悼盤として出た3枚組LPで、チャイコフスキーの四季、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とハチャトリアンのピアノ協奏曲、そしてメンデルスゾーンの二つのピアノトリオが入っている。オケはモスクワ放送響で指揮はガウクとハチャトリアン。ハチャトリアンは初演のメンバーだ。

アシュケナージの師にして第一回ショパンコンクールの優勝者であるオボーリン。オイストラフの伴奏者として有名で、独奏者としての印象がない。

この2つの演奏を聴いても華やかさとは無縁の地味な演奏。しかし高度の技巧を要するハチャトリアンを楽々と弾きこなす余裕のテクニック、ラフマニノフの第2楽章の心に染みいる抒情性など非凡なもの感じさせるピアニストだ。

田舎のボタモチのようなぼてっとした暖かな独特の音色も特徴的だ。この厚い響きはチェコの銘器ペトロフを使用しているからだろう。なおハチャトリアンの第2楽章に指定されている特殊楽器フレクサトーンは、この録音では使用されていないようだ。

Pc290720 Pc290718_1 オボーリンのラフマニノフでは来日時の映像がDVDで出ている。1967年10月23日日比谷公会堂での記録。伴奏は渡邊暁雄指揮の日本フィル。

この演奏は一転して華やかで技巧派の一面を見せる演奏だ。ピアノはスタインウエイを使用している。オボーリンは実演と録音では違うスタイルのピアニストだったのかもしれない。

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2006年12月28日 (木)

第九交響曲物語

師走らしい寒い一日となった。今日は仕事納め、といっても特別なことをするわけでもなく、ごく日常の仕事内容で一日が過ぎていく。机の周りを片付け、来年のダイアリーを準備し定時に仕事を終わらせる。

D6fc2548315c2e2572be05326d81000f その後、職場有志で職場近くにある鮮魚料理のお店「山正」でちょっとした忘年会。本業は魚屋でカウンター席中心、10人も入れば満席になる料理好きの店主が趣味で始めたような店だが、魚市場からこの日仕入れた食材を使用した魚料理は絶品だ。

牡蠣鍋をお願いしてあったのだが、鮮度の良い牡蠣を見て生牡蠣にしてもらう。鍋は湯豆腐に変更となった。肝醤油でいただくカワハギの刺身、カレイの煮付け、〆に鮨を少々。魚のうまい沼津の中でもここの魚の鮮度は傑出している。値段もリーズナブル、料理も全て完璧なプロの技。

10時過ぎには帰宅しほろ酔い加減のいい気持ち。今年もいろいろあったがなんとか乗り切った、という感慨に耽る。来年は今年以上の大変な年になることは見えてる。だが今は考えないことにしよう。

Contents_ph_top_1 27日にNHK教育テレビで放送された、地球ドラマチック「第九交響曲物語」の録画を見る。2005年、カナダ13プロダクション制作のドキュメンタリーで、旧東ドイツ制作の音楽映画「人間ベートーヴェン」の映像を使用しながら、20世紀から現在までの「第九」の周辺を紹介していく、というもの。内容は可もなし付加もなしと言ったところだが、使用されていた映像が往年の名指揮者の映像満載。

ニキシュ、ワインガルトナー、R.シュトラウス、マスカーニ、クレンペラー、クラウス、アーベントロート、クナッパーツブッシュ、クレンペラー、メンゲルベルク、トスカニーニ、フルトヴェングラー、ワルター、クラウス、40年代のカラヤン、など、まだあったかな。

Pc290718 存命組では、ヘレヴェッヘ、マズア、コンロン、ラトルなどなど。
大部分はお馴染みの映像。しかし、ワインガルトナーは「世紀の指揮者大音楽会」で紹介されていたパリ響を振った「魔弾の射手」序曲の映像ではなく、全く別のもの。クラウスも今まで知っていたものとは異なる初めて視る指揮姿だ。シュトラウスとマスカーニの第九の指揮映像も珍しい。

Pc290719 珍しいところでは、中国やロシアで演奏された「第九」の映像。ロシアの指揮者はガウクかもしれない。
12月29日夜9時、BS1で再放送予定。

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2006年12月27日 (水)

ポリーニのハンマークラヴィーア

昨晩の風雨は雨戸を閉めるほどの激しさだったが、一夜明けた今日は非常に暖かな良い天気となった。4月初旬の気温だという。今年も押し詰まってきた。仕事は大きなトラブルもなく粛々と進む。

Pc270714 今日はポリーニの弾く「ハンマークラヴィーア」を聴く。一年に一回聴けば充分なほどのヘビーな曲で、めったなことでは針を下ろす事はないのだが、ここのところ「第九」を連続して聴いていて、突然この曲のアダージョが聴きたくなった。

ベートーヴェンが作品に込めた巨大なエネルギーをポリーニは非常な集中力をもって再現していく。
ところがアダージョの途中でアッと驚いた。なんと次の定演のメイン曲であるブラームスの交響曲第4番の、あの印象的な美しい冒頭と同じ音型が聴こえてくるではないか。これは思わぬ発見だ。

興奮のあまり始めから全曲聴いてしまった。が、聴き手に非常な緊張感を強いるポリーニのあまりにも完璧な演奏に疲れてしまった。

Pc270716 このままでは心地よく眠れそうもないので、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を聴くことにする。演奏はハイティンク指揮のコンセルトヘボウ管によるフィリップスへの1976年録音LP。
紗の掛かったようなデリケートなオケの音色が素晴らしい。続く「クラリネットとオーケストラのためのラプソディ」も美しい演奏だ。

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2006年12月26日 (火)

スメターチェクのイッポリトフ・イワーノフ

今日は朝から雨、夜には雷が盛大に鳴り始めた。

Pc260712 今日はワルターの指揮する「悲劇的序曲」と、同じくブラームスの「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」を聴く。フランチェスカッティとフルニエの独奏にワルター指揮のコロンビア響との米コロンビア盤。先日聴いたフェラス&トルトゥリエ盤のフレッシュさとは異なる落ち着いた渋い演奏。

Pc260713 あとひとつは、チェコの名匠スメターチェクの若い頃の録音で、イッポリトフ・イワーノフの「コーカサスの風景」、グラモフォンの10吋モノラル盤。
軽い描写音楽のようなもので、「終曲」など野暮天な演奏になりがちな曲だが、格調の高いスメターチェクの指揮で聴き応えのある演奏になった。オケはプラハのFOK響。

Pc260711 沼響HPの聴き比べコラムに、新「第九を聴く」第12回をアップしました。
今回はトスカニーニのテアトロ・コロンライヴ。



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2006年12月25日 (月)

ツィピーヌのオネゲル

今年もあと一週間を残すのみとなった。日中は暖かだったが夜から雨が降り始めた。明日から大荒れの予報。

Pc250724 今日はツィピーヌの指揮するオネゲルの「クリスマス・カンタータ」から聴く。仏トリアノンの擬似ステレオLPで、オケはパリ音楽院管にバリトンのP.モレ、エリザベートブラッスル合唱団、そしてオルガンにM.デュリュフレが加わる。フランス初演のメンバーによる初演直後の録音。カップリングは同じオネゲルの交響曲第3番「典礼風」。「クリスマス・カンタータ」は仏EMIからCDが出ている。

オネゲルの演奏で、私はツィピーヌ以上の指揮者を知らない。この演奏も密度の濃い剛毅な演奏だが、擬似ステレオのためにツィピーヌの芸風が正確に伝わってこない。

Pc250723 続いて国内盤モノラルLPの「オネゲル選集」を聴く。
同じくツィピーヌ&パリ音楽院管で、「パシフィック231」、「ラグビー」と交響曲第2番、第3番「典礼風」というもの。交響曲第2番のみミュンシュのモノラル旧録音。
トリアノン盤とダブっている「典礼風」は、きわめて明快な録音と演奏で良い。二つの管弦楽曲も鮮烈な名演だ。

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2006年12月24日 (日)

オドノポソフのブルッフとゲールのストラヴィンスキー

Pc240720_1 ぼちぼち年末の気分にもなり始めた今日この頃。本日は庭木の剪定と庭の掃除で一日を過ごす。暖かな日で気持ちのよい汗もかいた。
夜は娘達の手作りケーキでささやかなクリスマス。

Pc240722 今日はウィーンフィルのコンサートマスターだったR.オドノポソフの弾くブルッフのヴァイオリン協奏曲を聴く。米MMSのモノラル10吋盤で、ワルター・ゲール指揮のオランダフィルの演奏。余白はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番から「ラ・カンパネッラ」、こちらの伴奏はヒュッパーツ指揮のユトレヒト響。

コンサートホールレーベルにいくつかの録音があるオドノポソフだが、幾分締まりに欠ける印象があり、さほど積極的には聴いていなかったヴァイオリニスト。
だがこのブルッフは良い。彼の芸風に合っているのだろう。太い音色、スケールの大きな気合の入った見事な演奏だ。ゲールの伴奏も素晴らしい。現在OTAKEN RECORDでCD化されている。

Pc240721 ゲールの指揮でストラヴィンスキーも聴いてみた。「火の鳥」組曲と「ピアノと管楽器のための協奏曲」のコンサートホール10吋盤。オケはアムステルダムフィルで、ピアノはミュートン・ウッド。
伴奏録音が多く今ではほとんど忘れ去られたワルター・ゲールだが、このストラヴィスキーは名演だ。

ストラヴィンスキーの新古典主義時代のコンチェルトでは芯のある明晰な演奏を、初期の代表作である「火の鳥」では民族色豊かで詩情溢れるロマンティックなスタイルで聴かせてくれる。
ゆったり冷静な「カッチェイの踊り」に続く「子守唄」では、速めのテンポで内声のクラリネットの上昇音型を浮き上がらせながら「終曲」の盛り上がりを導入していく老練な音楽運びを見せている。オケのオーボエとフルートは非常にうまい。

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2006年12月23日 (土)

ラインスドルフのブルックナー

今日は、今年の事業の進行状況の確認と来年度予算の精査のために出勤。

Comn0020 職場の近くにある老舗のパン屋が今年一杯でお店を閉めることになってしまった。午前中にはほとんど売リ切れてしまうほどの人気店だったのだが、後継者がいないという理由からのようだ。
その話を聞いてから、ここ数日毎日お昼はこの店のパンを買っている。
今日も職場に行く途中に寄ったのだが、シャッターが降りていた。ここでもまた長く伝承されていた職人技が消えていく。ボリュームたっぷりのカツサンドは絶品だったのだが。

Pc230719 今日はラインスドルフのブルックナーを聴いた。
中学の頃に聴いたRCAの廉価盤、グランプリシリーズで出ていたラインスドルフ&ボストン響の「ロマンティック」が,自分とブルックナーとの出会いだった。
初めて聴いた時は、曲も演奏もどこが良いのかさっぱりわからなかった。

その後数多くのブルックナー演奏に接した今、あらためて聴いてみると、明晰で自然体、均整の取れた実に良い演奏だと思う。余計な事をしてないのが良かったようだ。特に淡々とした第2楽章がしみじみと聴かせる。
Pc220716_1 タワーレコードからCDが出て入手しやすくなったが、このCDは音が悪い。マスターテープが劣化していたのだろうか。1966年録音。

ラインスドルフのブルックナーでは、ライヴの海賊盤もいくつか出ている。いずれもCD-Rの怪しげなものだが、Pc230717 そのうちフランクフルト放送響との第9番とシカゴ響との第3番を聴いてみた。

まず1972年の第9番。オケはバランス良く鳴っているが、大きく揺れるテンポが人工的で感心しない。スケールが小さく箱庭的になってしまった。

Pc230718_1 続いてシカゴ響との第3番の第1楽章だけ聴いた。こちらはラインスドルフ晩年の1983年12月8日のライヴ。弦楽器の刻みに乗って出てくるトランペットソロを聴いて、第一稿を使っているのに気がついた。第一稿のインバルによる世界初録音が1982年なので、1983年というデータが正しいとすると、かなり早い時期の録音だ。ラインスドルフのブルックナーへのこだわりが感じられる。演奏も良い。

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2006年12月22日 (金)

バルビローリ、コンセルトヘボウ・ライヴ

朝からどんより曇った一日。昨日から喉が痛い、体調管理には神経を使っていたつもりが風邪をひいたらしい。口内炎も出来てしまった。今日は仕事を早めに切り上げ薬局でビタミンB剤を購入。

Pc180711 今日は晩年のサー・ジョン・バルビローリがコンセルトヘボウ管を振ったライヴを聴く。1969年1月22日の記録でTESTAMENTから出ているCD。
曲はサティ(ドビュッシー編)による二つのジムノペディ、ブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエムそしてドヴォルザークの交響曲第7番というもの。

オーボエが嫋々と歌う哀愁漂うジムノペディ、息の長い粘り越しのドヴォルザーク。いずれもロマンティックで良く歌う演奏。ブリテンでは一転、重心の低いコンセルトヘボウ管の特性を生かした重量級の演奏だ。優秀なステレオ録音。

Pc220715 クリスマスも近づいた、この時期しか聴く気にならないクリスマスキャロルも聴いてみる。
こちらはバルビローリと同じイギリスの指揮者、サー・マルコム・サージェントがロイヤル・コーラル・ソサエティを振ったクリスマスキャロル集。多くは無伴奏だが時としてオルガンも加わる。EMIのモノラルLP盤。
有名無名のクリスマスキャロル13曲に加えてモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」や「グリーンスリーヴス」が歌われている。

比較的大きな編成の合唱団のようだ。アンサンブルが多少甘くモーツァルトでは物足りなさも感じられるが、サージェントの引き締まった指揮と控えめな伴奏で格調の高さを感じさせるアルバムとなった。
名指揮者による同じようなクリスマス・キャロル集でもバーンスタインやオーマンディらのゴージャスな演奏とは一線を画する控えめな、いかにもイギリス人のクリスマスキャロル。

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2006年12月21日 (木)

本年の吹き納め

今日は今年最後のオケの練習。大ホールでの練習となった。いつもながらの定刻より送れて練習に参加。
既にステージ上では「戴冠式」の練習が始まっている。ホルンは既に先着の二人が吹いているので、自分はホールロビーで軽くウォーミングアップの後、客席でしばし練習を観戦する。

団員が増え10型2管のオケで練習が進む。聴いているうちについ心地よく眠りこんでしまった。眠りを誘うほどの破綻のない演奏ということだろうか。

休憩後「悲劇的序曲」の初見大会となった。さすがにこの曲を演奏した経験者は少ないようだが、初見ながら順調に音楽は進む。
実に渋い曲だ。無理のないオーケストレーションで吹いていて気持ちが良い。これならば次の演奏会は余裕でいけそうだ。

続いてブラ4の第4楽章。こちらは先週一度通しているので、多少突っ込んだ練習となったが団員全体がリラックスムード。まぁ本格的な練習は来年に入ってからということだろう。
終了後、来年の新年会の再会を約して解散。

Pc200713 沼響のHPに、聴き比べコラム新「第九を聴く」の11回目をアップしました。
今回は1937年、トスカニーニ&BBC響のライヴ。英語歌詞による演奏。

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2006年12月20日 (水)

ギレリス、ザルツブルク・ライヴとメッセージ・フロムG

先月からしばらく休日出勤が続いたので本日代休。通学する娘達や出勤する家内を布団の中から横目に見ながら久しぶりに寝坊する。

今年は野菜が暴落しているのでさほど喜ばれるとは思わないが、畑で採れた大根やキャベツなどをダンボールに詰め、日頃お世話になっている知人、親戚などに配って回り午前中を過ごす。

裾野市の山奥の親戚を尋ねたら、裏庭にドラムカンを2つ連結したような大きなワナが仕掛けられていた。大叔母に何事かと尋ねたらクマのワナだと聞き仰天。10日ほど前に裏庭で体長160センチほどのツキノワグマに遭遇したとのこと。
そういえばワナにハチミツと柿が仕掛けられている。そばに比較的新しいクマの糞もあった。恐ろしくなって早々に退散。

Pc200712 今日聴いたのは、ロシアのピアニストギレリスの1970年ザルツブルクライヴ。ドイツ.グラモフォンのLPで、ギレリスのD.Gデビュー録音。
曲は全てモーツァルトでソナタの3,8番に「パイジェロの主題いよる変奏曲」「幻想曲ニ短調K.397」というもの。強靭なタッチで売り出したギレリスだが、ここでのモーツァルトはしなやかで奥の深い演奏を聴かせてくれる。深く沈潜していく「幻想曲」が特に印象に残る。

Pc200714 同じ「幻想曲」を他のピアニストで聴きたくなった。取り出したのはグルダの1978年ウィーンでのライヴ。MPSから出ていた6枚組LP「メッセージ・フロム・グルダ」から10月13日のコンサートのプログラム全てを収録した第2巻2枚組を聴く。グルダの自作とモーツァルト、ドビュッシーの作品が演奏されている。

グルダのトーク、そして自作のブルースに続いてモーツァルトの「幻想曲」が切れ目なしに演奏される。グルダとモーツァルトの作品の間になんら違和感を感じさせないのが凄いと思う。深く静かなギレリスに対してダイナミックさを感じさせる演奏。前半と後半の対比も素晴らしい。そのままドビュッシーの前奏曲集からの4曲とグルダ自作の「アリア」も続けて聴いてしまった。

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2006年12月18日 (月)

カラヤンのモスクワライヴ

暖かな一日で一週間が始まった。仕事も今のところ平穏無事。
今日は特に星空が美しい。時折り見える流れ星はふたご座流星群だろうか。

Pc180709 今日は1969年5月のカラヤン&ベルリンフィルのライヴ録音を聴いた。
曲は「英雄の生涯」と「田園」で、Great Performance Russiaというレーベルから出ているCD2枚組。
このベルリンフィルのモスクワ公演ではこの2曲の他に、ブランデンブルク協奏曲第1番と、ショスタコーヴィッチの交響曲第10番がメロディアのLPで出ていた。
メロディアから出ていたライヴLPシリーズは、演奏家の承諾なしに発売していた形跡があり、オーマンディーのフランクのようにCBSのスタジオ録音をライヴと称して発売していたことがあった。

このCDもかなり怪しげ、聴いてみると明らかにメロディアLPからの板起こし盤だ。
「英雄の生涯」ではさほど気にならないが、「田園」では針がトレースするサーフェスノイズがかなり気になる。CD化した時のイコライジングも不自然で、オリジナルステレオ録音なのに響きの拡散状態が伸び縮みしているような音だ。シンバルもドラの音のように響いている。

だが演奏は素晴らしい。これほど気合の入ったカラヤンも珍しい。「戦場での英雄」など、ベルリンフィルが能力の限界を超えるまで鳴り切って凄愴を極める。シュヴァルベのヴァイオリンソロも見事なものだ。「田園」はホルンの不調が気になった。

Pc180712 同じカラヤンのモスクワライヴのメロディアLPと聴き比べてみた。曲はショスタコーヴィッチの交響曲第10番。こちらはCDと比べて重心の低いしっかりとした自然なステレオ録音だ。これは明らかにLPの方が音が良い。

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2006年12月17日 (日)

マッケラスのメサイア

朝からどんよりと曇った一日、幸い雨は降らなかったものの午後から寒くなってきた。
今日は一日仕事となった。夕方帰宅途中に駅前の書店に立ち寄り、いろいろと立ち読みをする。

478727208x01_ss500_sclzzzzzzz_v114006201 ここ数年、音楽書の類は購入していなかったのだが、青弓社から出ている「ピアニストガイド」(吉澤ヴイルヘルム著)という本が立ち読みしていて面白くてたまらず、3,150円という値段に大いに躊躇したものの、購入してしまった。

古今東西、約300人のピアニストについて、流派や使用楽器、コンクール歴などを絡めながら独自の切り口で演奏スタイルとディスクを紹介している。
今までこれだけディープにしかも体系的にピアニストを紹介した本はなかったように思う。「はじめに」に書かれた作者の言葉には、この本への並々ならぬ自信が感じられる。

Pc160704 今日はデプリーストの「メサイア」の影響で、手持ちのディスクからいくつか聴いてみた。デプリーストの使用したペータース版では、リヒターの2種の録音もあるが、今日聴いたのは、ラム校訂版を使用したマッケラス&イギリス室内管による1966年録音盤。EMIから出ていた全曲CD。

マッケラスは後にモーツァルト版を用いた2種の録音もあるが、私は速いテンポで端正にまとめ上げたこの演奏が最も気に入っている。トランペットはフィリップ・ジョーンズ。引き締まったアンサンブルを聴かせてくれるアンブロジアン・シンガーズの合唱も良い。この合唱部分のみは、かつて東芝のセラフィムの廉価盤で出ていた。

1966年といえば、サージェントやビーチャムのようなイギリスの大家たちによる大合唱団による壮大な演奏が幅をきかせていた頃だが、ピリオド奏法にも通じる室内楽的なマッケラスのこの演奏は、今でも全く古さを感じさせない。

Pc170705 ロイヤルフィルを振った再録音では、サージェント盤で熱い歌唱を聴かせてくれたハダースフィールド・コーラル・ソサエティを起用しているものの、英語によるモーツァルト版で一部プラウト版という変則的なアプローチによって、中途半端なものになってしまった。

Pc170706 もうひとつボールト指揮のモノラル盤の第一部のみ聴いてみた。
DECCAのエースオブクラブの3枚組LP。
ステレオ盤は、サザーランドの装飾過多の歌唱が全体のバランスを崩しているようで、どうにも気に入らなかったのだが、こちらのヴィヴィアンは、素直で自然な歌唱を聴かせてくれ、なんら抵抗なくボールトの格調高い指揮ぶりを楽しむことができる。
1955年ACCディスク大賞受賞盤。

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2006年12月16日 (土)

バーナード・ハーマンのフランス音楽集

今日は仕事もPTA活動も何もない休日。天気も良く爽やかな一日だった。家の雑事を片付けながら時間を過ごす。

昨日上京したおりに、御茶ノ水ディスクユニオンを覗いてみた。ここ数年自分の音盤購入は、ネット上の通販やオークションに移行しているので中古屋で買う事がめっきり少なくなった。とはいえ、やはり気になって上京するとフラリと立ち寄ってしまう。

今回も特に食指をそそられるものはなかった。高価な値段のデニス・ブレインのLDはあい変らず売れ残っているし、欲しいと思うLPにはそれなりの値段が付いている。420円以下コーナーもありきたりのものばかりだ。
ともあれ来年の定演のメインであるブラ4のコーナーを見たり、あちこちとエサ箱を漁って購入した千円以下のLPは、
Pc160698 Pc160701 安川加寿子の弾くドビュッシーの前奏曲集第二巻日本ビクター盤、アーヴィング&ニューヨークシティバレー管の「くるみ割り人形」第1,2組曲KAPP盤。
ドビュッシーは全集中の一枚でこの曲集と練習曲集だけ所有していなかった。アーヴィングも既に「白鳥の湖」と「眠りの森の美女」は入手済み。

Pc160699Pc160703_1 そしてパリ狩猟ホルン隊による聖フーベルトミサほかの仏EMI盤。似たようなものはいくつか出ているが、これはピユグ=ロジェ女史がオルガンを弾いている。

映画音楽で知られるバーナード・ハーマンがロンドンフィルを振ったサティ、ドビュッシー、フォーレ、オネゲルの作品を集めたフランス音楽集デッカ盤。これはある種ゲテ物の部類かもしれないが、ホルン16本やハープ9台を用いたりした独特のオーケストレーションの映画音楽を作曲したバーナード・ハーマンが独自に手を加えた面白いアルバム。

サティの「2つのジムノペディ」はドビュッシーの編曲、ドビュッシーの「レントより遅く」も一般的なラヴェル編曲がベースだが、多少手を加えているようだ。「月の光」は独自の版で、これはキャプレの編曲よりも良く出来ていると思う。最後にオネゲルの「夏の牧歌」の甘く色気の漂う演奏が入っている。

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2006年12月15日 (金)

デプリースト・都響のメサイア

ジェイムズ・デプリースト指揮する東京都響の「メサイア」公演に行ってきた。
昼から上京するつもりが職場で突然のトラブル発生、結局14時45分三島発の新幹線となってしまった。東京で所用を済ませ、御茶ノ水ユニオンをちょいと冷やかし東京文化会館へ急ぐ。席は3階右席、19時開演。

3019_l 指揮は、「のだめ」13巻に実名でも登場するジェイムズ・デプリースト。デプリーストの近年の録音には駄作というものが全くない。オレゴン響の指揮者時代から注目してきた名指揮者だが、幸い都響の常任指揮者となり実演に接しやすくなった。

シェリング&ゾルタン校訂のペータース版使用、オケは10型通常配置にオルガンとチェンバロが加わる。独唱者のアルトは先日の「第九」で沼響と共演したばかりの山下牧子さん。合唱は晋友会総勢80名余。第九とならび年末の風物詩とも言える「メサイア」に会場も満席となった。

合唱団、オケメンバーに続いて山下さんをはじめとするソリスト、そしてデプリ-ストが電動車椅子に乗って登場し、特別仕様のスロープ付きの指揮台に車ごと載りモーター仕掛けで一回転。ここまであたかも宗教的な儀式を見ているようだ。
今までの経験上、マルケヴィッチ、クライバー、バーンスタイン、カラヤン、チェリビダッケなど大指揮者の実演では、ステージに登場した瞬間から指揮者のオーラが会場を包み込む独特の雰囲気があるものだがデプリーストにもそれがある。

そして長い指揮棒が一閃、荘厳な序曲が始まった。端正にして敬虔な祈り、ヒューマンな暖かさに満ちた素晴らしい音楽が会場を満たしていく。
名だたる歌手達に伍して山下さんのソロも素晴らしい。沼響の最初の第九の時に比べて格段に成長している。(正直なところ第九のソロではあまりよくわからなかった)
良く訓練された合唱も良い。ソリストではソプラノの天羽明恵さんが傑出、アルトとソプラノのアリア"Come unto Him"では周辺からすすり泣きの声が聞こえてきた。このあたりから会場の雰囲気が変わってきた。

第一部の後休憩、そして第二部、第三部、有名なハレルヤコーラスを経て終曲の壮麗なアーメンコーラス。淡々と棒を振っているデプリーストがあたかも大鷲が翼を広げるように大きく両手を広げると巨大で暖かな音楽が会場を包み込んでいく2時間余。私の前の席の老夫婦は涙をぬぐいながら聴きいっている。隣でスコアを眺めながら聴いていた音大生とおぼしき女子大生も完全に固まっている。

デプリーストの暖かな人柄と宗教的な祈りが自然と伝わってくる感動的なコンサートだった。生のコンサートで涙が出てきたのは久しぶりのことだ。第九公演も行こうかな。

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2006年12月14日 (木)

ブラ4初見

今日から来年の定演の練習が始まった。仕事を早めに切り上げ、雨の中練習場へ向かう。

今日は来年の定演のメインとなったブラ4の初見大会。今まではホールでの練習だったが、再び狭いリハーサル室へ逆戻り。会場に着くと既に第一楽章が始まっていた。この曲は第6回定演で取り上げた曲で実に16年ぶりだ。

空いていた4番ホルンの席に陣取り途中から合奏に加わる。前回は2番ホルンだった。ホルンの特性を知り尽くしていたブラームス、音域も無理がなく譜面上は第3番ほど難しくないが、曲を知れば知るほど泥沼に落ち込む奥の深い曲。

初めて演奏する団員も多く、落ちたりずれたり飛び出したり。
それでも止まらず最後まで通ってしまうのが不思議。初見大会は何度やっても楽しいものだ。今日もまたヴァイオリンに新入団員二人、オケの陣容もますます充実してきた。

Pc130696 帰宅後聴いたのもブラームス。当初5番目の交響曲として着想されたとされる「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」でブラームス最後の管弦楽曲作品だ。
演奏は、フェラスのヴァイオリンとトルトゥリエのチェロ、クレツキ指揮のフィルハーモニア管伴奏による米セラフィムLP盤。
ヴァイオリンとチェロがぴったり溶け合った、若々しくもしなやかな響きが素晴らしい。職人技に徹したクレツキの指揮も見事なものだ。

Pc140698 来年の前プロとなった「悲劇的序曲」も聴いてみた。
こちらはストコフスキー指揮するナショナルフィルの1977年録音CBS盤のCD。

ブラームスはストコフスキーにとって重要なレパートリーだった。史上初の交響曲全集録音、フィラデルフィア管のデビューコンサートも交響曲第1番を中心としたプログラムだったはずだ。そして生涯最後のコンサートとなった1974年のロンドンコンサートでも交響曲第4番を演奏していた。「悲劇的序曲」はこれが唯一の録音。

ワルターが13分かけているこの曲をストコフスキーは11分で演奏している。譜面に手を加えることなく、速いテンポで颯爽と駆け抜けた瑞々しい名演だ。この録音時のストコフスキーは実に95才、この5ヵ月後に世を去っている。

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2006年12月13日 (水)

検査前の待合室で

今日は日中曇り、午後から雨が降り始めた。昨日の内視鏡検査の大腸洗浄の効果だろうか、お腹の中がクリーンになり軽くなったような気分。

昨日の検査で洗浄剤を飲む時に4人の受検者と一緒になった。私以外は皆80過ぎのお婆さんたち。始めは皆不安そうでオドオドしていたのだが、一緒に不味い洗浄剤を飲んでいるうちに不思議な連帯感が生まれて、検査が始まるまでの3時間余りを話し込んでしまった。

自然と身の上話になり、大正生まれの3人のお婆さん達の人生の長い道のりを興味深く聞かせてもらった。
戦争末期に看護婦学校を卒業、卒業式の翌日に従軍看護婦として召集され、集合先の東京駅の構内で赴任先を決める籤を引かされて、そのまま南方へ連れて行かれたというお婆さん。結婚5年目で夫を亡くし、女手ひとつで息子さんを育て上げたという人。
皆、戦争を挟んで、戦後の復興期、高度経済成長期といった大変な時代を生き抜いてきた人たちばかりだ。
孫の世代の自分は、もっぱら洗浄剤の入った重い袋を持ってお婆さんたちにお酌をしながら聞き役に徹した。

Pc110688 沼響のHPの聴き比べコラム新「第九を聴く」の第10回をアップしました。今回から前回の連載で紹介できなかった演奏を古い順に紹介していきます。
今回は電気録音初の全曲録音となった、ワインガルトナー&ロンドン響の1926年録音、英語歌詞版。

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2006年12月12日 (火)

クライバーの田園

本日は初めての大腸内視鏡検査の日、昨晩寝る前に飲んだ下剤が真夜中に効き始め寝不足気味。朝7時から市立病院へ向かう。

322 Pc120693 今日は「20世紀の偉大な指揮者たち」シリーズからのE.クライバー2枚組。そしてクリュイタンス来日公演のラヴェル2枚組CDとCDプレーヤーを持参し待合の時間つぶしとする。
両盤ともにモノラルなので、片耳で聴くならば呼び出しのアナウンスは充分耳に入る。

8時に受付を済ませ待合室へ。まずはクライバー指揮するシューベルトの交響曲第5番から北ドイツ放送響との1953年ライヴ。軽やかで気品溢れるシューベルトが耳元で爽やかに響き渡る。ちょうど聴き終わったところで名前を呼ばれ検査室へ。

そこでは腸内洗浄剤2リットル入りの大袋が待っていた。「1.2リットル分を一時間ほどで飲んでください」との看護師さんのお言葉。
おそるおそる舐めてみたらポカリスエットを薄くしたような味。これならば大丈夫、とぐいぐいと飲み始めるが1リットルを過ぎたあたりから辛くなってきた。やっと飲み干した頃、お腹がゴロゴロと鳴り始めた。後はトイレへの往復が続く。

内視鏡検査は2時過ぎに開始。検査用の衣服に着替えベッドに横になる。鎮静剤の点滴が始まった頃横でバシュバシュという音が聞こえる。横目で見ると若い医師の顔がグラスファイバーの光に不気味に浮かび上がっていた。内視鏡の調子を見ているらしい。
そして「始めますよ」の声。「う!・・・」下腹部から内視鏡がぐいぐいと入り、体の内側から突き上げてくるのがはっきり判る。しかし思ったほどは辛くない。点滴が効いているようだ。検査は15分ほどで終了。

「一時間ほど安静にしてください」ということで、検査室横の個室に通され、ベッドに横になる。空気も注入されたために下腹部がパンパンだ。横になったところでバッグからCDプレーヤーを取り出しクライバーの続きを聴き始めた。

シューベルトの次に流れてきたのはベートーヴェンの「田園」、チェコフィルとの1955年ライヴ。クラリネットの独特の音色と艶のあるブラス、チェコフィル全盛期の素晴らしい音。あたかもボヘミアの田園風景が目の前に広がるようだ。
第3楽章の躍動感、第4楽章の激しさ、そして雄大で幸福感に満ちた第5楽章。ライヴながら抜群の完成度でフィナーレ最後の絶妙なテンポの落とし方など神技の域。
鎮静剤の効果もあり聴いていて幸福な気持ちになってきた。このCDを持ってきて良かったと思う。検査結果も異常なし。

Pc120695 081 帰宅後、エーリッヒ・クライバーのコンセルトヘボウとのスタジオ録音と息子カルロスの演奏で、「田園」を聴いてみた。

この「田園」は息子カルロスにしてはベストフォームではない。父の2つの演奏に遠く及ばない。

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2006年12月11日 (月)

12のコルシカの歌

暖かい一日で今週は始まった。明日からまた天気は崩れるようだ。

Pc110690 今日はトマジの「12のコルシカの歌」を聴いた。演奏はマルセイユの女声合唱団、ガブリエル・フォーレ合唱団によるもの。指揮は創設者のテレーゼ・ファレ=フィズイオ女史。
IPG原盤でテイチクから出ていたLPで、昭和52年度芸術祭参加アルバム。

曲、演奏ともに素晴らしい。コルシカ地方の民族的な色彩の濃い無伴奏合唱曲集。冒頭エレジーのゆらゆらと揺れるハミングに乗った神秘的な響きから聴き手の心をしっかりと掴んでしまう。

Pc110691 同じ組み合わせで92年の再録音がCDでも出ている。
これが同じ演奏者とは信じ難い稚拙な演奏。
あまりの落差に、とても最後まで聴き通すことができない。


Pc110689 同じくフォーレの名を冠した合唱団、ガブリエル・フォーレ少年合唱団のフォーレも聴いた。
VOX原盤の日本コロンビア廉価盤LPの70年代末に購入した懐かしい音盤。こちらは少年合唱団による別団体で指揮者の記載はない。

「ラシーヌの雅歌」「アヴェ・ヴェルム」「小ミサ曲」「レクイエムから」などの数曲をオルガン伴奏で歌っている。敬虔な祈りに満ちた少年合唱の純な響きに心が洗われるようだ。

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2006年12月10日 (日)

モントゥーのジークフリート牧歌

今日は今年最後のPTA行事、沼津アルプス登山道整備の日。
降水確率20%だが昨日からの雨が朝まで残り、役員集合時点でまたもや雨。
前日既に小雨決行と決めてあるので、粛々と補修資材と器具の点検を始める。

開始時刻の9時前には続々と保護者たちが集まり始めた。その数100名余り。
この手の仕事は段取り8割、登山道を大きく3ブロックに分け、各ブロック毎に必要資材を配置していく。

ところが今年は用意した竹が長すぎた。曲がり角で長竹を担いだ父親たちが曲がりきれずに立ち往生。麓から頂上まで延々と竹を担いだ父親達の行列ができている。
役員一同大慌てで、長竹行列の傍らをすり抜けながら交通整理をおこなうはめになってしまった。

その後麓から標高350メートルの山頂まで、連絡やら足りない資材を担ぎながら雨で滑りがちな山道を3往復。2時間余りで作業は終了したが、さすがに疲れた。

Pc090687 昼食後の音楽は、大好きなモントゥーの指揮する「ジークフリートの牧歌」。
1960年1月、モントゥーが久しぶりにサンフランシスコ響に客演した時に「死と変容」と録音されたもの。聴いたのは70年代に出たRCAのグランプリクラシカル・シリーズの廉価盤LP、数年前にようやくCD化もされている。

滋味溢れる風格に満ちた名演。響きがいくぶん軽いのはオケの性格によるものだろうか。

Pc090686 モントゥーの「ジークフリートの牧歌」にはロイヤルフィルとコンセルトヘボウ管とのライヴがCD化されていて、コンセルトヘボウとの録音も聴いてみた。50年代から60年代までのコンセルトヘボウ管のライヴを集めたセット物から1953年2月のライヴ。
オケのふくらみのある音色が魅力の演奏だが録音状態があまり良くない。作業の疲れもあり、聴いているうちに眠りこけてしまった。

目が覚めたらこのCDの3曲目、モーツァルトのピアノ協奏曲第22番が鳴っていた。
アニー・フィッシャーのピアノと名指揮者ベイヌムの指揮による1956年7月のライヴ録音だ。
フィッシャーの清楚な音楽、そして躍動感溢れる生き生きとしたモーツァルトが心地よく流れていく。ベイヌムの伴奏も見事なものだ。

Pc080681 ここでベイヌムのモーツァルトがもっと聴きたくなった。コンセルトヘボウ管との交響曲第29番のエピック盤にしようかと思ったが、ロンドンフィルを振った「ハフナー」が未聴であったことに気が付いた。これはDECCA録音の10吋盤。
堂々としてシンフォニックなモーツァルト。この時期のロンドンフィルのエレガントな響きもモーツァルトに相応しい。

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2006年12月 9日 (土)

リリングのモーツァルト、レクイエム

今日は朝から小雨の中を職場へ向かう。

帰宅後聴いたのは。先日の金子建志先生とご一緒したレクチャーの影響で、モーツァルトのレクイエムから手持ちの様々な版を聴いてみた。

Pc020670 この曲の私の刷り込みはリヒターの演奏だが、まず聴いたのはコシュラー&スロヴァキアフィルによるジェスマイヤー版の演奏。
これは今や歴史あるメジャーレーベルを凌ぐほどに成長した新興レーベルNAXOSの黎明期の録音。NAXOS盤を初めて目撃した時は、駅売りCDに毛の生えた程度としか思えなかったのだが、その中で唯一著名なアーティストだったのがこのコシュラーの録音だ。
地味ながらモーツァルトの名作の魅力を充分に伝えている好演。

Pc020672 Pc020671 Pc020673_1 次にラクリモーサをリリングの2つの演奏で聴いてみた。リリングはジェスマイヤー版、レヴィン版の録音がある。レヴィン版には20世紀になって発見されたアーメンフーガが加わっている。
そしてホグウッドによるモンダー版。
いろいろ聴いてみたが、やはり最終的にはジェスマイヤー版に戻ってしまう。

ジェスマイヤー版の作曲上の欠点はさておいて、やはりモーツァルトの同時代の作曲家の強みだろうか、現代の作曲家の補筆版はどうしてもロマン派以降の知識が邪魔をしてしまっているようだ。

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2006年12月 8日 (金)

メリク・パシャエフのシェエラザード

今年も残り少なくなってしまった。今日は朝から小雨だがそれほど寒くはない。

Pc080683久しぶりにギンギンのロシア音楽が聴きたくなった。
聴いたのはメリク・パシャエフ指揮する「シェエラザード」のメロディア盤モノラルLP。オケはボリショイ劇場管。
ヴィヴラートたっぷりのトロンボーンとホルンの響きが大きな広がりを持って迫ってくる。いくぶんラフなところもあるが、妖艶で官能的な第三楽章、祭りの喧騒の描写が巧みな第四楽章など、ビジュアル系の豪演。

Pc080684 もひとつR.コルサコフ。同じボリショイ劇場管の演奏で、マルク・エルムレル指揮するメロディアLP。「韃靼人の踊り」など、ボロディンやR.コルサコフ、グリンカなどのロシア歌劇から舞曲系の小曲を集めたアルバム。
聴いたのはR.コルサコフの歌劇から小曲を何曲か集めて、組曲のような形で演奏している中から、歌劇「ムラダ」の貴族の行進。1973年録音。

ロジェストヴェンスキーやスヴェトラーノフらとほぼ同世代のエルムレル。かなりクセのある個性的な指揮者で、「田園」のような曲を振ると???のトンデモ演奏になってしまうが、得意のロシア音楽ではツボにはまったゴキゲンな演奏を聴かせてくれる。

この「ムラダ」も、音を割ったロシアのホルンの咆哮が凄まじく、オケを開放的に鳴らしまくるエルムレルのキャラが最上の形で出た演奏。

Pc080685 この音源も他のメロディア音源と同様、ソ連崩壊後西側に流出してしまった。
現在オーストリアのRCDというレーベルから他の曲とカップリングされた形でCDとなっている。ただしLP時のような、良く配慮された選曲と曲順の妙は全く無視されてしまった。

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2006年12月 7日 (木)

バッハ一族の教会音楽

火曜日からココログのメンテナンスで更新が出来なかった。
どうやらメンテナンスは失敗で再チャレンジとのこと。いい加減にしてもらいたいものだ。

火曜日から不測の事態続出で仕事に火がついてしまった。これから年明けまでまたも忙しくなりそうだ。
ここ数日冷えてきたが、夜になって湿り気を帯びた生暖かな風が吹き始めた。天気は下り坂のようだ。日曜はPTA最後の大仕事、登山道整備の本番だというのに・・・・

ヤフオクで落としたLPが何点か届いた。

Pc070679 リリングの指揮する「バッハ一族の教会音楽」5枚組LP、CBS盤。
これは20年ほど前に銀座ハンターソニービル店で買い逃して以来探していたものだ。
大バッハの大叔父、エルフルト家系のヨハン・バッハ(1604~1673)から大バッハの孫、W.F.エルンスト・バッハ(1759~1845)に至る、偉大な一族の教会音楽を系統立てて紹介したもの。
アルンシュタット家、フランケン家系、マイニンゲン家系などの一族の家系図を含む詳細な解説書もうれしい。

Pc070678 Pc070680 ニキシュの弟子でベルリンフィルを振って指揮デビューを飾ったルーマニアの指揮者ジョルジュスクがチェコフィルを振ったベートーヴェンの交響曲第7番、スプラフォン盤LP。ジョルジュスクは主兵ブカレストフィルを振ってルーマニア語による第九を含む全集を残しているが、こちらはおそらく全集よりも前の録音。右側は全集のLONGEN KOLN盤。

Pc070677 暮れはやはり第九ということで、ドラティがロイヤルフィルを振った交響曲全集から8,9番のLP2枚組。70年代半ばの録音。
夥しい録音数のあるドラティ唯一の第九。
「クラシックプレス誌」2001年9月号の20世紀中に発売された「第九のディスコグラフィー」によるとマーキュリー録音となっているが、実物を見る限り英グラモフォン盤だ。

ミネアポリス響やロンドン響を振ったドラティのマーキュリー録音によるベートーヴェンの交響曲録音を何点か所有しているが、録音の採り方は明らかに別物だ。結局この全集が日本国内で発売されることはなかった。

Pc070676 沼響のHPの聴く比べコラム、「新第九を聴く」にヘレヴェッヘの感想をアップしました。
演奏会は終わりますが、しばらく続けます。新連載9回目

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2006年12月 4日 (月)

アラウのリストとルーセル自作自演

朝晩寒くなってきた。夜は10日に行われるPTAの行事、沼津アルプス登山道整備(一部だが)の説明会。
当日参加する保護者たちを学校に集め、バンセンを使った手すりの作り方などをPTAの中にいる職人さんたちの講師による説明会を実施。
お父さん達の参加をお願いしたのだが、参加者の大部分はお母さん達、一体やる気があるのだろうか。それとも父親たちはまだ仕事から帰っていないのだろうか。

Pc040674 今日はクラウディオ・アラウの弾くリストのピアノ協奏曲第一番を聴いた。アラウの4種類あるうちの2番目の録音でバックはオーマンディー指揮のフィラデルフィア管。「ハンガリー幻想曲」とのカップリング。1952年録音の日本コロンビアのモノラルLP。CDでも出ているようだ。

粒立ちのはっきりした強靭な打鍵、艶の有る輝かしい音。リストの愛弟子であったクラウゼに学んだ、確信に満ちたアラウの名演。録音も良い。

Pc040675 もうひとつ、20世紀フランスの作曲家の自作自演を集めたアルバムから、ルーセルの「蜘蛛の饗宴」とダンディの「ヴァレンシア」。1931年の録音でオケの名はわからない。
両曲とも最後に作曲者自身のナレーションが入るので放送用録音かもしれない。アメリカから出ていた海賊盤LP。

オケは比較的小編成のようだ。アンサンブルを揃えるよりも、楽器の一つ一つが明確に鳴り響く自己主張のはっきりとした演奏。特にルーセルにその感が強い。
ダンディはゆったりとした風格に満ちた名演だった。

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2006年12月 3日 (日)

第九、本番終わる

今日は沼響3回目の「第九」いよいよ本番。
井崎先生が初めて沼響を振った第20回定演は台風直撃となってしまったが、今日は朝から良い天気。昨日早めに寝たので体調もよい。

Pc020669_1 10時前にはホールに到着、軽くウォーミングアップの後、ステージ上ではプログラム順に歌劇「魔笛」序曲のファンファーレでゲネプロが始まる。
あれ?Allegroでヴァイオリンが合わない。やはり朝一番となると直にエンジン全開とはならないようだ。

しかしゲネプロともなると団員の集中力はいつもの練習とは段違い。次第にアンサンブルに凝集力が加わっていく。続く「第九」も先生の注意に反応する皆の目付きが全然違う。

通常の練習とは異なる崖っぷちに追い詰められたような、この緊張感に満ちたゲネプロの雰囲気が好きだ。演奏の精度もみるみるうちに上がっていく。

そしてソリストと合唱が加わる第4楽章。懸念された合唱も今日は格段に良い。「第九」の演奏で感じる独特の高揚感がここへ来て初めて感じられるようになった。素人集団相手によくぞここまで、と思う。
井崎先生のひとことひとことに合唱団のメンバーは、まるで幼い子供のように素直に反応している。やはり「第九」の演奏にはこのひたむきさが不可欠なのだ。
ラトルがウィーンフィルとの録音時に、わざわざアマチュアの合唱団をバーミンガムから呼び寄せて演奏させた理由が判る気がしてきた。

そして本番。沼響第一回定演の冒頭を飾った思い出の曲歌劇「魔笛」序曲で始まる。
1番ホルン渡部さん2番ホルンは私、これは23年前と同じ顔ぶれだ。二人ともあの頃20代で若かった。今ではお互いに老眼が始まる年になってしまった。

第九も緊張感に満ち、井崎先生のきりっとした指揮に良く反応できた演奏で今までの第九の中では最も完成度が高かったと思う。ブラボーの声も上がり聴衆の反応も良かった。

そしてアンコールとしてフィナーレの最終部分をソリストも合唱に加わり演奏。

対向配置、速めのテンポのピリオド系のスタイルという、沼響にとって大きな挑戦となった演奏会だが今までにない大きな収穫があったのではないかと思う。演奏していてこれほど楽しめたのは久しぶりだ。

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2006年12月 1日 (金)

金子建志先生とモーツァルト、レクイエム

12月となった。今日は金子先生の講義「映画アマデウス以降のモーツァルト」の最終回。

今回はモーツァルトのレクイエムを取り上げた。
開始一時間半前に先生は到着。3回目でもあり準備は順調に進む。今回は映画アマデウスのDVDに加えて、アーノンクールのレクイエムをパソコンで再生。このCDはモーツァルトの自筆譜が付録で収録されていて、音楽とシンクロして譜面が切り替わるという優れもの。
ただしバイヤー版。

860 講義は絶筆となった「ラクリモーサ」が話の中心となった。最初にアーノンクールの演奏を自筆譜とシンクロさせながらの再生。そして、弟子のアイブラーやジェスマイヤー版の加筆部分について、譜面を取り上げながらの解説。

さらに先生の用意されたさまざまな版による「ラクリモーサ」の部分の聴き比べが続く。
モーツァルト自身が書き込んだ部分のみの演奏から始まり、ジェスマイヤー版、モンダー版、トゥルーズ版など5種類の演奏を取り上げそれそれについて詳しい解説。
しかもジェスマイヤーとアイブラーのクラリネット協奏曲まで取り上げ作風の違いを検証していく。
傍らで先生のアシストをしながらゾクゾクしてきた。

最後にレクイエムが後世に与えた影響としてブルックナーを取り上げる。交響曲第5番と第7番のアダージョで「ラクリモーサ」の音型がそのまま出てくるのには驚いた。使用したのは朝比奈隆の演奏。

終了後の控え室では、明後日沼響が本番を迎える「第九」のベーレンライター版について先生と譜面を見ながらの音楽談義。
楽しいひとときだった。

昨年の海瀬京子さんの日本音楽コンクール1位に続き、今までの音楽に関係する自分の出来事で特に思い出に残る一日だった。もう一度じっくりとお話を伺いたい魅力的な人だった。

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