マッケラスのメサイア
朝からどんよりと曇った一日、幸い雨は降らなかったものの午後から寒くなってきた。
今日は一日仕事となった。夕方帰宅途中に駅前の書店に立ち寄り、いろいろと立ち読みをする。
ここ数年、音楽書の類は購入していなかったのだが、青弓社から出ている「ピアニストガイド」(吉澤ヴイルヘルム著)という本が立ち読みしていて面白くてたまらず、3,150円という値段に大いに躊躇したものの、購入してしまった。
古今東西、約300人のピアニストについて、流派や使用楽器、コンクール歴などを絡めながら独自の切り口で演奏スタイルとディスクを紹介している。
今までこれだけディープにしかも体系的にピアニストを紹介した本はなかったように思う。「はじめに」に書かれた作者の言葉には、この本への並々ならぬ自信が感じられる。
今日はデプリーストの「メサイア」の影響で、手持ちのディスクからいくつか聴いてみた。デプリーストの使用したペータース版では、リヒターの2種の録音もあるが、今日聴いたのは、ラム校訂版を使用したマッケラス&イギリス室内管による1966年録音盤。EMIから出ていた全曲CD。
マッケラスは後にモーツァルト版を用いた2種の録音もあるが、私は速いテンポで端正にまとめ上げたこの演奏が最も気に入っている。トランペットはフィリップ・ジョーンズ。引き締まったアンサンブルを聴かせてくれるアンブロジアン・シンガーズの合唱も良い。この合唱部分のみは、かつて東芝のセラフィムの廉価盤で出ていた。
1966年といえば、サージェントやビーチャムのようなイギリスの大家たちによる大合唱団による壮大な演奏が幅をきかせていた頃だが、ピリオド奏法にも通じる室内楽的なマッケラスのこの演奏は、今でも全く古さを感じさせない。
ロイヤルフィルを振った再録音では、サージェント盤で熱い歌唱を聴かせてくれたハダースフィールド・コーラル・ソサエティを起用しているものの、英語によるモーツァルト版で一部プラウト版という変則的なアプローチによって、中途半端なものになってしまった。
もうひとつボールト指揮のモノラル盤の第一部のみ聴いてみた。
DECCAのエースオブクラブの3枚組LP。
ステレオ盤は、サザーランドの装飾過多の歌唱が全体のバランスを崩しているようで、どうにも気に入らなかったのだが、こちらのヴィヴィアンは、素直で自然な歌唱を聴かせてくれ、なんら抵抗なくボールトの格調高い指揮ぶりを楽しむことができる。
1955年ACCディスク大賞受賞盤。
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