黒木岩寿と仲間たち
今日は沼津楽友協会夏の例会、三島市民文化センター小ホール「黒木岩寿と仲間たち」。
神奈川フィルの首席コントラバス奏者で、サイトウキネンオーケストラや水戸室内管のメンバーでもある実力者黒木岩寿を中心とする弦楽オーケストラのコンサート。
天気が良ければ職場からバイクで飛ばすところだが、あいにくの梅雨空のため車で三島まで向かう。夕食を食べている時間はとてもない。途中渋滞に巻き込まれ、6時45分開演ぎりぎりのすべりこみセーフ。
会場は協会の会員を中心とした年配の人たちばかり。客の入りは8割ほど。
曲目は、「アイネクライネ」に始まり、ボッテシーニのヴァイオリンとコントラバスのためのグランデユオコンチェルタント。休憩を挟んでバーバーの「アダージョ」、チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」というもの。
ステージに登場した演奏者達を見て、思わず「おっ!」となった。
出演は、黒木岩寿の所属するトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズのメンバーを中心とする若手奏者たち10人。
完全にビジュアル系「のだめオーケストラ」Sオケの世界だ。実際に「のだめ」に出演していたメンバーもいるらしい。
正直あまり期待はしていなかったので、この線でチケットを売り出せば満席になったのに、などと私はバカなことを考えていました。
ところが、演奏が始まって吃驚、フレッシュでダイナミックな朗々とした響き、音楽が生き生き流れていて実に気持ちが良い。ボッテシーニの曲など、黒木の愉快な解説もありなかなか楽しく聴けた。
後半最初のバーバーはピッチの不安定さが気になった。やはりこの手の曲は難しい。この曲が終わった時点で奏者が引っ込んだ舞台袖からチューニングの音が聞こえて来た。
最後のチャイコフスキーは一転、コンマスの江口有香(日本音楽コンクール一位)とコントラバスの黒木岩寿がきっしりとアンサンブルを固め、現役芸大生を含む若手奏者たちとともに伸び伸びとした音楽を創り上げていく。
皆実に楽しそうで聴いているこちらも気持ちが良い。アンコールは弦セレのワルツ。
会場で、長い間沼津楽友協会を支えていた事務局長の杉山さんが亡くなられたことを知った。
制約の多い中で孤軍奮闘、リヒテルやフェドセーエフ、若き日のサイモン・ラトルやヤンソンス、チェロのゲリンガスなど、一生の思い出となる名演奏家の公演の多くを沼津で実現してくれ、沼津・三島のクラシック音楽界を陰で支えてきた方だった。
私のわがままな希望を聞いてくれ実現してくれた、東京でも聴くことができない渡邊暁雄指揮N響によるシベリウス・プロのコンサートは、今でも忘れられない思い出だ。
演奏会場のロビーで、いつも暖かな笑顔で聴衆の表情を見つめていた杉山さんの姿がもう見られないと思うと悲しい。ご冥福を祈ります。
| 固定リンク
「コンサート感想」カテゴリの記事
- チェコ・フィル・ストリング・カルテット(2023.11.23)
- パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(2023.10.21)
- 日本フィルの第401回名曲コンサート、小林研一郎と髙木凜々子のヴァイオリン(2023.09.13)
- パリ管ブラスクインテットのコンサート、そして亡きWさんにホルン四重奏を捧げたことなど(2023.06.25)
- 東大オケでサン・サーンスの交響曲第3番(2023.02.13)
コメント