ベルガマスク組曲 さまざまな版
曇時々雨。昨晩は仕事絡みで草月流家元の勅使河原茜さんの講演に係り、オケの練習には参加できなかった。
http://www.sogetsu.or.jp/
いけばなの世界は全くの門外漢だが、舞台裏に見る本番に向けての緻密な計算と周到な準備。本番では、素材の最も美しい姿を探り出しながら花を活けていく過程を見るうちに、音楽の実演の現場と共通するものを見た思いがした。
下の娘がドビュッシーの「ベルガマスク組曲」のプレリュードを練習していくうちに、自分の使用楽譜と音盤に聴くさまざまなピアニストの演奏と音が違うと言い出した。
どうやら「プレリュード」の2小節めの2拍め、16分音符の2番目の音が「ラ」の場合と「シ」の演奏があるらしい。
娘の使用楽譜は家内が中学時代に使ったというかなり古い楽譜で、井口基成校訂の春秋社発行。該当箇所は「シ」となっている。
半信半疑で手持ちの音盤30種ほどをざっと聴いてみた。するとギーゼキング、フェブリエ、フランソワをはじめとしてリヒテル、プラネスなど大多数は「ラ」。
手持ちで「シ」で弾いているのは、ヴェルデルニコフ、ヘンケマンス、リンパニー、安川加寿子、田中希代子の5人のみ。
「へぇー」と思いいろいろと調べてみた。
1890年に作曲された「ベルガマスク組曲」の自筆譜は紛失。1905年のフロモン社の初版は「シ」だが、1918年のドビュッシーの死去を挟んで1932年に復刻されたジョベール社のものは「ラ」だという。
現在出ている楽譜のうち「 コスタラ版」は「シ」、「 ウィーン原典版」と「 ヘンレ版」は「ラ」
国内のものでは音楽の友社は「ラ」、そして最新の春秋社はなんと「ラ」に変わっていた。
「ベルガマスク組曲」は作曲後もドビュッシーがいろいろと手を加えているので、初版発行後に「シ」を「ラ」に変えた、もしくは初版の「シ」はミスプリで復刻版で直した。ということなのだろうか。どうやら「ラ」で弾くのが本流らしい。
「シ」が刷り込みとなってしまった娘は、頑固に「シ」で通すという。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント