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2008年6月25日 (水)

千葉馨・ホルンの世界

連日雨模様、体のあちこちに黴が生えそうだ。

元N響首席ホルン奏者だった千葉馨さんが亡くなった。自分がホルンを始めて手にした頃から千葉馨さんは憧れの存在だった。テレビでN響の演奏を見るたびに、背筋をシャキッと伸ばしてベルを挙げて吹く、千葉さんの姿を画面から探したものだ。

016_2  今日は千葉さんの演奏を聴いてその偉業を偲ぶことにする。

最初に聴いたのは日本ビクターから出ていた「千葉馨 ホルンの世界」というLPからブラームスのホルン・トリオ、1984年録音。

ヴァイオリンが堀正文、ピアノは本荘玲子という顔ぶれで、N響にゆかりの深い岩城宏之、森正、外山雄三の三人の指揮者が発起人となって実現したレコーディングだ。録音時にこの三人も立ち会ったという。同じメンバーでの1997年の再録音もCDで出ている。

N響引退後の録音だが、室内楽の枠の中で天翔る軽やかでクリアな音色の千葉さんのホルン。カップリングはR.シュトラウスのホルン協奏曲第一番。こちらはフェネル指揮の東京佼成ウィンドオーケストラとのライヴ録音の吹奏楽版。

026_2  もう一枚は、トリオから出ていたLPで。ケンウッドシンフォニックブラスによる吹奏楽曲を集めたアルバムからR.R.ベネットの「アメリカ古典舞曲」。

この団体は、この録音のために編成された臨時編成の吹奏楽団で、ファゴットの戸沢宗雄、フルートの小出信也、峰岸壮一、トランペットの北村源三、戸部豊、ホルンは千葉馨、田中正大、パーカションの有賀誠門などなど70年代の在京オケの首席クラスの管楽器奏者がずらりと並ぶのが壮観だ。ここで岩城宏之が指揮でなくパーカションで加わっている。

001 このメンバーによる録音では世界のマーチ集も出ていた。こちらも芸術性の高い名演ぞろい。

演奏者たちが嬉々として演奏しているのが自然と伝わって来るのが楽しい。

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コメント

千葉さんは今日本でホルンを吹いているヒト全員が何らかの形でお世話になっている恩人だと思います。演奏以外でもお弟子さん、孫弟子、講師活動などでの技術指導面、楽器の輸入や国産品開発などなど。

LPのブラームスは私も気に入っています。CDのほうには朝比奈さんの寄稿が掲載されていたなあ。小澤さんにはN響事件のときに「あなただけは来てくれると思った」と言われたり。指揮者から絶大な信頼があったのですね。

最後にステージで聞いたのは2004年の東京ホルンクラブのラストコンサート。出番は少なかったのとトップではなかったのでどんな音楽をやったかは思い出せませんが、実生活で必要だった杖は使わずに登場し、後輩や弟子に囲まれて満足そうでした。出演者の知人に用があって楽屋口で立っていたら千葉さんのお姿を拝見することができました。割と元気そうでしたし、東京文化会館の警備員さんが特に敬意を払っていたこと、そこに親しげに挨拶していた姿が目に焼きついています。舞台の表だけでなく、裏でも劇場人だったのですね。この後、日本ホルン協会のイベントで特大ホルンアンサンブルの「ラデツキー」を指揮したのが公開の場での最後だったように思います。

N響での勇姿も忘れることができません。定年直前にヴァントの指揮で吹いたブル4。冒頭のソロが美しかっただけでなく、フィナーレの重奏、ラストのソロ。。。格好良い!この頃になるとコンマスよりもオケ全体に睨みがきいていたそうですね。

千葉さんのディスクは岩城氏とのモーツァルトのほか、名古屋での89~92年の同曲ライヴ録音が残されています。1番は全曲で手塚氏/有志アンサンブルがブラームスのCDに、第一楽章だけ同じ手塚氏/新日(キャニオン)、指揮者は失念しましたが東響(学研)とも学校用鑑賞教材として録音がありました。

私はこの方の真似で、今でもベルを脇腹から離して構えています。ご冥福をお祈りしたいと思います。

投稿: Britchov | 2008年6月26日 (木) 23時12分

Britchov さん。貴重なお話ありがとうございます。

私は、生ではN響や新日フィルのオケマンとしての千葉さんしか知りません。

小沢&新日本フィルの「ライン」を聞いた時、千葉さんは3番ホルンだったと思いますが、座っているだけで存在感がすごかったです。
1番ホルンの方には大きなプレッシャーだったと思いました。

もうあのお姿を拝見できない思うと、やはり寂しいですね。ご冥福をお祈りします。

投稿: 山本晴望 | 2008年6月27日 (金) 20時50分

LP時代の東芝EMIにベートーヴェン大全集というのがあって、ホルンソナタは千葉さんの演奏でした。この巻に六重奏も収録されており、千葉さんが1番ホルンでした。

今思い出したのですが、ヘルマン・バウマンがナチュラルホルンで入れたモーツァルトの解説を千葉さんが執筆しており、なかなか素人にも分かりやすい倍音の説明が鑑賞の、そして自分の演奏の役に立ちました。

N響定年後、団友という肩書きで新日に出演し小澤さんや朝比奈さんの舞台の常連だっただけでなく、朝比奈さんのブルックナーでは大フィルにさえ出ていました。噛んで含めるようなゆったりとした晩年のテンポ感は二人の共通項であったのかもしれません。

投稿: ぶりちょふ | 2008年6月29日 (日) 21時57分

ぶりちょふさん。

ぶりちょふさんのコメントを読んで、録画してあったヴァントの1982年N響来演時の「ロマンティック」を観ました。

ヴァントの恐ろしい眼光と、ピリピリとした緊張の中で始まる冒頭の千葉さんの見事なホルンソロ。カッコイイなぁ。

N響がこれほど緊張して演奏しているのも珍しいですね。

投稿: 山本晴望 | 2008年6月30日 (月) 22時44分

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渋谷YAMAHAや銀座YAMAHAの楽譜売場などで、しばしば偉 丈夫な姿た。全身で“音楽好き”だと言っているように思われた。 [続きを読む]

受信: 2008年7月12日 (土) 09時01分

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