フリッツ・ブッシュ「指揮者のおしえ」
新年度も一週間経過、あい変らず休みは取れないし多少のトラブルもあるが、日常茶飯事で鈍感になりさほど苦にならなくなってきた。
尊敬する偉大な指揮者フリッツ・ブッシュ(1890~1951)の著書が出た。
「指揮者のおしえ(Der Dirigent)](福田達夫訳 春秋社刊)
1940年、ナチスの台頭を嫌いヨーロッパからブエノスアイレスへ向かう船中で口述筆記されたものにいくつかの遺稿を加えたもの。
指揮者を志す若者のために、自分の経験を役立てたいというのが執筆の動機だったという。
棒の振り方や楽曲のフレージングなどを豊富な譜面で解説している専門書ともいえるが、大音楽家だけが見出した数々の真理をこれほどわかりやすく解説した書は稀有だと思う。
しかも、ブッシュ自身が接したニキシュやマーラー、ブラームスの盟友シュタインバッハ、シューマンの交響曲の校訂者ヴュルナーなど、録音が残らぬ偉大な指揮者のエピソードや、「レオノーレ序曲」第3番の最後のヴァイオリンのパッセージの最初の一音についてのトスカニーニとの論争などの興味深い内容も満載。
フリッツ・ブッシュの暖かな人柄と音楽への深い愛が、平易な文章の行間からあふれている。クーベリックが尊敬の想いに満ちた序文を寄せている。
そして、ブッシュがブエノスアイレスへ逃れるときに、日本に立ち寄ったことをこの本で初めて知った。残念ながら指揮する機会はなかったが、戦前に日本の土を踏んだ大指揮者はワインガルトナーだけではなかったのだ。
沼響HPの聴き比べコラム「シベ2を聴く」に、クーセヴィツキーの1950年録音の感想をアップしました。
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