小出信也さんのフルート
昨日の雨は上がり朝から強風の吹いた一日。裏山に咲くフジの花の群落が大きく揺れている。 今日は一週間前から体調を崩している娘の通う高校の吹奏楽部定期演奏会。
会場は三島市民文化会館大ホール。
第一部クラシックステージ、第二部ステージドリル、第三部:ポップスステージというオーソドクスな吹奏楽の演奏会だが、今回はN響の元首席フルート奏者小出信也さんという大物を招いての演奏会。
小出さんは、自分がクラシック音楽を聴き始めた頃には既にN響の首席奏者だった。1998年の退団まで実に38年N響に在籍していたという。
小出さんは第一部に出演。
第一部最初のライニキー作曲の「セドナ」に続いて、小出さんの登場。
曲は、サン・サーンスの歌劇「アスカニオ」からバレエのためのアリア。
サンサンーンスが友人のパリ・オペラ座のフルーティストだったタフェネルのために書いたといわれる曲だ。
木製フルートの暖かな音色が、吹奏楽の大きめの音量の中でも埋没せずに明確に会場の隅々まで響いていく。続く「シリンクス」のソロは、柔らかで艶のある音色で飄々と聴かせるドビュッシー。
そして伴奏の高校生達の中に席を移し、真島俊夫作曲「黄昏色-2本のフルートとピアノのための組曲『紅』より」の吹奏楽版。
ここで小出さんに合わせるフルートの子が、なかなか達者なのには驚いた。
そして第一部最後は「アルルの女」第二組曲。小出さんが加わると木管楽器群が大きなふくらみを持って響くのがよくわかる。演奏はブラス控えめ木管重視のフレンチスタイル。有名な「メヌエット」の小出さんのソロはさすがに美しい。
心配だった娘は、ステージ上で元気にホルンを吹いている。数回出てくるソロも正確な音程で当てているので大丈夫のようだ。第三部の指揮も意外としっかり振っていた。どこで覚えたのだろう? そして帰宅後は小出信也さんの音盤を聴く。
「星のセレナーデ-小出信也によるかくれたフルート名曲集」というキングレコードが出していたLP。
曲はシャミナードの「星のセレナーデ」にはじまり、ドンジョン、ノブロ、ケーラー、ゴーベールといったフルート曲を中心に書いている作曲家たちの作品に、イベールの「間奏曲」、フォーレの「幻想曲」、ルーセルの「笛吹きたち」、最後にドップラーの「アンダンテとロンド」というもの。
70年代初めの録音で、解説の写真では金属製のフルートを吹いている。今日実演で聴いた音色そのままの、いくぶんしめりけを帯びた艶のある音がここでも聴ける。
YouTube は、Pablo Bauerの吹くドビュッシーの「シリンクス」
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コメント
ご来場ありがとうございました。
LPを聞かれたようですが、アンダンテとロンドの演奏者は、小出信也さんと誰になっていますか?
もう一人は多分私の友人のしんちゃんだと思うのですが、、、(笑)
投稿: 和尚 | 2009年4月27日 (月) 21時08分
和尚さん、昨日はお疲れ様でした。
良い演奏会でした。
「アンダンテとロンド」のもう一人のフルートも信也さんです。
投稿: 山本晴望 | 2009年4月27日 (月) 21時50分
一昨日のコンサートは良かったですね、おめでとう!
ところでアンダンテとロンドですが信也さんが云ってましたよ、相手が悪いと。あいつとはもう一緒に演奏したくないと云うことらしいです。
投稿: しんちゃん | 2009年4月28日 (火) 08時51分
しんちゃんさん、素晴らしいフルートの演奏ありがとうございました。
子供たちにとって一生の良い思い出になりました。
アンダンテとロンド、私には息がぴったり合った美しい演奏だったと思うのですが・・・信也さんは厳しいですねぇ。
投稿: 山本晴望 | 2009年4月28日 (火) 23時49分
信也さんは厳しいですねぇ、と仰いますが、先に一番フルートとピアノを録音しておき、それを再生して聴きながら二番フルートを重ねて録音していくのです。つまり音だけなので、動作や息づかいなどは全く無い無機質な相手というわけで、やりにくいことおびただしいのです。僕の提案でやったことですが物凄く疲れました。
投稿: しんちゃん | 2009年5月 2日 (土) 07時45分
しんちゃんさん、コメントありがとうございます。
実体の見えない、音だけで録音することがさぞ大変であったことは想像できます。
それにしても「アンダンテとロンド」の特にロンドの部分、とても後から合わせたとは思えないほど凄いと思いました。
ご教示ありがとうございました。
先生のますますのご活躍を祈念して。
投稿: 山本晴望 | 2009年5月 2日 (土) 18時22分
こんなやりとりもしていましたねぇ。
懐かしい。。。
投稿: 押尾 | 2022年2月26日 (土) 09時43分
もう10年以上前のことなのですね。
娘にとっても私にとっても、忘れられない良い思い出となりました。
ご冥福を心からお祈りいたします。
投稿: 山本晴望 | 2022年2月26日 (土) 21時27分