市河彦太郎、シベリウスに会う
5月に入りよく晴れ爽やかな一日。
娘も一時帰省し家の中は賑やかになった。結局一日仕事。
午後からの「イーラde」のGWのスペシャルイベントhttp://
夜に娘たちをピアノのレッスンに連れて行き、帰宅後テレビを点けるとテレビ東京「出没!アド街ック天国」で沼津の特集をやっていた。
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さまざまな観光資源グルメスポットの紹介。やはり海の幸が中心となっていたが、自分の知らないところや意外なお店が紹介されたりしてなかなか面白い。
ゲストの中尾彬が沼津で思い浮かぶものとして、「沼津兵学校」を紹介していたのには驚きました。http://
沼津生まれの外交官市河彦太郎。調べれば調べるほど面白い。
ちょっと長くなりますが・・・ 市河彦太郎は、1933年4月にフィンランド公使としてヘルシンキに赴任。
当時のフィンランドでは日本人としては日本公使館の人くらいで、在留邦人は皆無。その公使館もスウェーデンにある日本公使館の出張所で、職員は彦太郎たった一人という状態だった。
公使館は、ヘルシンキの南のフィンランド湾を見下ろす住宅地の、6階建てのアパートの最上階の半分を占めたところにあった。
目の前は「カイボ」公園。その景色とフィンランド湾の美しい風景に見入っていると、同じ六階に住む隣の家から美しいピアノの音が聞こえてくる。
とても素人のすさび程度ではなく、あまりにも見事な演奏なので、彦太郎は知人に尋ねてみた。
そして日本公使館の隣に住む人がシベリウスの次女「イルヴェス夫人」であったことを知り仰天する。 市河彦太郎の「文化と外交(岡倉書房 昭和14年発行)」には、彦太郎がシベリウスと初めて出会ったときのことが書かれている。
以下引用
・・・・・ある春の日、外出しようとして「エレヴェーター」にのって下に行かうとすると、そこに立派な老人が先に乗っていた。それが「シベリウス」であることはその顔付ですぐわかった。
「失禮ですがシベリウスさんですか?」
「さうです」
それ以上の話をする前にもう別れなければならなかった。しかし別れ際に「シベリウス」は又一度私の方に歩みよってきて言った。
「日本はいま丁度秋ですかね?」
「いいえ、そんなことはありません。やはり春です。」
「あぁ、さうですか」
こんな会話を交したあとで彼はすたこら歩いて行ってしまった。
私はあとで一人でその会話を思ひうかべながら何度も何度も微笑んだ。
そこには芸術家らしい、のんびりしたところがある。
しかし考へて見れば一般の「フィンランド」人でさへも「日本はいま丁度秋ですか?」
程度の理解を日本について持っているのに過ぎないかもしれないぞと思ってだんだん寂しくなっていった。・・・・・・・・・・
その後彦太郎は、長く住む間にシベリウス本人やその家族とも親しくなっていく。 聴いた音楽はハーゲンカルテットのハイドン、初期の弦楽四重奏曲
Youtube はハイドンの作品77の1、演奏はシュカンパカルテット
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