バイエルの謎
昨夜は寝苦しく午前2時頃に一旦目が覚めてしまった。ふと女子サッカー準決勝のことを思い出しテレビを点けてみると「おぉ!2対0で勝っている。」
場面はちょうど後半20分ほどが経過しているあたり。フランスの凄まじい反撃が始まっているところだった。
防戦一方の我らがなでしこジャパンに、眠気は吹っ飛びそのまま眠れなくなってしまった。いつしか娘も起きて隣で見ている。
よくぞあの猛攻に耐えました。次はワールドカップのリベンジに燃える強敵アメリカとの決勝戦。悔いの残らぬようがんばってください。
「バイエルの謎」(安田寛著)を読了。
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かつてピアノの学習者のほとんどの人がご厄介になった教則本のバイエル。
だがこれほど有名でありながら作曲者バイエルの実像はほとんど知られていない。
以前、NHKの名曲アルバムでバイエル教則本中の1曲がピアノ協奏曲風にアレンジされ放送されたのが、作曲家バイエルが公式に紹介された唯一の出来事であったと思う。
この短い番組中で、バイエルの住居跡と推定される地がひっそりとした公園の一角だったことが妙に印象に残っている。
架空の人物だという説が出るほど生地ドイツでも忘れ去られているバイエル。
この本は、ドイツやアメリカまで渡り、何度も絶望的と思われた状況に陥りながら長い年月をかけ作曲家フェルディナント・バイエルの実態に迫った迫心のドキュメンタリーだ。
教則本「バイエル」の初版を求めアメリカに渡り、ようやく所在をつきとめたニューオルリーンズの図書館は直前のハリケーン「カトリーナ」の来襲で水没してしまっていた。
奇跡的ともいえるいくつかの偶然が重なり、マインツの公文書館でバイエルの戸籍を発見する場面など感動的ですらあります。
この本ではバイエルの肖像画も見ることができる。
今も残る膨大な量のオペラアリアなどのピアノアレンジ曲を世に送り出し、大衆作曲家として世に貢献したバイエルの晩年は裕福だったらしい。
バイエルの墓が第二次世界大戦のマインツ爆撃で破壊され、今は跡形もなくなっていたという悲しい現実を交えながらも、著者はさらにバイエルのルーツまで遡っていく。
母方の祖父と曽祖父がドイツの地方都市のカントル(教会音楽家)として活躍していたことを突き止め、さらにバイエルの二人の息子が音楽教師として生涯を終えたことまで探り当てている。
ここまで来るとすごい執念です。
そして「教則本バイエル」の音楽のルーツが、母方の先祖たちが関係した教会で歌われたプロテスタントのコラールにあり、バイエルが幼い頃に母から受けた音楽教育に関係していることまで掘り下げていく中には著者のバイエルに対する深い愛情も伝わってくる。
久々に興奮しながら読み終えました。
Youtubeはバイエル89番
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