アバドの思ひ出
新たな週となったが病状の改善は見られず体調最悪。
昨日、家の近くの評判の良い胃腸科の専門医院に行くことにした。
朝一番で診てもらうために診療開始時間の1時間半前に行ったところ、既に10人ほどの人が凍てつく野外で待っていた。皆老人ばかりで、これでは寒さで参ってしまうのではないかと心配するほど。
診てもらったのは10時過ぎ。腹部レントゲンその他の検査で、幸いノロウイルス感染ではなかった。「点滴を打ちましょう」という話になり、この瞬間午後までかかることが確定。
やむなく午後に入っている予定を全てキャンセルし一日休みとして自宅で静養していた。
夜中に目が覚めネットを彷徨っていると、アバドの訃報が目に入ってきた。
昨年の来日中止で気にはなっていたが、これほど早くに逝ってしまうとは・・・
アバドの実演は、1989年10月のウィーン国立歌劇場の来日時にウィーンフィルとの演奏でモーツァルトの交響曲第29番とブルックナーの「ロマンティック」をオーチャードホールで聴いた。
この時、自分の席の真後ろにハープ奏者の吉野直子さんのご家族が座っていて、気持ちがハイになったのが鮮明な思い出。
演奏はすっきりと見通しの良いもので、冒頭のヘーグナーのホルンソロは見事だったが、ウィーンフィルの「ロマンティック」と言えば、ベームのオケを目いっぱいに鳴らした豊麗な演奏を好んでいたそのころの自分には幾分物足りなかった。
写真は1989年10月の来日プログラム。
56才のアバドの肩書はウィーン国立歌劇場音楽監督。
この年の7月に亡くなったカラヤンのことと、この10月9日にアバドがベルリンフィルの次期芸術監督に指名されたことはまだ書かれていない。
その後2000年のベルリンフィルとの来日時で「トリスタンとイゾルデ」の全曲を東京文化会館で聴いた。
この時は病から復帰した直後で来日そのそのものが危ぶまれ、招聘元の知人が直前まで心配して何名かの代わりの指揮者の交渉者名を挙げていたのも鮮明な思い出だ。
前回の来日とは別人のように痩せていたのが痛々しかったが、演奏は全編張りつめたような緊張感と、透明な響きの美しいワーグナーが会場いっぱいに響いていた。
この頃から音楽は確実に大きく説得力の大きなものになっていたと思う。
アバドは実演で時として神がかった演奏をすることがあった。
昨年5月のベルリンフィルでの「真夏の夜の夢」の実演を聴いた友人の話では、序曲冒頭のふわりとした響きがとてもこの世のものとは思えなかったとのこと。
1987年来日時のウィーンフィルとのベートーヴェンチクルスの「運命」も凄かった。
第3楽章からフィナーレへ駆け上がる部分の見事さは、手元にあるエアチェック録音を今聴いても実が震えるほどの感動を覚える。
アバドの実演をもう一度聴きたかった。ご冥福を祈ります。
Youtubeは昨年5月のアバドの「真夏の夜の夢」から
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