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2014年6月 7日 (土)

バイオリニストは目が赤い

今日も雨、週初めの夏の様な暑さが信じられないほど気温が下がり、しまいかけた長袖の上着で過ごした休日。

家内は昨日から下の娘の様子見に横浜に行っている。
横浜も一日雨で、娘の部屋の片づけで一日過ごしたとのこと。

こんな日は引きこもりがちだが、最寄のブックオフに行き、文庫本コーナーで見つけたN響のヴァイオリン奏者だった鶴我裕子さんの「バイオリニストは目が赤い」(新潮文庫)を購入。

41g251n2shl_sl500_aa300_ 音楽関係の本も雑誌も、最近は買ってなかったが、久しぶりに面白く、一日で全部読み終えた。

文章のうまさもさることながら、N響に客演した名匠たちのエピソードや団員たちの本音が実に面白い。

さらには弦楽器奏者のプロの眼から見た巨匠のテクニックを、さりげなく紹介するところなど眼からウロコ。

かのハイフェッツが弾く「スケルツォ・タランテラ」のレコードを回転を遅くして再生したら、あの速いパッセージのひとつひとつの音にヴィヴラートがかかっていたという話には仰天しました。

この中で、非常に印象深い教えられた一節。

「完璧だけど、人間味がない」と言ってけなされる双璧は、ハイフェッツとフィッシャー=ディースカウであろう。
あなたもそう思いますか?では訊くが、彼らの演奏を「聴く能力」を、あなたはもっているだろうか?
・・・・・・・・・・・中略・・・・・

私がバイオリンを続けていてよかった、と思うのは、自分よりもうまい人たちの演奏を、すみずみまで、具体的に味わえるからである。
その曲を、自分で追及してみた者にしかわからない、こまかい、しかし偉大な仕事の数々が、一枚のレコードにはぎっしり詰まっているのだ
・・・・・後略

頭をガーンと殴られたような衝撃。
プロの音楽家の方々の仕事に対して、ノンキに聴き比べなどを書いている自分が恥ずかしくなってきた。私はまだまだ未熟です。

今日はリヒテルの弾くブラームスのピアノ協奏曲第2番を聴いていた。
伴奏はラインスドルフ指揮のシカゴ交響楽団。 手元に有るのは新星堂が出していたCDで、1960年のRCAへの録音。

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録音当時シカゴ響の音楽監督だったフリッツ・ライナーとリヒテルの意見が合わず、代わりにボストン響の音楽監督だったラインスドルフが起用されたという曰くつきの録音。

第3楽章のチェロソロは、直前まで首席だったシュタルケルではなく、16歳でNBC響に入団したロベルト・ラマルキーナだが、このソロが品格があって非常に良い。

リヒテルの鋼鉄のようなタッチとテクニックのキレは相変わらずのすごさだが、ラインスドルフの職人技に徹したバックも見事。

鶴我さんの著書を読んだ後だけに、さりげなく凄いことをやっているラインスドルフの実力をあらためて見直しました。


Youtubeはそのリヒテルのブラームス、ピアノ協奏曲第2番の録音風景

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