マリナーのブランデンブルク協奏曲
本日快晴、気温も30度近くで来る夏を予感させるもの。
帰宅するとガレージ天井にツバメの塊。
よく見ると若鳥が手前に4羽ほど固まっている。
親ツバメは電灯のヒサシの反対側でなぜか3羽固まっているのが不思議。
まだ幼い雛だと思っていたら、もう飛行訓練ができるまで成長していた。
見た目には親鳥と区別がつかない。
今日はネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管のブランデンブルク協奏曲。
1971年録音のマリナー1回目の録音。
この演奏は音楽学者サーストン・ダートの監修による録音として著名なもの。
バッハの時代の演奏にできるだけ近づけようとしたオリジナル演奏の最初のものだったということで、発売当時はかなり評判になった。
国内盤LPには音楽評論の大御所、吉田秀和氏とサーストン・ダートの読み応えのある解説が付いている。
サーストン・ダートはマンロウ、ガーディナー、ホグウッドらを育て上げ、ブランデンブルク協奏曲には自らフィロムジカロンドンを指揮した古い全曲録音があるが、 その後の研究成果の集大成として、このマリナーとの録音に臨んだもの。
録音には弟子のディヴィッド・マンロウとクリストファー・ホグウッドも加わり、さらにホルンには名手バリー・タックウェルという当時のイギリス勢のオールスターキャストによる録音。
使用楽器はモダン楽器で、今となっては中途半端な折衷的な演奏であることは避けられないものの演奏の充実度はかなりのものだ。
演奏者たちの意気込みも自然と伝わってくる優れものだが、この録音プロジェクトの進行中にダートは急逝してしまう。
享年49歳。
病を押してこの録音に参加したダートの様子については、盟友の突然の死に直面したマリナーによるジャケット解説に詳しい。
結局ダートがチェンバロ奏者として直接参加したのは、第3番と、第2番、第4番の3曲めに過ぎない。
残りはコリン・チェルニーに代わっている。
第2番はトランペットではなく名手タックウェルによるホルンの演奏。
使用楽器はギュトラー盤で聞かれたコルノ・ダ・カッチャ(狩りのホルン)ではなく通常のホルン。
ここで使用している版では、第1番がメヌエットを欠き、第3番では緩徐楽章が長くなっている。
第5番のチェンバロソロはゴーバーマン盤でも聞かれた短縮版。
同じようにオリジナル版の演奏に迫ったゴーバーマンの演奏(1950年代後半の録音)に共通する部分もあり、両者を比べると面白い。
ソリストはいずれもいぶし銀の名手たちだが、フルートのクロード・モントゥーの落ち着いて穏健な演奏が一番印象に残った。
あまりにも偉大な父を持ったために損している印象のクロードだが、ここでは良い仕事をしている。
youtubeはベートーヴェンの交響曲第7番、ロンドン響のヴァイオリン奏者時代のマリナー、指揮は不慮の事故で44歳で逝った名指揮者イシュトバン・ケルテスの貴重な映像
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コメント
以前、オネゲルのクリスマスオラトリオについてコメントした者ですm(__)m
マリナーの衝撃の録音デビューにはダートとかさまざまな研究者、演奏者がかかわっているんですね。ここでのクロード・モントゥーはピエール・モントゥーの息子なんでしょうか。いつの間にか山本さんの影響でイーヴ・ナット、モントゥーの演奏を聴く機会が多くなりました(マルケヴィッチは以前から好きでしたが)。
投稿: mymightycat | 2015年5月31日 (日) 00時45分
Mymightycatさん、コメントありがとうございます。
クロード・モントゥーはおっしゃるとおり父はピエール・モントゥーであります。
クロードの録音はあまり見かけなくて、思い浮かぶのは父子共演モーツァルトのフルート協奏曲やバッハの組曲第2番くらい。
聴き手としては、どうしても父モントゥーの演奏に興味があって、クロードの方は自然と影が薄くなってしまっていたと思います。
このマリナーの録音を聴いてみて父モントゥーの音楽にも通じる暖かでしっとりとした音色と優しい歌い回しに惹かれました。
マリナーはモントゥーの弟子でしたね。
投稿: 山本晴望 | 2015年5月31日 (日) 10時02分