ムラヴィンスキーの「くるみ割り人形」
曇り夜から雨。気温も下がり12月初旬なみの寒さ。
午前中は外部委員による例月の監査。
日曜が本番だったファミリーコンサートの曲目から「くるみ割り人形」を聴いていた。
演奏はムラヴィンスキー指揮レニングラードフィルによるロシアメロディア原盤の国内盤ビクターのLPと「メロディア未発表録音集第2巻」CD4枚組から。
1946、48年の録音。
ここでムラヴィンスキーは組曲版でなく、ムラヴィンスキー独自の抜粋版を演奏している。
収録されているのは、
①情景(お客様の退場、子どもたちは寝室へ、魔法のはじまり)
②情景(くるみ割り人形とねずみの王様との戦闘、くるみ割り人形の勝利)
③情景(冬の松林)
④雪片のワルツ
⑤花のワルツ
⑥終曲のワルツ
でほぼ全曲の進行そのままの選曲。
組曲の中に含まれている曲は「花のワルツ」のみ。他に有名曲といえば雪片のワルツくらい。
ムラヴィンスキーの「くるみ割り人形」には1981年の再録音もあるが、こちらも抜粋版とはいえLPの収録とは曲が異なり、再録音では「花のワルツ」は取り上げていない。
実はムラヴィンスキーの「メロディア未発表録音集第2巻」の組み物CDにもこのモノラル録音の「くるみ割り人形」が含まれていて、こちらは以上の6曲のほか長らくお蔵入りしていた7曲を加えたものになっている。
未発表だった7曲は、
行進曲
アラビアの踊り
中国の踊り
トレパーク
葦笛の踊り
パドドウ
バリアシオン2
というもの。
*なおこのCDの曲目表記には「トレパーク」の次の曲が「金平糖の踊り」とあるが、実際に収録されているのは「葦笛の踊り」。
明らかな誤植で、このCD発売当時の音楽雑誌の演奏評に、この誤りを指摘したものはなかったと記憶している。
なお、最後の曲のヴァリアシオン2が実際の「金平糖の踊り」。
録音年がバラバラなので、計画的に録音していたのではなく1曲ずつ録音していくうちに溜まっていったという印象を受ける。
結局、通常の組曲でムラヴィンスキーが録音しなかった曲は、「小序曲」のみだった。
ムラヴィンスキーは若い頃パントマイムのダンサーで糊口をしのいだり、指揮のキャリアの初期はマリンスキー劇場でバレエを指揮したりしているので、それなりにバレエ曲に理解はありそうだが、いわゆるチャイコフスキーの三大バレエは「くるみ割り人形」の録音しかないようだ。
この「くるみ割り人形」の演奏は、ムラヴィンスキーならではの切り込みの鋭い部分もあるけれども、多くの曲で優雅で華やか、そして幻想的なメルヘンの世界を描いた穏やかな演奏となっている。
「花のワルツ」では、ハープが楽譜の指定を離れた長大で華麗なカデンツァを聴かせ、続くホルンの四重奏から柔らかで優しげな音楽に変貌する。
あの近寄りがたいムラヴィンスキーの風貌からは想像もできないロマンティックで甘い演奏になっていた。
バレエ曲を振るときは、リラックスしてにこやかに指揮していたのではなかろうか。
未発表録音では妖しくも不気味な「アラビアの踊り」がユニーク。
タンブリンの音がガラスを引っ掻くような音を出していた。
「トレパーク」は意外に大人しい。
youtubeはムラヴィンスキーのブラームス、交響曲第4番のリハーサル
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コメント
バリアシオン2が金平糖の踊りでは
投稿: 通りすがり | 2016年10月29日 (土) 18時10分
通りすがりさん。ご意見ありがとうございます。
書き方が曖昧だったので誤解を招いたようです。
ヴァリアシオン2は確かに「金平糖の踊り」です。
ただこのCDのライナーノートには、トレパークの次が「金平糖の踊り」との標記となっていますが、実際に収録されているのは明らかに「葦笛の踊り」で、この誤植を指摘したつもりでした。
ただ後段で「金平糖の踊り」が録音されていないような書き方をしたのは私の誤りです。
訂正し書き直しました。
ご指摘ありがとうございました。
投稿: 山本晴望 | 2016年11月 2日 (水) 20時33分