クロスリー、2つのラヴェル
冷たい風が一日中吹いていた日曜日。
昨年末の入院はもうはるか以前の出来事のよう。
20年以上使用していたクラビノーバを午前中にピアノ運送業者が引き取りに来るというので、弟と娘の友人を助っ人に頼み朝に2階から下に降ろした。
これがかなり大変な作業。
音楽部屋にもピアノはあるものの、ヘッドフォンで深夜や早朝にも練習ができるクラビノーバはそれなりに重宝していて 、自分でオルガンやチェンバロの音でバッハを弾いたりして遊んでいた。
家内は名残惜しいのか運ぶ直前まで弾いたりしている。
買い取り価格は千円也。
運送代は先方持ちなのがありがたい。
午後は入れ替わるように新しい洗濯機を業者さんが持ってきた。
壊れた古い洗濯機を移動すると「うわぁー・・・」
その跡は凄い汚れようだった。
こちらも20年以上の埃が層となっている。
一日掃除に追われた日曜日。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・疲れた。
手術の跡も痛くなってきた。
今日はイギリスのピアニスト、ポール・クロスリーのラヴェル。
クロスリーはラヴェルのピアノ曲全集を異なったレーベルで2種類出している。
ひとつは現在80年代、今はブリリアントレーベルから出ているものと、再録音は1996年の当時のCBSへのもの。
その2つの全集の中から「夜のガスパール」「ソナチネ」「クープランの墓」などを聴いていた。
ブリリアントのものはきっちり生真面目丁寧に弾き上げた印象。
一方のCBS盤は全体に旧盤よりも速いテンポ。
それでいて緩急の落差が大きく、曲によっては他のピアニストの演奏では聞こえてこなかった音まで響いてくる。
???と思い再録音のクロスリー自身のライナーノートを読んでみると。再録音にあたって、最新の校訂版の譜面を使用したようなことが書いてあり、いままでの出版譜にあった明らかな誤りの箇所なども書いてある。
譜面片手に聴きなおした訳ではないが、「夜ガスパール」第1曲のオンディーヌでの微細な音のテンポの動きなどは、単調な旧盤に比べて格段に良い。
全般に音楽的なインパクトは新盤の方が高いと思うものの、新盤は曲によっては技巧に問題があるようにも思う。
特に「クープランの墓」の第1曲や「水の戯れ」は、指が回っていないのではないかと感じさせるほどぎこちなく聞こえる。
だがほかの曲はさほど技巧に物足りなさは感じない。
ラヴェル自身ピアノはあまり上手くなかったと言われている。
ラヴェルの親指は人差し指と同じくらい長く、独特の個性の演奏を聴かせたということだが、好意的に解釈すると、クロスリーはその効果を再現しようと狙ったのではないかとも思えてくる。
「ハイドンの名に寄るメヌエット」の孤独感、「道化師の朝の歌」「亡き王女のためのパヴァーヌ」に感じる深い闇。
曲によっては今まで聴き慣れたピアニストたちの演奏とはかなり異なる独特のクセがあり、これは好悪が分かれそうだ。
ネットを見ると世評は賛否両論まっぷたつ。
Youtubeはクロスリーの弾くラヴェル、左手のためのピアノ協奏曲、ジュリーニの指揮
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