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2017年5月10日 (水)

リッチのシベリウス

雨のちくもり。今も燃え続ける東北の山火事はこの雨で鎮火するのだろうか。

先日の「ラ・フォルジュルネ」で竹澤恭子の演奏を聴いたシベリウスのヴァイオリン協奏曲。

今日は手持ちの音源をいくつか聴いてみた。

演奏はリッチのヴァイオリン、ノルウェーのフィエルシュタート指揮ロンドン響による演奏。


手持ちはSTS規格の米ロンドントレジャリーシリーズのLP.


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・ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.47    

               :シベリウス
・ワルツ・スケルツォOp.34  

               :チャイコフスキー
・ゆううつなセレナードOp.26 

               :チャイコフスキー

 ルッジェーロ・リッチ(ヴァイオリン)
 エイヴィン・フィエルスタート(指揮)
 ロンドン交響楽団

 1958年録音

この演奏を初めて聴いた時にはリッチにしては冴えない音で、あまり良い印象を受けなかった。

今回フォノアンプのイコライザーをRIAAからffrrに切り替えたところ音が一変。 


リッチの輝かしいまでの艶やかな音色にオケも各楽器が明瞭に鳴り、奥行きも出てきたのには驚いた。

プレスは1960年となっているがどうやらRIAAカーヴではなかったようだ。
 


演奏の熱気も尋常でない。うねるようなフィエルシュターットの伴奏も非常に良い。

カップリングされていたチャイコフスキーの2曲も非常に美しい。


これに味をしめ、手持ちの音源から同じ米ロンドンのトレジャリーシリーズの音盤を取り出してみた。

聴いたのはプレヴィターリ指揮ローマ聖チェチーリア音楽院管との「ローマの松」  


カップリングはカゼルラの組曲「壷」

Photo


これもRIAAで聴くと音が鈍かった。  


試しにffrrに切り替えてみたが高音がやたらと強調されて音は良くない。
 

RIAAカーヴの方は多少音が自然。

 


どうもこのシリーズは、採用したイコライザーカーヴがバラバラのようだ。


そしてシベリウスをもう一枚。

ロシアのヴァイオリニスト、ユリアン・シトコヴェツキーの演奏。
 

伴奏はロジェストヴェンスキーの父、アノーソフ指揮のチェコフィル。
チェコス・プラフォンへの録音で、手持ちは米パーラメント盤。
 

1953年のモノラルだが音は非常に良い。



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・ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.47   :シベリウス
 ユリアン・シトコヴェツキー(ヴァイオリン)
 ニコライ・アノーソフ(指揮)
 チェコフィルハーモニー管弦楽団

・悲しきワルツ
・交響詩「トゥオネラの白鳥」

  ヴァツラフ・スメターチェク(指揮)
  プラハ交響楽団

ユリアン・シトコヴェツキーは30代で急逝しているが、そのまま長命すればコーガンと並ぶほどの存在になったであろうことが想像できる見事な出来。

音のひとつひとつが厳しい。  


触れれば血が吹き出そうなほどの鋭く殺気立った硬質な音。
 


アノーソフの伴奏もスケール大きな壮大な出来だ。

カップリングはスメターチェク指揮のプラハ響によるシベリウスの「悲しきワルツ」と 「トゥオネラの白鳥」。
 


こちらは音が枯れすぎで楽しめなかった。



Youtubeはヒラリー・ハーンのシベリウス

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音盤視聴記録」カテゴリの記事

コメント

複数EQフォノアンプのご導入でいよいよレコード界の核心に迫ってきましたね。EQカーブが適合することで「ピントの合った音」が初めて体験できるわけですから。

アナログオーディオ全盛時代、レコードメーカー、オーディオメーカーともだんまりを決め込んで複数のEQカーブの存在を封印してきたのではないでしょうか。ソフト提供側は新しい録音ほど音が良いと喧伝するために、ハード提供側は聴いているレコードの音質が悪いのは安物の機械のせいで高価な装置にすれば音質が良くなるという幻想を持たせるために「現行販売商品において、あらゆるレコードのイコライザーカーブはみーんな一緒」ということにしてしまったのだと妄想しております。

この妄想、経済的見地から説明がつきます。ソフト提供側の立場からすれば高値で売れる新譜を積極的に売りたいわけです。値段を下げざるを得ない旧譜に一々手間をかけるなんて合理的ではありません。だからNABカーブで作られた盤をそのままRIAAということにして売ってしまえばあら不思議、前述の「妄想」の世界が成立してしまいます。更にSP復刻盤であればNAB盤をRIAA再生させることでSP特有のスクラッチノイズが抑制されるというメリットもあり、音質も落とせて一石二鳥になります。

まあステレオ時代に入っても何故別カーブなのかというところの説明にはなりませんけれど。DECCAがイタリアに出張録音した際に機材をイタリアで調達しマスタリングまでそこで行ったけれど、その機材所有会社が「別カーブしか持っていなかった」とか、イタリアの会社に製作まで丸投げしてイギリスに原盤を送らせたらこうなっていたとか、そもそも原盤をこっそりマイナーレーベルから買っていたとか色々妄想が広がりますW。

いずれにせよ複数のEQカーブで再生できる環境はアナログオーディオの世界を広げてくれるので新たな発見ができますよね。

投稿: ぶりちょふ | 2017年5月11日 (木) 20時01分

musicaのフォノアンプはそれほど良いものとも思えないのですが、このリッチのシベリウスのあまりの大きな変貌ぶりには驚きました。

ステレオになっても、こんなことがあるとは思いませんでした。

レコードビジネスの深い闇を見た思いです。

投稿: 山本晴望 | 2017年5月13日 (土) 21時25分

10年以上前のMIXIにあったイコライザーのコミュの投稿に頷かされています。是非ご参考にされてください。

投稿: ぶりちょふ | 2017年5月14日 (日) 12時34分

ぶりちょふさん、コメントありがとうございます。

ご提示されたmixiのコミュですが、データが開けませんでした。
コミュの名前を教えていただきますか。

投稿: 山本晴望 | 2017年5月16日 (火) 08時48分

http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=49285&id=3130997

これをご覧ください。PCなら見られると思います。できない場合は
yahooで「イコライザーカーブ」
の検索結果で上から7番目がこれに当たります。是非ご覧ください。

投稿: ぶりちょふ | 2017年5月16日 (火) 22時16分

mixiのコミュ検索で「イコライザーカーブ」を検索すると大別された4つの検索結果のうち3番目の下のほうに「クラシックアナログレコード」のトピックとして「イコライザーカーブについて」というトピが見られると思います。ひょっとするとMIXIのアカウントを持っている人だけが見られるものかもしれませんが。

投稿: ぶりちょふ | 2017年5月16日 (火) 22時25分

ぶりちょふさん、ご教示ありがとうございます。

記事を読むことが出来ました。

前から古いモノラルLPを聴くときに薄々感じていた疑問が氷解した思いですが、複雑怪奇な世界に足を踏み入れてしまったというのが正直な感想です。

このリッチのステレオ盤をffrrで再生した時の変貌ぶりにはとにかく驚きました。

ただSTS規格の同じシリーズでもアンセルメの録音はRIAAの方が自然でした。

結局どのカーヴでカッティングしたかの情報がはっきりしない以上、リスナー側が自分で聞いてみて良いと思ったカーヴで聴くしかないのですね。

投稿: 山本晴望 | 2017年5月17日 (水) 22時30分

生の音に親しんでいて、複数のイコライザーを持っていれば悲観するには当たりません。イコライザーを選ぶことでピント調整をするわけですので。今どきはパソコンのイコライザーで解決できるのですけれど。

まずは基準値ということでRIAA再生、ピンボケしているなと感じたら他のカーブを試してみれば良いわけです。最初は①RIAAか②それ以外かの2択問題。次に①そのレーベルが過去に扱っていたカーブか②それ以外かの2択で攻めれば大概正解に近づけるものと思っています。こんなやりとりをしている間に発見したのがキングのモノラル廉価盤MZシリーズで、一部NABだったりするのです。これはアメリカのロンドンレーベルができる前、あるいはロンドンが創設されてもそこで扱われなかった音源をエヴェレストで発売していたものがあってNABカッティングされており、日本ではそれを音源にしているのではと疑われるものがあるのです。なんちゃってw。

投稿: ぶりちょふ | 2017年5月18日 (木) 00時05分

とにかく今回のリッチ盤のように今まで聴いた印象がひっくり返るケースもあるので、手持ちの音源を聴き直す楽しみが増えました。

MZシリーズも盤によって音の良し悪しが極端なので、聴き比べてみようと思います。

いろいろとご教示ありがとうございました。

投稿: 山本晴望 | 2017年5月19日 (金) 22時42分

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