失われた手稿譜~ヴィヴァルディをめぐる物語
晴れ、日がだいぶ短くなった。
日一日と秋は深まり夜になると虫の鳴く声が煩いほど。
適度な涼しさが読書の季節。
「失われた手稿譜~ヴィヴァルディをめぐる物語 」
(フェデリーコ・サルデッリ 東京創元社)読了
ヴィヴァルディの手稿譜が作曲者の死後に辿った運命をできるだけ史実に忠実に追跡したノンフィクションノベル。
ヴィヴァルディはその晩年多額の借財を残したままウィーンで客死。
ヴィヴァルディの弟フランチェスコが、兄の債権者たちから持ち去られようとする財産の中から手稿譜を救う場面からこの物語は始まる。
貴族を侮辱した罪でヴェネチアを追放された史料を最後に、フランチェスコの消息は歴史の彼方に消えてしまう。
その後愛書家の貴族によって集められたヴィヴァルディの作品を含む有名無名の作曲家たちの手稿譜が、貴族の死後子孫の遺産の騒動により分割されたり価値のわからぬ修道士の修道院で死蔵されたりと、何度か散逸の危機に遭いながらも再び収斂してトリノの図書館に収まるまでの顛末。
実在の登場人物の会話部分に作者のフィクションを織り交ぜながらのスリリングな事実の展開が面白い。
今聴くことのできる膨大なヴィヴァルディの作品の多くが、奇跡的な偶然と価値を知る人たちの非常な努力によって生き残った事実。
この本を読み、ヴィヴァルディの曲に対する自分の考え方が変わった。
これからは軽く聞き流さずにしっかりと聴いてみよう。
Youtubeは調和の幻想作品8-3
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