馴染みの鮮魚店、そしてE.フィッシャーのバッハのことなど
10月に入っても連日真夏日。
本日快晴、未だ蒸し暑い1日。
ヒガンバナがここにきて盛んに咲き始めた。
昨日は帰省した娘と彼氏を交えて自宅でささやかな食事会。
夕方、隣町にある今や数少なくなった鮮魚店のひとつ、「魚龍」に頼んであった刺身を取りにいった。
ここのご主人の実家は我が家の近くにあった魚屋で、幼い頃には母に連れられその店によく買いに行った。
昭和40年代の始めはスーパーもなく魚屋、八百屋が軒を並べ、その店では若い兄弟3人が元気良く働いていた。
中でも若き日の「魚龍」のご主人は颯爽と魚を捌いていてカッコよかった。
いまでもその景色はよく覚えている。
本家はもう店じまいして久しく、今は跡形もない。
出来上がったときにご主人が私の顔をじっと見て「どこかで会ったような気がするけんど、住まいはどちら?」と聞いて来た。
家内は時々買い来るけれど、自分はほとんどこの店に来たことがない。
幼き頃の思い出を話すとご主人は破顔一笑。
「懐かしいねぇ、おいくつになった? おれはもう80を超えたよ」
細面になって腰は多少曲がったけれども威勢のよさは昔のままだった。
いつまでもお元気で・・今度母を連れて来ます。
今日はバッハを聴いていた。
巨匠エドウィン・フィッシャーのピアノ。
手持ちは国内盤CD。
1. 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903
2. トッカータ ニ長調BWV912
3. コラール・プレリュード「主イエス・キリストよ,われ汝に呼ばわる」BWV639(ブゾーニ編)
4. 幻想曲とフーガ イ短調BWV904
5. 幻想曲(前奏曲)イ短調BWV922
6. 幻想曲ハ短調BWV906
7. アダージョ(マルチェロの協奏曲に基づく協奏曲BWV974)
8. 前奏曲とフーガ変ホ長調BWV552
・エドウィン・フィッシャー(ピアノ)
録音 1935~37年
エドウィン・フィッシャー(1886~1960)は、シュナーベルやバックハウスと肩を並べるドイツ本流のピアニスト。
ベートーヴェンのみならずバッハにも数多くの名演を残している。
世評名高いフィッシャーの平均律クラヴィーア曲集を最初に聴いた時は、その良さがさっぱりわからなかった。
それまでリヒテルの幾分ロマンティックで流れるような名演が刷り込みだったので、その対極にあるようなスタッカートを多用したフィッシャーのバッハの良さが理解できなかったのかもしれない。
このバッハは半音階的幻想曲とフーガ ニ短調や映画「惑星ソラリス」で使われていたコラール・プレリュードなど、バッハの多彩な鍵盤楽曲を収めている。
ストイックでいて孤高の厳しさを感じさせるフィッシャーのバッハ。
聴いていて襟を正したくなるような演奏の数々。
BWV922の煌めくような速いパッセージからの動から静への鮮やかな転換。
そして「主イエス・キリストよ,われ汝に呼ばわる」の演奏では人の温もりの暖かさが感じられるのが感動的だ。
録音はモノラルながら音はよい。
Youtubeはコラール・プレリュード「主イエス・キリストよ,われ汝に呼ばわる」、フィシャーの弟子ブレンデルの演奏
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