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2019年10月11日 (金)

巨大台風接近中、そしてハイティンクの宗教改革のことなど

巨大台風19号が接近中。


この台風の規模はかつてこの地沼津を襲った狩野川台風に匹敵するという。

テレビの台風情報では何度も当時のニュース映像が流れていた。

 

60年前とはいえ経験した人の記憶は未だに鮮明。

かつてご近所の老人からは、狩野川上流から流されて来る家の屋根にしがみついた人たちが次々に濁流に呑まれていく様子を助ける術もなく泣きながら見ていたという話を伺った。

 

当時住んでいたわが家では屋根がすっぽり強風に持って行かれ、暴風雨の中を避難した恐怖を母は台風が来るたびに語っている。

予想進路には今回も伊豆半島が完全に入っている。

 

今日は早めに帰宅して築90年の母屋の古い雨戸の調子をみていた。

枠が歪んでしまって何度試しても完全に閉まらない。

うーんダメか・・・

 

 

そのうち雨に煙る裏山の遠くから生き残りのツクツクホウシの鳴き声が微かに聴こえてきた。

まだ生きていたか・・・

 

そして何となく不安を感じながらも聴いた音楽はハイティンクのメンデルスゾーン。

 

曲は交響曲第5番「宗教改革」と序曲「フィンガルの洞窟」。

ハイティンクがロンドンフィルの首席指揮者だった時代の録音で、最初のメンデルスゾーンの交響曲録音。

 

手持ちはフィリップス原盤の日本フォノグラムのLP

Img_20191006_223351

 

・交響曲第5番 ニ長調 「宗教改革」 Op. 107
・序曲「フィンガルの洞窟」Op.26

  ベルナルド・ハイティンク(指揮)
  ロンドンフィルハーモニー管弦楽団

 1978年録音

この時期のハイティンクはブルックナーとマーラーの交響曲の最初の全集を完成させていて、ロンドンフィルとはベートーヴェンの交響曲全集も録音。

交響曲全集大量製造機の趣があって、当然このメンデルスゾーンも交響曲全集に発展するだろう、と思わせる内容がジャケット解説に書かれている。

 

結局交響曲全集としては完成せず、フィリップスはロンドンフィルとのメンデルスゾーンの交響曲録音のうち第2番のみデビュー間もないリッカルド・シャイーに任せている。


このあたりは何か事情がありそうだ。

 

このハイティンクの演奏では、ロンドンフィルの幾分ふくよかな音色がメンデルスゾーンの交響曲でも古風な味わいの深い第5番にはうまく合っている。

 

書かれた音符をバランスよく鳴らし切る手際の良さでどの曲も一定以上の水準で聞かせるハイティンク。

 

この職人技が各種交響曲全集の録音に繋がったのだろうか。

 

この演奏も多少生真面目で優等生的な印象もなくはないけれども、曲の楽しさと美しさを味わうには十分の出来だ。

 

ハイティンクでは、古い音楽雑誌の若い頃のインタビュー記事にあった「私はたぶんノロマなのです。」という言葉が今でも非常に印象に残っている。

 

謙虚なこの言葉をハイティンクの演奏を聴くたびに思い出す。

 

真面目にコツコツ勤め上げて巨匠の域に達したハイティンク壮年期の記録。

 

壮大にオケを鳴らし切った「フィンガルの洞窟」は交響曲以上の名演だ。

 

EQカーヴはffrrで聴いた。

 

Youtubeは「宗教改革」のフィナーレ

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