フルトヴェングラー、戦時下のブルックナー
2月も後半の金曜日。
朝の気温は13度。今年の冬は短かった。
10~12月までのGDP成長率はマイナス6%。
祖父の代から小さな小売店を営んでいた知人が店を閉めてしまった。
その店は大きな工場の正門そばで営業していて、そこそこ商売は成り立っていた。
だが消費税の引き上げの影響は大きく、零細小売店にとっては致命的なダメージだったらしい。
新型コロナウイルスの猖獗がさらに景気を下げるのだろう。
今日は久しぶりにブルックナー。
フルトヴェングラーの交響曲第9番を聴いていた。
手持ちは日本グラモフォンから出ていたペラジャケのLP。
ブルックナーの音楽が日本国内でさほど聴かれていなかった頃の発売で、別紙解説書にはブルックナーと他の交響曲についての詳細な解説。
録音時期が不明と書いてあるのにも時代を感じさせる。
・交響曲第9番 ニ短調
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー (指揮)
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
録音: 1944年10月7日
ベルリン
今のところフルトヴェングラー唯一の9番。
第二次世界大戦戦時下での放送用録音。
1944年10月といえば、西から侵攻してきたアメリカ軍がオランダに近いドイツの都市アーヘンに突入、さらには東からはソ連軍がドイツ国境に迫っていた。
その緊迫した情勢下でのブルックナー。
速いテンポで猛烈にテンポを動かすフルトヴェングラーの指揮に応えるベルリンフィル。
これほどドラマティックな演奏は類を見ない。
国家がまさに崩壊寸前にある時期の、落ち着きよりも怒りにも似た激しさも感じられる凄絶な演奏だ。
録音はこの時代のものとしては音は良い。
この曲の自分の刷り込みは、エドアルド・ヴァン・ベイヌム指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管によるモノラル録音。
70年代半ばにはこの唯一の国内廉価盤だった。
今聞いても落ち着いたテンポで、大きな広がりと懐の深さが感じられる大変な名演。
悲壮感を漂わせながら厳しい音響の壁が次々と現れては過ぎ去っていく。深々としたオケの響きが実に素晴らしかった。
Youtubeはフルトヴェングラーのブルックナー、交響曲第9番
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