ピアノ調律師瀬川さんの墓参り、そしてリヒテルの平均律
今日は3.11、晴天、明け方に強い風が吹いていた。
昨日は昨年暮れに逝去されたピアノ調律師瀬川宏さんのお墓参りに行っていた。
瀬川さんはリヒテルやミケランジェリ、フランソワら大ピアニストたちの調律を手掛けた日本を代表するピアノ調律師。
三島駅に着くとポツリポツリと雨。
バッグから持参した折りたたみ傘を取り出し、開こうとしたらスポッと柄の部分が外れてしまった。
させないことはないけれど、30センチほどの短い柄に小さな傘は見た目に滑稽。
やむなく近くのコンビニで傘を購入680円。
店から出ると雨は止んでいた。
待ち合わせ時間には多少の余裕があったので近くの図書館へ。
館内は新型コロナウイルスの影響で閲覧机の利用はダメ。
やむなくしばし書架の前で立ち読み。
待ち合わせ場所の三島大社への途中の池には微動だにしないアオサギの姿が。
大社の鳥居でボエームの会のIさんと待ち合わせて願成寺まで歩いて行く。
ここは源頼朝が宿泊し連歌師宗祇が古今伝授を受けた、古城跡に建つ古刹。
お墓参りを済ませた直後、待っていたかのように雨が降ってきた。
かなりの本降り。
墓参りの後大社の境内通って「麦」で仲間と昼食。
ここもコロナウイルスの影響で客が他にはいない。
とろろ汁とそばの定食、とろろと海苔のはさみ揚げ、どぜうと牛蒡の揚げ物をつまみにそば湯割り焼酎などを飲んでいた。
くー! 昼間の酒はよく回るな。
店から出ると外は激しい雨。
ちょうど駅前のギャラリーでメンバーの作品展示がありこちらを見てから帰宅。
今日は瀬川さんが調律で関わったリヒテルの演奏を聴く。
リヒテルは実演を2度聴くことができた。
最初は1981年3月の函館。
ベートーヴェンの4つのソナタ、6,7、16,17番の4曲。
もう40年近く前のことなのにリヒテルが舞台に登場した姿と、アンコールはショパンの「雨だれ」だったこともはっきり覚えている。
チケット1万円は学生だった自分にとって破格の金額だった。
2度目はリヒテル最晩年の1994年。
場所は瀬川さんの眠る三島市。
今にして思えば、その頃コンサート回数も減り大都市でしか演奏しなかったリヒテルが小さな一地方都市で演奏会を開いたのは、当地出身の瀬川さんの存在が大きかったのだと思う。
そしてこの時の調律は当然瀬川さんだったに違いない。
曲はグリーグの「抒情小曲集」のみという特異なプログラム。
函館の時と違って、照明を落とした舞台に灯り照らされたピアノ上の楽譜。
眼鏡をかけたリヒテルが淡々とグリーグのシンプルでいてクリスタルのような純粋な世界を描き出していた。
アンコールはラヴェルの「スカルボ」だったと思う。
今日はリヒテルと瀬川さんを偲びながらバッハを聴く。
曲は平均率クラヴィア曲集第1巻。
1970年7月21-31日、ザルツブルク、クレスハイム宮およびエリーザベト教会での録音。
手持ちは国内盤LPとCDがあるけれども、今日は新世界レコードから出ていた3枚組LP。
残響豊かな響き、穏やかで温かくそして深い音楽が静かに静かに照明を落とした部屋に広がっていく。
youtubeはリヒテルの弾く平均律。第1巻第一番。全ての音楽はここから始まる。
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