幕末狂乱~コレラがやって来た!
新型コロナウイルスの脅威が刻一刻と迫っています。
疫病退散についてこの沼津に伝わる歴史的事実を紹介します。
安政5年5月ジャワを経て長崎に上陸したコレラは各地で猛威をふるいながら東上、7月には江戸に到達しました。
沼津市下香貫楊原にある吉田神社は、安政年間のコレラ流行時に疫病退散を祈念して京都の吉田神社を勧請した神社です。
当時の勧請の詳細を書き記した記録が残されていて、本にもなっています。
「幕末狂乱~コレラがやって来た!」(高橋敏著 朝日選書)
この本は異国船の到来、安政の大地震、大津波。
社会不安が日本全体を覆う中、各地に残る古記録を元に庶民が立ち向かう姿を紹介したものです。
コレラが刻一刻と西から沼津に迫る中、必死に対抗策を模索する下香貫の人々。
やがて疫病退散に御利益があるという京都の吉田神社の勧請しようということになりました。
日々の暮らしで精一杯の中で、村内からかき集めた5両を懐中に村内から選ばれた2人が京都に向かいます。
ところが、苦労してたどり着いた京都の吉田神社側は、足元を見透かして法外な祈祷料を要求。
この人達が祈祷料7両二分をいかにして工面したかの記述はありません。
やっとの思いで祈祷されたお札の入った小箱を手に入れた2人は、故郷沼津に向かって東海道を飛ぶが如く下っていきます。
途中、心配して駿府(静岡市)まで迎えに来ていた村人の代表二人に会いました。
沼津に向かう東海道筋では、吉田神社の祈祷の小箱が通過することを聞き小箱に群がる人々の姿。
この本には緊迫した当時の様子がドラマティックに書かれています。
京までの路銀は全て自己負担だったといいます。
皆のためになるならば、自分を犠牲にしてまで全力を尽くそうとする、当時の人たちの純朴にして崇高な精神には心を打たれます。
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