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2020年6月13日 (土)

ヤニグロのベートーヴェン

朝から雨の土曜日。
夕方から本格的な降り。

 

イタリアのチェリスト、そして指揮者アントニオ・ヤニグロのチェロでベートーヴェンのソナタを聴く。

手持ちは米ヴァンガードから出ている全集CD2枚組。
ピアノはデムス。


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・チェロソナタ第1番ヘ長調 Op.5-1
・チェロソナタ第2番ト短調 Op.5-2
・チェロソナタ第3番イ長調 Op.69
・チェロソナタ第4番ハ長調 Op.102-1
・チェロソナタ第5番ニ長調 Op.102-2

  アントニオ・ヤニグロ(チェロ)
  イェルク・デムス(ピアノ)

   録音:1964年

ヤニグロは50年代から60年代初めにかけて、自ら設立したザグレブ室内合奏団を指揮してバロック音楽を中心に多くの録音をヴァンガードレーベルに残していた。

その多くは70年初めにキングの廉価盤で出ていて私はずいぶんとお世話になった。

 

60年代から80年代にかけては、パイヤールやクルト・レーデルが率いる楽団やイ・ムジチなどの室内合奏団がそれぞれ独自の個性を誇っていて、折からのバロック音楽ブームに乗って数多くの録音を送り出している。

その中でヤニグロの指揮した一連の録音は、マイナーレーベル原盤の廉価盤ということもあって地味な印象でなんとなく主流から外れた扱いだったと思う。

 

今聞くとヤニグロのきっちりとした堅実な演奏は、ロマンティックに変容したイ・ムジチやパイヤールよりも時代を超えた存在のようにも思える。

 

チェリストとしては、米ウェストミンスターとヴァンガードにチェロの基本的な名曲を多く録音している。

ディーン・ディクソンが指揮したドヴォルザークのチェロ協奏曲はかなり良かったし、名指揮者フリッツ・ライナーは、交響詩「ドン・キホーテ」の録音時にチェロのソリストとしてヤニグロを起用している。

 

このベートーヴェンのチェロソナタは、このヴァンガード録音の前にウェストミンスターに全曲録音を残している。

ピアノ伴奏はカルロ・ゼッキ。

この演奏も是非きいてみたいもの。

特にゼッキの伴奏が興味深い。

 

そしてこの再録音。

美しく伸びのある音に確かなテクニック。

自由闊達にしてしなやかな歌を聴かせる大変な名演だ。

音楽の運びと柔らかな品のある音色は、名チェリスト、ピエール・フルニエに似ている。

パリのエコールノルマルでヤニグロが師事したディラン・アレクサニアンは、フルニエの師でもある。

 

ここでのデムスの重厚で艶のあるピアノも非常に良い。

録音も良好なステレオなのもありがたい。

 

Youtubeはヤニグロの弾くバッハ、無伴奏チェロ組曲第1番、しみじみと歌う名演です。

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