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2020年12月に作成された記事

2020年12月31日 (木)

リリングのバッハ、カンタータ第191番「天のいと高きところには神に栄光あれ」

令和2年の大晦日。
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朝は冷え込み、雪が被って富士山は正月の装い。


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畑には霜柱。檸檬も色づいた。


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思えば今年は大変な年だった。

人類の歴史は人との繋がりで成り立っていたのに、その繋がりが分断されてしまった年。

 

沼響の定演は創立以来初めての中止。

どこにも出かけることが出来ずにコンサートも1月のN響と12月の静響のわずか2回。

東京に住む娘は暮れに帰省出来ず一緒に正月を過ごすこともできない。

 

昨年のラグビー・ワールドカップの熱狂は遥か昔の出来事のよう。

来年はどのような年になるだろうか。

 

今年最後に何を聴こうか・・・

 

とレコード棚から取りだしたのは、大バッハのカンタータ。

 

ヘルムート・リリングのバッハ、カンタータ全集からBWV.19と191の2曲。
スイスEx LibrisのLPで聴く。

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・カンタータ第19番「かくて戦おこれり」
・カンタータ第191番「天のいと高きところには神に栄光あれ」

 

 ヘルムート・リリング(指揮)
 シュトゥットガルト・ゲヒンゲン聖歌隊
 シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム ほか。

 

いずれもトランペットが活躍する華やかな曲でBWV.191はロ短調ミサからの3曲と同一の曲。

 

そしてカンタータ第29番「われら汝に感謝す、神よ、われら汝に感謝す」

29番のシンフォニアは無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番のプレリュード、第2曲はロ短調ミサの終曲

 

モダン楽器によるバッハ、カンタータ全集として最右翼の演奏。

 

フルートソロがあまりにも見事なのでメンバー表を見ると、ペーター・ルーカス=グラーフだった。

 

Youtubeはカンタータ第29番

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2020年12月30日 (水)

ミュンシュのルーセル

雨のち晴れ。久しぶりにまとまった雨。

午後からは正月飾りが吹き飛びそうなほどの強風。
これから寒さ厳しく大荒れの予報。

 

 

激動の令和2年も暮れていく。

コロナ感染の拡大は続く。

コロナで景気悪化の中でも日経株価は31年ぶりの高値とのこと。
異常なほどのマネーが市場に投入されている。

 

景気が悪くなり困窮者が増えている一方でコロナバブルを謳歌している人もいるのだろう。

 

昨日は朝早くの漁協の年末大売り出しに行く予定が出遅れた。

 

年賀状を投函しながら9時過ぎに漁協に行くと市場は閑散としていた。

 

もうめぼしいものはなく、結局何も買わず漁港の堤防をぶらぶら。

真正面に見えるはずの富士山は雲に隠れて見えない。


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有名なフィッシングのポイントなので多くの釣り人が出ていた。
カマスが釣れているようだった。

堤防下の海中を見るとカマスの群れが見えた。


釣り人に尋ねると簡単に釣れそうだが意外と釣れないとのこと。

 

今日は午前中に母を連れて正月の買い出し。
近所のスーパーは意外なほど空いていた。


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午後は神棚の飾り付けなどのいつもの年末。

 

ミュンシュのルーセルを聴く。

コンセール・ラムルー管を振った交響曲2曲。

日本コロンビアの国内初出盤LPで聴く.

ジャケットは海外初出盤。

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・交響曲第3番ト短調 Op.42
・交響曲第4番イ長調 Op.53

 シャルル・ミュンシュ(指揮)
 ラムルー管弦楽団
 録音:1965年6月20-26日 パリ、ノートルダム・デュ・リバン教会

 

ミュンシュは1962年にボストン響の音楽監督を辞してからヨーロッパに戻り、1967年のパリ管創設までの間に比較的自由な客演の日々を過ごしていた。

レコーディングとしてはフィラデルフィア管やニューフィルハーモニア管、ロッテルダムフィル、ハンガリー国立管など、今までにない組み合わせのいくつかの録音が残された。

フランス国立放送管とはコンサートホールレーベルへの録音もあるし、ライヴ録音でも比較的まとまった数の演奏が残されている。

 

ラムルー管との録音は珍しく、この2曲の他はデュティユーの交響曲第2番とナヴァラをソリストに迎えたラロとサン・サーンスのチェロ協奏曲があるくらいだろう。

 

フランスのオケ独特の洗練された音色が魅力の演奏。

だがルーセルの緻密なオーケストレーションを再現するにはもう少し高い精度が欲しい。

これがボストン響ならばと思う瞬間がないわけではないけれども、ミュンシュの奔放な指揮に懸命に付けているのがよくわかる。

1966年ADFディスク大賞受賞。

 

日本初出盤には平島正郎氏の豊富な譜例を駆使した詳細な曲解説が有り、曲の構造とルーセルの考え抜かれた構成がよくわかるものとなっている。

ジャケットは海外初出盤。

 

Youtubeはミュンシュの1966年来日公演から、フランス国立放送管を振った「ダフニスとクロエ」

 

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2020年12月28日 (月)

デルヴォー、コマンドのドビュッシー

12月も最終の月曜日。今朝方早くに小雨が降ったようだ。


程良いお湿りで畑の冬野菜たちも元気。
昼前から良い天気となった。
年末年始休みに突入して、お昼前に家内と帰省中の娘と「ららぽーと沼津」へ。

その前に大衆中華料理屋で早い昼食。

「ららぽーと」は意外と空いていた。

 

家内と娘の買い物に付き合って、自分のモノは何も買わずに3時間あまり。
疲れた。

途中抜け出して駐車場の屋上から見える富士山は雪を被っていた。


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このブログのアクセス数はさほど気にはしていないけれども。

ここ数日のアクセス数が異様なほど増えている。

 

何だろうとアクセス解析のページを開くとある特定のページに集中。

1969年のNHK大河ドラマ「天と地と」のテーマ音楽と取り上げたページだった。

 

理由がわからずもやもやとしていると、テレビのスポーツニュースで羽生結弦選手の全日本フィギュアの模様が放送されていた。

そこで流れていたのが冨田勲作曲の名作NHK大河ドラマ「天と地と」の音楽。

 

「あ!これだ!」

 

試しにいくつかの検索エンジンで「天と地と」と富田勲で検索してみると拙ブログが上位で出ている。

 

羽生結弦選手が取り上げたのは1969年放送時の音源ではなくて後に「富田勲の音楽」として譜面を起こして際録音したもの。


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フランスの指揮者、ピエール・デルヴォーのドビュッシーを聴く。

米Commanndへの録音で国内盤LPの初出盤・

名プロデューサー、イノック・ライトの手になるもので、35ミリマグネティック録音として有名になった一連のシリーズもの。

手持ちは初出盤のほか日本コロンビアから80年代に出た再発LP。


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・交響詩「海」
・夜想曲より「祭り」
・イベリア

 ピエール・デルヴォー(指揮)
 コロンヌ管弦楽団

 

明るく華やかで元気の良いドビュッシー。

今では失われた20世紀前半のフランスのオケ独特の暖色系のローカル色豊かな響きが楽しめる。

下町の喧騒が目に浮かぶような大衆的な賑やかさも良い。

 

録音はマルチマイクによるもの。

細かな楽器の動きが鮮明に浮き彫りになっていてドビュッシーのような曲には相性が良い。

EQカーヴはNAB・

後に出た日本コロンビア盤にはさほど音の良さは感じられない。

 

Youtubeはデルヴォー指揮のデュカス「ペリ」

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2020年12月27日 (日)

フィラデルフィア管ブラスセクションのクリスマスキャロル、そしてヒラリー・ハーンのメイヤーのヴァイオリン協奏曲のことなど

師走、年内最終の日曜日。

今日も晴れて空気が乾燥。
昨日今年結婚した娘が里帰り。

娘の結婚式はコロナ感染が始まった頃。
新婚旅行は取りやめになったけれど、式はギリギリのタイミングでの通常の形で開催できた。

夜は一緒に来た婿殿と久しぶりに鯨飲

 

クリスマスは去ったけれども、クリスマスキャロル25曲を集めたアルバムから。

フィラデルフィア管弦楽団のブラスセクションによるクリスマスキャロル。

米CBSから出ていたLPをColumbiaカーヴで聴く。


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参加メンバーはトランペットのギルバート・ジョンソン、ホルンのメイソン・ジョーンズなどオーマンディ時代の名だたる名手たち7人。

Gilbert Johnson , Seymour Rosenfeld,(Trumpets)
Mason Jones,(Horn)
Henry Charles Smith, (Trombone)
Dee Stewart, (Euphonium)
Abe Torchinsky , Peter Krill,(Tubas)

 

演奏はゴージャスで煌びやか、ただ派手だけではなく確かな腕前の名人たちが1曲1曲
変化を付けながら丁寧な音楽を積み上げていて聴き飽きることはない。


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プロデューサーはAndrew Kazdin。

1967年2月,フィラデルフィア・タウン・ホールでの録音。
CDでも聴くことができる。

もう一枚は20世紀に作曲されたアメリカのヴァイオリン協奏曲2曲をヒラリー・ハーンのヴァイオリンで聴く。


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・ヴァイオリン協奏曲Op.14 :サミュエル・バーバー
・ヴァイオリン協奏曲    :エドガー・メイヤー
 
 ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
 ヒュー・ウルフ(指揮)
 セント・ポール室内管弦楽団
 
 録音1999年9月27、29日
 オードウェイ・センター・パフォーミング・アーツ、セント・ポール
 

CBSから出ているCDで、サミュエル・バーバーとヒラリー・ハーンのために1999年に作曲されたエドガ・メイヤー(1960-)のヴァイオリン協奏曲を収録。

メイヤーはジャズベーシストにして作曲家。

ベーシストとしてバッハの無伴奏チェロ組曲のコントラバスバージョンの録音があるくらいだからそれ相応の名手なのだろう。

ポップスからクラシカルな作品まで数曲の作品も作曲しているようだ。

 

2楽章構成、親しみやすいリリカルなメロディにちょっぴりポップなテイスト。
コープランドの音楽にも通じるまさにアメリカの音楽がここで鳴っている。

編成は小さく金管楽器はほるんのみ。シロフォンの華やかな動きが印象的。

幾分モダーンでロマンティックなバーバーのコンチェルトとの相性も良い。

 

Youtubeはヒラリー・ハーンの弾くヴォーン・ウイリアムス、「ひばりは揚がる」

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2020年12月24日 (木)

A Nonesuch Christmasにウィルコックスのクリスマスキャロル集

クリスマスイヴの朝、富士山には笠雲。


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しばらく晴天続きだったので雨が降ってくれるかな、と期待したところ雨雲は伊豆半島を掠めて東の海上に去り、ポツリポツリのお湿りが夕方にあった程度。

出勤してしばらくしたら背中と肩に痛みが走った。

火曜日の内科クリニックの血液検査では異常がなかった。
筋肉痛かな、内臓に疾患があると嫌だな。

年明けに人間ドックでも行こうか。

早退しようかとも思ったけれども、コロナ禍で生じた新プロジェクトがいよいよ佳境に入りそうもできない。

今までの総括をペーパーにまとめ、かつての部下で今は上司に手渡して一区切りを付けて定時退社。

 

今年休眠状態となってしまった沼響の集まりが夜にあったのだがそちらは欠席とした。

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帰宅すると家内がケンタッキーフライドチキンを用意してあった。

そうか今日はクリスマスイヴ。

町の雰囲気も職場の様子も今年はクリスマス気分にはほど遠い。

 

だがやはり今日はクリスマスの音楽を聴こう。

取り出したのは米NUBSUCHが出していた「A Nonesuch Christmas」


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70年代半ばに出ていたデュファイやプレトリウス、シュッツ、ガブリエリからバッハまで。

ノンサッチが保有していた様々な音楽家たちの音源からクリスマスにちなんだ曲を集めたLP2枚組。

舞曲風の楽しい曲から敬虔な宗教音楽までを拾い聴き。

 

そしてもう一枚。

イギリスの合唱指揮者ウィルコックスがケンブリッジキングスカレッジ聖歌隊を振った一枚。

東芝EMIのLP


メンデルスゾーンの「天には栄え」ほかの賛美歌を収録。
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残響豊かな録音に名手揃いのフィリップ・ジョーンズブラスアンサンブルとオルガン伴奏による感動的なアルバム。

 

Youtubeはウイルコックス編のメンデルスゾーン作曲「天には栄え」

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2020年12月23日 (水)

スレンチェンスカの芸術

本日快晴。出勤しようとすると放射冷却のために車のフロントガラスが凍結。
お湯で溶かしても走行中に再びバリバリと凍り始めた。
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駐車場からオフィスへ向かう途中の富士。

相変わらず冠雪は見えず富士山頂でも水不足。

仕事上では実質最後の一週間に突入。

 

コロナ感染者の増加は止まることを知らず、その一方街の人出は減ることを知らず。
自分だけは大丈夫だろうという「正常性バイアス」の危険なムードが漂う。

隣町の富士市では公立病院でクラスター発生中。

 

昨日は休み、午前中に行きつけの内科クリニックで定期健診。
血圧、尿酸値は正常なれど血糖値がやや高め。

午後は母を整形外科へ。

合間に最寄りのブックオフに行き年末年始に読む本を物色。
本だけにするつもりがCDコーナーにまで足を延ばしたのが運の尽き。

500円以下コーナーで面白いものを見つけてしまった。

 

4歳でデビューした天才少女と知られラフマニノフやバックハウス、コルトーなど錚々たる大ピアニストたちに師事したルース・スレンチェンスカ。

発見したのは各巻CD2枚組の「スレンチェンスカの芸術」から1.3.4巻。


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スレンチェンスカは今でも90歳を超えてご存命で、今年の4月はサントリーホールでのリサイタルが予定されていた。

この1連のCDが出たことは知っていたけれど1巻当たり定価4,400円はちょいと購入に逡巡する金額。

それが1巻当たり510円で並んでいた。

 

ここでプッツンしてしまいついでにグリエールのバレエ音楽「赤いけし」。
アニハーノフ指揮St.ペテルブルク交響楽団による完全全曲盤CD2枚組。290円。


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ホセ・クーラの歌と指揮で「ヴェリズモオペラ」アリア集、そしてグランジャニの「子供の時間」やタイユフェールの作品など、フランスのハープのために書かれた小品が収録されている竹松舞のリサイタル盤それぞれ110円。


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Youtubeはスレンチェンスカの弾くショパンのエチュード

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2020年12月21日 (月)

静岡交響楽団第100回定期演奏会

穏やかな良い天気の日が続く。
今日は冬至。


庭の白梅が早くも咲き始めた。


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日本海側での豪雪の一方で南房総では想定外の雨不足で断水とのこと。
ダム工事のため貯水量を50%に下げていたのがまずかったらしい。

 

土曜日は静岡唯一のプロの常設オケ静岡交響楽団第100回定期演奏会だった。

場所は静岡市清水区の市民文化会館マリナート。

 

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今年はコロナ禍のために予定していたコンサートは全滅状態。
1月のN響以来久しぶりのオーケストラコンサートだ。

 

名匠高関健の指揮に2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子による
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とベルリオーズの幻想交響曲の2曲。

2曲とも沼響で演奏したこともある馴染みの曲だ。


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・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調          

          :ベートーヴェン
 

・・・アンコール
・シューベルトの「魔王」の主題による大奇想曲 

          :エルンスト

 

・幻想交響曲              

          :ベルリオーズ

  神尾真由子(ヴァイオリン) 
  高関健(指揮)
  静岡交響楽団

 

同じプログラムで三島と東京オペラシティでも公演。

隣町の三島の方が行きやすいけれども、あいにく20日は仕事が入ったので初日の清水に行くことにした。

 

早めの昼食をすませ12時37分沼津発島田行きの東海道線に乗り清水駅下車。
ホール入り口では検温と手指消毒。


座席は特に間隔を空けるのではなく通常の配置だったけれど、たまたま自分の席の両側が空いていた。

 

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楽団員が舞台に登場しチューニングが始まる。

「あぁ・・これだよなぁ」

通常ならばごく普通の風景が非常に貴重な瞬間に思えて来る。

 

1988年創設の静岡交響楽団の前身「カペレ静岡」の演奏は創設直後に聞いている。

 

ベートーヴェンの交響曲第7番をメインとしたプログラムだったと記憶しているけれど、指揮者と他の曲目はどうしても思い出せない。

若い楽団員が多く、粗いアンサンブルに良くも悪くも出来立てほやほやの未だ未成熟な印象しか残っていない。

30年以上の熟成期間を経て、そして高関健氏をミュージカルアドバイザーに迎えてから、今の静響は長足の進歩を遂げて充実していると思う。

 

実力派演奏家の多彩な客演と意欲的なプログラムで演奏会に行く魅力が格段に増えたので、

ここ数年自分は毎年静響のコンサートには足を運んでいる。

 

高関健の指揮による昨年のヴァイオリンの木島真優を迎えたオールショスタコーヴィチプログラム、一昨年のシベリウスの交響曲第2番など。
そして長老外山雄三指揮のシューベルト。

いずれも記憶に深く残る演奏だった。

 

そしてこの第100回演奏会。

 

ソリストが登場しティンパニの連打からベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が始まった。
序奏の途中から神尾さんが指鳴らしにオケのヴァイオリンパートを静かに弾いている。

 

ソロの部分が始まり、芯の明確なキリリと引き締まった美しい音が会場いっぱいに響き渡る。
チャイコフスキー国際コンクールの優勝を経て、着実にキャリアを積み重ね名曲に真摯に向き合った風格のベートーヴェン。

 

落ち着いた神尾さんの姿が、ソロが進むにつれて次第に大きく見えてきた。

 

伴奏も見事で第一楽章のカデンツァからのオケの受け渡しが絶妙。
第二楽章では熱い感動が会場を包み込みこんでいく。

久しぶりの生のオーケストラと充実した演奏に聴いていて涙が出そうになってきた。

 

神尾さんのアンコールはエルンストの「魔王の主題による大奇想曲」。

これはシューベルトの歌曲「魔王」をピアノ伴奏を含め、無伴奏ヴァイオリンのために書かれた超難曲。

 

かつて知人のプロのヴァイオリニストに、今まで弾いた曲で技術的に一番難しかったヴァイオリン曲は何ですか?と聴いた時に即座にこの曲の名が返ってきた。

驚きの超絶技巧に会場は圧倒されていた。

 

休憩中に沼響の若手ヴィオラ団員に遭遇。
さきほどの神尾さんの演奏に彼は興奮気味。

 

そしてベルリオーズ。

この曲は沼響第20回定演で取り上げた思い出深い曲。

見ると第20回定演の時、前プロのサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番でソロを弾いてくださった大森潤子さんが今日はゲストコンマスの位置に座っている。ちなみにソロゲストコンマスは読響の首席コンマスだった藤原浜雄さん。

 

幻想交響曲は、沼響の演奏時に90種ほどの聴き比べをHPに書いて以後ほとんど聴くことがなかった曲。

実演では秋山和慶指揮ヴァンクーバー交響楽団の演奏くらいしか聞いたことがない。

 

演奏はまさに高関建らしい相当な研究の成果が伺える緻密で確信に満ちた棒。

音がきちんと交通整理されていて各楽器が明瞭に的確なバランスで響いている。

 

第一楽章、第四楽章リピート有り、第四楽章の3番トロンボーンとチューバの入れ替え無し、ホルンはゲシュトップ入りの今はごく普通になった新版使用。

コルネットはパートとしては入るけれども第二楽章のオヴリガードソロはなし。
第二楽章で活躍するハープを弦楽器群の前面に両翼配置。

 

高関さんの演奏は聴き慣れた曲でもいつも新しい発見がある。
沼響が演奏したとき一番演奏が難しかった第一楽章が秀逸。

第二楽章の2台のハープの掛け合いも効果を上げていた。

 

アンサンブルの精度が上がっているので第四、第五楽章の大きなフォルティシモでオケが鳴りきった中でも音は濁らない。

じわりじわりと演奏のヴォルテージが上がり、第四、第五楽章にはホール内は興奮の坩堝。

 

静岡交響楽団の熱い演奏に終演後に暖かで盛大な拍手が続いた。

清水まで来て良かった。

久しぶりにオーケストラの醍醐味を堪能しました。
ありがとうございました。

 

Youtubeは神尾真由子の弾くバッハ、無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番

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2020年12月18日 (金)

フェヴリエのドビュッシー、再聴

本日快晴。頬に触れる風に本格的な冬の気配。


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富士山は東側の斜面のみうっすらと雪化粧。

 

ジャック・フェヴリエのドビュッシーを聴く。

仏ヴェガへのドビュッシーピアノ曲全集録音。
CDではACCORDから出ている。


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手持ちはCDとキングレコードから70年代に出ていたLP。

LPでは4枚分が出ていた。

CDの全集はかつてこのブログでコメント済

 

今回はLPからEQカーヴを探りながらの拾い聴き。


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・前奏曲集第1巻
・前奏曲集第2巻
・子供の領分
・映像第1集、第2集
・版画
・ベルガマスク組曲
・ピアノのために
・2つのアラベスク

 

 ジャック・フェヴリエ(ピアノ)

 録音:1969-1972年

 

以前、このLPを聴いたときには音の歪みが気になった。


ところがEQカーヴをコロンビアカーヴに切り替えたらガラリと印象が変わった。

 

最初に「版画」から。

 

速いテンポに指が乗りきれていなくて幾分粗さも気になるけれども、軽く飄々とした音楽の流れの中に聴かれるクールな味わい。

「水の反映」ではクリスタルガラスのような透明な音でありながらも多彩な音のパレットが奥行きのある響きの中に散りばめられている。

 

微妙なテンポの揺れには洒落た気配も漂い「ミンストレル」での絶妙なルバートなどはさすがに大家の至芸。

 

音楽は枯れてない。

 

Youtubeはフェヴリエの弾くドビュッシー、「版画」

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2020年12月17日 (木)

ロシア正教会聖歌集

12月も折り返し地点、今年もあと2週間余り。

今日も冷えてこの冬初めてのコート着用。

 

今年はまさに国難の年。
大規模な戦争に匹敵するような世界的な大厄の年になってしまった。

本日東京は感染者800人超え。
夜に東京に住む娘とLINEで通話。

 

ロシア正教会聖歌集を聴く。

 

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メロディア録音のビクター国内盤LP2枚組。

ユルロフ指揮のアカデミー・ロシア合唱団による演奏。

 

ロシア革命以後、旧ソビエト政権下ではロシア正教会は弾圧を受けていた。

この演奏の録音はその旧ソビエト政権下の時のもの。

この録音以前にはロシア正教会聖歌をこれほど体系的に伝える録音はなかったと思う。

 

16~18世紀のロシア正教会聖歌を収録。

 

最初に初期の単旋律の曲の6曲を。
これら初期の大部分は作曲者不詳、最近発見された古い時代の筆写譜面を復元したもの。

やがて17世紀以降の複旋律の時代に移って、最後にこの分野では著名なポルトニャンスキーなどの「合唱コンチェルト」と呼ばれる特異なスタイルの曲までを収録。

 

ロシア正教会聖歌は10世紀ころ、ロシア正教会の典礼においてギリシャ正教のギリシャ語によるビザンツ式の単旋律聖歌が輸入されたことから始まるとされる。
これがスラヴ化されロシア正教会聖歌の源流となる。

 

古い時代に東西ヨーロッパで単旋律として歌われていた聖歌は、西ヨーロッパでは複旋律へと推移しやがて器楽曲を含むルネッサンス、バロック音楽の時代に向かっていく。

 

ところがロシアでは16世紀になってから複旋律の機運が高まり、18世紀に入ってポルトニャンスキー、ベレゾフスキーら偉大な作曲家が登場していく。

 

西側がバロックから古典派へとオーケストラも導入しつつ進化していく中で、ロシアでは聖歌を除くすべての音楽が禁止され、器楽曲の発展は極端に遅れていった。


その聖歌もギリシャ正教の伝統を守りアカペラの世界に徹していた。

 

源流を一つにしながらも東西ヨーロッパで枝分かれし、独自の進化を遂げてガラパゴス化したロシア独特の音楽世界をこのLPで体験できる。

 

アカデミー・ロシア合唱団の演奏は重厚な響きと正確無比なアカペラで聴き手に迫る説得力のあるもの。

 

Youtubeはロシアのモーツァルトとまで言われたポルトニャンスキーの「ケルビムの歌第7番」。名作です。

 

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2020年12月15日 (火)

アブラヴァネルのマーラー

今日は今年一番の冷え込み。

冬らしくなってきたけれども富士山未だ冠雪無し。

こちらはちょうど5年前の今日の富士。


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今日は休みで床屋に行ったり畑の蜜柑を収穫したり。


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未収穫のサツマイモが多少あったので掘り返してみたら小さい芋ばかりだった。

 

今年度の新規国債発行額が100兆円を超えてしまった。

今までの最高額だったリーマンショック時の50兆円に比べあまりにも異常な数値。
コロナ対策とはいえ大丈夫か・・日本。

 

今日はアブラヴァネルのマーラーをまとめて聴いた。


バーンスタインとほぼ同時期の録音で、一つのオケで統一されたマーラーの交響曲全集録音としては世界初のもの。

手持ちはLP、CDの混在で1,2,5,7-10番。

 

そのうち5,8,9,10番の4曲をまとめて聴いた。
今回はすべてLP。

 

EQカーヴは8番のみがffrrで他の録音はすべてNAB。

8番の手持ちには米ヴァンガードのCDもあるけれども、音はLPが圧倒的に良い。


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ユタ響は下手というネット上の意見が多いけれども、これは非凡なマーラー演奏。


自分にはこのオケの水準ならばさほど気にならない。

 

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5番には不思議な静けさの中に葬送の気配が漂う

熱狂よりも静謐なマーラー。
この時代にこのようなアプローチがあったのには驚きだ。

 

指揮者のマーラーへの共感が楽団員にも伝わって暖かでヒューマンな演奏を展開していく。

9番のフィナーレなども実に感動的だ。


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実演で聴いたバーンスタインの強烈なエネルギーの放射とはまた異なる世界をここで聴くことができる。

 

ダヴラツを起用した4番も聴いてみたくなった。

 

Youtubeはアブラヴァネルのマーラー、交響曲第9番

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2020年12月13日 (日)

今年の音盤買い納め?・・・フィンジの音楽

今年は冬の訪れが遅いようだ。
12月も半ばというのに富士山には冠雪はなし。


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今日は町外れのホームセンターに寄るついでに家内のショッピングのつきあいで「ららぽーと沼津」。

 

昨日全国の感染者が三千人を越えたというのにここはコロナ禍とは無縁のような世界。

日曜日ということでかなりの人。

フードコートもびっしり満席。

マスク姿でなければ昨年とほとんど変わらない。

さすがにご老人の姿は見えないが。

比較的空いているスペースで家内と軽い昼食して早めに外に出た。

 

ホームセンターでは正月飾り一式と庭に敷く人工芝を購入。

必要な長さに僅かに足りず、購入するかどうか迷ったけれど結局買うことにした。
端数の長さ分はサービスしてくれた。

 

このところのマイブームはこのブログでも何度か取り上げているイギリスの作曲家ジェラルド・フィンジ(1901-1956)。

フィンジの作品をまとめて聴きたくてHMVのサイトから何点か購入。

80年代まではフィンジの音源はフィンジの息子が振った「ディエス・ナタリス」ほか、数えるほどだったのが今は沢山出ている。


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まずはNAXOSのフィンジ録音を集めた「フィンジ・アンソロジー」CD8枚組。

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このうちの名作「エクローグ」を収録した1枚は既に購入済だけれども、残りの7枚を単体で購入するよりも8枚セットの方が安かった。

器楽曲の他に合唱曲や歌曲を多数収録。

 

そしてケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団による合唱作品集hyperion盤。


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もう一枚
「入祭唱~フィンジの音楽」


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コロン指揮オーロラ管弦楽団にサクソフォンに女流奏者エイミー・ディクソンが加わったDECCAの異色の演奏

これはどのような音楽が聴けるのか全く見当もつかない。

 

ついでにフィンジとは関係なくEloquence Australiaから出ている「ジェームズ1世の宮廷音楽」


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バロック音楽ブーム黎明期のイギリスの音楽家、サーストン・ダート率いるモーリス・アンドレそのほかの名手たちによる金管楽器のための音楽を集めたもの。

オワゾリール原盤。

 

これで今年の買い納め・・・かな?

Youtubeはフィンジの「エクローグ」

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2020年12月 9日 (水)

サヴァリッシュの「新世界より」旧録音

曇りのち晴れ。朝は今にも雨が降り出しそうな雲行き。

出勤時に見た沼津市民文化センター前庭の鮮やかな紅葉。

 

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12月も半ばになろうとする時期だけれど今年は気温が高いのだろう。
付近の山にも未だに鮮やかな紅葉。

 

昨日休み。

このところ鼻が詰まり気味で睡眠不如意。

ネットを検索しているうちに副鼻腔炎の症状のような気がしてきた。
幼い頃に鼻炎を患ったことも気になる。

休日を幸い数日前に転倒した母を整形外科連れて行くついでに近くの耳鼻科へ行くことにした。

 

このクリニックにはもう何年も行ってないので診察券を探すのに一苦労。

受付に診察券を渡す。
聞くと前回診察したのは5年前とのこと。

しばらく来ないうちに予約制になっていた。

特に発熱のある人については診療時間を明確に区別しているようだ。

幸い空いていたので早くに診ていただいた。

 

副鼻腔炎かどうか確かめるために頭部をレントゲン撮影。

画像を見せていただいたけれど頭蓋骨がかなりリアル。

まるで他人のように見える自分のしゃれこうべをまじまじと見つめる。

 

幸い膿の蓄積は見られず単なる鼻炎との診断。

薬を受け取り、母を迎えに整形外科へ。

結局母は肋骨にヒビが入っていたとのことでしばらく安静が必要。

 

サヴァリッシュの若き日の録音を聴く、

 

東芝EMIから70年代に出ていた廉価盤LP2枚組。

このシリーズは短期間で姿を消してしまったけれども、ハンニカイネンのシベリウスやシューリヒトのブルックナーの3番と9番など、なかなか渋い内容のものが出ていた。

このサヴァリッシュ録音はこれ以後出ていないと思う。


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・交響曲第9番 ホ短調 「新世界より」 :ドヴォルザーク
・組曲「くるみ割り人形」       :チャイコフスキー
・組曲「白鳥の湖」           

 ウォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
 フィルハーモニア管弦楽団

 録音:1958年
        
サヴァリッシュの初レコーディングは、1940年代末のRIAS響とのブランデンブルク協奏曲とコンラート・ハンセンをソリストに迎えたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番などのREMINTON盤。

その後サヴァリッシュは、1954年のフルトヴェングラーの追悼演奏会にベルリンフィルを指揮するなど、着実にヨーロッパでのキャリアを固めていった。

 

やがてEMIのプロデューサー、ワルター・レッグの目に止まり、レッグが創設したフィルハーモニア管を指揮してのいくつかの録音が始まった。

それはカラヤンがベルリンフィルの音楽監督に就任し、ベルリンフィルとのレコーディングが始まった時期と一致している。

 

おそらくレッグは、近い将来フィルハーモニア管を去ることになりそうなカラヤンのドイツ系指揮者の後釜として、サヴァリッシュに目を付けたのだろう。

この3曲はサヴァリッシュがフィルハーモニア管とレコーディングを行った最初期の録音になる。

他にはR.シュトラウスの「町人貴族」、ドヴォルザークの交響曲第8番と「スケルツオ・カプリチオーソ」などが録音されている。

 

サヴァリッシュの自伝「音楽と人生」にはレッグの下で、カラヤンが録音していなかった曲から始めた、と書いてあるけれども「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」はカラヤンがフィルハーモニア管を振った録音が存在する。

おそらくレッグはステレオでのいわゆる売れ筋名曲のラインナップをいち早く揃えたくて、自分の手を離れつつあったカラヤンではなく、若手の有望株のサヴァリッシュを起用したのではなかろうか。

ちなみに「新世界より」もカラヤン指揮ベルリンフィルのEMIへの1958年のステレオ盤が存在する。

 

演奏は一見冷静なサヴァリッシュには珍しく熱く燃えた演奏だった。

 

速めのテンポで颯爽と駆け抜けて未来への明るい希望を感じさせるような瑞々しさが聴いていて心地よい。

オケの水準も申し分ない。

 

サヴァリッシュは後年フィラデルフィア管と「新世界より」を再録音している。

その演奏は、音楽が極端に肥大していて聴いていて辛いものがあった。


この旧録音の方が圧倒的に良い。

 

チャイコフスキーも水準以上の出来だけれど「白鳥の湖」は選曲に問題あり。
終曲を最後まで入れず序奏の部分だけで終わってしまっている。

 

EQカーヴはColumbia。

 

Youtubeはサヴァリッシュ指揮のR.シュトラウス、歌劇「アラベラ」。サントリーのCMから

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2020年12月 6日 (日)

ホーレンシュタインのヒンデミット

晴れた穏やかな日曜日。


狩野川河畔には鴨の群れ。


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金曜から帰省していた県内に住む上の娘は今日の午後帰って行った。

 

はやぶさ2のカプセルが美しい軌跡を見せて無事帰還。

暗いニュースの中で久しぶりの明るい話題。

はやぶさ2の本体は次の目的地へ向けて飛び去った。

 

孤高の指揮者、ヤッシャ・ホーレンシュタインのヒンデミットとR.シュトラウスを聴く。

聴いたのはUNICORN原盤の輸入盤CD。

これはかつてTRIOから出ていたLPで長い間親しんでいた演奏。


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・交響曲「画家マチス」    :ヒンデミット

・交響詩「死と変容」     :R・シュトラウス

  ヤッシャ.ホーレンシュタイン(指揮)
  ロンドン交響楽団

  録音:1972年5月19日  

      Walthamstow Town Hall, London 

 

ホーレンシュタインはCD初期に、マーラーやブルックナーを中心に一時期ブームのようになって様々な海賊盤ライヴがたくさん出た。


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生涯一定のポストに就かず指揮棒1本で客演の道を渡り歩いたホーレンシュタイン。

残された正規のセッション録音はVOX、リーダーズダイジェスト、EMI、UNICORNなど、とりとめのないことになっている。

 

比較的まとまっていたのが1950年代から60年代初期のVOXへの録音。

それらはオケの水準が低かったり、録音状態もあまり良くなかった。

僅かな国内盤も17センチシングル盤やDotなどの国内マイナーレーベルからの散発的なものだったりしたので、ホーレンシュタインは長い間2流扱いだったと思う。

 

そのような中で、UNICORNへのマーラーなどの晩年の録音がTRIOから数枚の国内盤LPが出た時は、その気宇雄大な巨匠の芸風に驚いた人もいた。

 

ただこの時はちょうど4チャンネルブームの真っ只中。


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マーラーの「巨人」や交響曲第3番」などの名演はCD-4の4チャンネル盤で出て後、4チャンネルのブールが去ってしまうと同時に姿を消してしまった。

そのうちレーベルそのものが消滅し、これらのUNICORNへの一連の録音はホーレンシュタインの生涯さながらいろいろなレーベルを放浪することになった。

このヒンデミットもその時の1枚。

 

演奏は天井の高い大聖堂の中に立って遥か上方の宗教的なステンドグラスガラス を仰ぎ見るような崇高なもの。

どの楽器も溶け合って同じ音色で響き合い宇宙的な広がりを持って流れていく。

このような音を出せたのはホーレンシュタインのほかはフルトヴェングラーやチェリビダッケなど、限られた人しかいない。

 

ちなみに音はCDよりもLPの方が数段良い。

 

Youtubeはブロムシュテット指揮ベルリンフィルの「画家マチス」

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2020年12月 4日 (金)

フェルバーのウイリアム・ボイス

晴れ時々くもり。
さほど寒くはなく、コロナがなければ精神的に過ごしやすい12月。


このところ帰宅すると娘の住む東京と地元静岡のコロナ感染者を確認するのが毎日の習慣になっている。

年数回ほど利用する焼き肉屋に久しぶりに行ってみたら、店はなく売り店舗の張り紙が。
小さいながら質の良い肉を長い間良心的な価格で提供していた個人経営のお店だった。

老舗の食品問屋さんもこの12月で閉店。
聞くと市内の飲食店中心に食材を卸していて、このコロナ禍で受注がすっかり減ってしまったとのこと。

 

今日はウイルアム・ボイスの交響曲集を聴く。

 

イエルク・フェルバー指揮ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団
によるターナバウトのLP。


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・交響曲第1番変ロ長調『新年のオード』
・交響曲第2番イ長調『誕生日のためのオード』
・交響曲第3番ハ長調『花冠』
・交響曲第4番ヘ長調『羊飼いの運』
・交響曲第5番ニ長調『聖セシリアの日のためのオード』
・交響曲第6番ヘ長調『ソロモン』
・交響曲第7番変ロ長調『ピューティアのためのオード』
・交響曲第8番ニ短調『ウースター序曲』

 

ボイスの残された8曲の交響曲すべてを収録。

ドイツの指揮者イエルク・フェルバーはVOX系のレーベルに自ら組織したハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団を振って数多くの録音を残している。

どちらかというと地味な存在だけれどアルゲリッチやフランク・ペーター・ツィンマーマンゴールウェイといったトップスターの伴奏録音も残されているようだ。

伴奏以外ではとりわけ傑出した演奏はないけれど、どれも水準以上だったような気がする。

 

ウイリアム・ボイス(1711-1779)はバロック後期のイギリスの作曲家。
同時代人にはフランツ・ベンダやバッハの息子のウイルヘルム・フリーデマン・バッハなど。

ボイスの交響曲は全8曲。

いずれも3楽章で弦楽器主体なのがベンダの交響曲と共通しているけれど、一部使われている管楽器の使用が実に巧みでベンダの曲と同時代の作品には聞こえないほど。。

 

第1番の爽やかで軽い響きが英国風紳士の品格も感じられる素晴らしい曲。

トランペットと ティンパニが大活躍の5番 、オーボエ二重奏が美しい6番も印象深い。

多彩で変化に富んだ交響曲の数々フランツ・ベンダの保守的な曲よりもよほど霊感に満ちている。

聴いていて未知の素晴らしい作品に出会った喜びを感じることができた。

 

・・と思っていると。

 

なんとなく聴いたようなメロディーが出てきた。

レコード棚の年代別交響曲コーナーを見てみるとあったあった!。

8曲全曲を集めたメニューインとヤニグロの2枚。

しかもこのブログでコメントまでしている。

あらためて手持ちの所有音源データーベースを繰ってみると他にボイスの交響曲が何枚か・・・。

 

最近記憶が怪しくなってきた。

そこで最も華やかな第5番をメニューインとヤニグロの演奏で聴き比べてみた。

メニューイン盤はメニューイン祝祭管という正体不明の団体。


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ヘンデルの「水上の音楽」の校訂しているネヴィル・ボイリング版と書いてある。
こちらは英EMIへのLPでEQカーヴはColumbia。

 

そしてもう一枚はアントニオ・ヤニグロ指揮のザグレブ合奏団によるヴァンガード盤
カーヴはNAB.


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ヤニグロの先鋭な解釈がなんとなく曲想と合っていないし、メニューイン盤はずいぶんとユルイ演奏だ。

 

あらためてフェルバーの演奏を聴いてみると全く別の曲のように響く。

こちらのカーヴはNAB。

使用楽譜も異なり、EQカーヴもぴたりと嵌ったフェルバーのウイリアム・ボイス。

聴き比べてみてあらためてフェルバーの演奏が傑出。

 

youtubeはボイスの交響曲第1番

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2020年12月 2日 (水)

フレモーのシェエラザード

12月、くもりのち雨。

この一年でまわりの世界が変わってしまった。

昨晩のNHKの番組「サラメシ」では数年前に撮影されたある企業の社員食堂のランチの様子が紹介されていた。

大勢が集まりワイワイにぎやかなランチの風景。

 

当たり前だった日常がいかに幸せなことであったのかを思う。

 

フランスの指揮者、ルイ・フレモーの「シェエラザード」を聴く。

英Colinsから出ていたCD.

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・交響組曲「シェエラザード」 :リムスキー・コルサコフ

 ルイ・フレモー(指揮)
 ロンドンフィルハーモニー管弦楽団
 録音 1989年5月

 

英Colinsは90年代末に10年ほどで活動を停止してしまったレーベル。

一般的な名曲を地味ながらも実力派の演奏者たちを起用して優れたCDを世に送り出していた。

一時期新星堂からも出ていた。

比較的廉い価格もあって自宅のCD棚には何枚かが並んでいる。

 

Collinsの活動停止後は全て入手難になってしまったが、その後東武トレーディングが日本国内のみの仕様で何枚かを復刻している。

この演奏もその中のひとつ。それだけ評判が良かった演奏だったからだろう。

 

 

手持ちは純正コリンズのものだが国内盤は音の傾向が変わっているようだ。

フレモーの演奏にはどのオケの録音でも清潔感のある淡く透明な独特の響きがする。

 

録音歴の長いフレモーだが、若い頃の演奏を聴いてもこの個性は変わらない。

 

古いエラートの録音で名盤として知られるフォーレの「レクイエム」などはその典型だ。

この「シェエラザード」も過度に効果を狙わずじっくり堅実にオケを歌わせているもの。

音楽の流れも自然。

まさにフランスの指揮者による品のある落ち着いた雰囲気の演奏だ。

それでいて時として男性的な剛直な面も聴かせる。

オケはソロを含めて非常にうまい。

特にコンマスのソロが秀逸。

何度聞いても聞き飽きないベテランの味、おとなの「シェエラザード」。

 

Youtubeはシドニー交響楽団を振るフレモ-、曲はベートーヴェンの交響曲第7番

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