静岡交響楽団第100回定期演奏会
穏やかな良い天気の日が続く。
今日は冬至。
庭の白梅が早くも咲き始めた。
日本海側での豪雪の一方で南房総では想定外の雨不足で断水とのこと。
ダム工事のため貯水量を50%に下げていたのがまずかったらしい。
土曜日は静岡唯一のプロの常設オケ静岡交響楽団第100回定期演奏会だった。
場所は静岡市清水区の市民文化会館マリナート。
今年はコロナ禍のために予定していたコンサートは全滅状態。
1月のN響以来久しぶりのオーケストラコンサートだ。
名匠高関健の指揮に2007年チャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子による
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とベルリオーズの幻想交響曲の2曲。
2曲とも沼響で演奏したこともある馴染みの曲だ。
・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
:ベートーヴェン
・・・アンコール
・シューベルトの「魔王」の主題による大奇想曲
:エルンスト
・幻想交響曲
:ベルリオーズ
神尾真由子(ヴァイオリン)
高関健(指揮)
静岡交響楽団
同じプログラムで三島と東京オペラシティでも公演。
隣町の三島の方が行きやすいけれども、あいにく20日は仕事が入ったので初日の清水に行くことにした。
早めの昼食をすませ12時37分沼津発島田行きの東海道線に乗り清水駅下車。
ホール入り口では検温と手指消毒。
座席は特に間隔を空けるのではなく通常の配置だったけれど、たまたま自分の席の両側が空いていた。
楽団員が舞台に登場しチューニングが始まる。
「あぁ・・これだよなぁ」
通常ならばごく普通の風景が非常に貴重な瞬間に思えて来る。
1988年創設の静岡交響楽団の前身「カペレ静岡」の演奏は創設直後に聞いている。
ベートーヴェンの交響曲第7番をメインとしたプログラムだったと記憶しているけれど、指揮者と他の曲目はどうしても思い出せない。
若い楽団員が多く、粗いアンサンブルに良くも悪くも出来立てほやほやの未だ未成熟な印象しか残っていない。
30年以上の熟成期間を経て、そして高関健氏をミュージカルアドバイザーに迎えてから、今の静響は長足の進歩を遂げて充実していると思う。
実力派演奏家の多彩な客演と意欲的なプログラムで演奏会に行く魅力が格段に増えたので、
ここ数年自分は毎年静響のコンサートには足を運んでいる。
高関健の指揮による昨年のヴァイオリンの木島真優を迎えたオールショスタコーヴィチプログラム、一昨年のシベリウスの交響曲第2番など。
そして長老外山雄三指揮のシューベルト。
いずれも記憶に深く残る演奏だった。
そしてこの第100回演奏会。
ソリストが登場しティンパニの連打からベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が始まった。
序奏の途中から神尾さんが指鳴らしにオケのヴァイオリンパートを静かに弾いている。
ソロの部分が始まり、芯の明確なキリリと引き締まった美しい音が会場いっぱいに響き渡る。
チャイコフスキー国際コンクールの優勝を経て、着実にキャリアを積み重ね名曲に真摯に向き合った風格のベートーヴェン。
落ち着いた神尾さんの姿が、ソロが進むにつれて次第に大きく見えてきた。
伴奏も見事で第一楽章のカデンツァからのオケの受け渡しが絶妙。
第二楽章では熱い感動が会場を包み込みこんでいく。
久しぶりの生のオーケストラと充実した演奏に聴いていて涙が出そうになってきた。
神尾さんのアンコールはエルンストの「魔王の主題による大奇想曲」。
これはシューベルトの歌曲「魔王」をピアノ伴奏を含め、無伴奏ヴァイオリンのために書かれた超難曲。
かつて知人のプロのヴァイオリニストに、今まで弾いた曲で技術的に一番難しかったヴァイオリン曲は何ですか?と聴いた時に即座にこの曲の名が返ってきた。
驚きの超絶技巧に会場は圧倒されていた。
休憩中に沼響の若手ヴィオラ団員に遭遇。
さきほどの神尾さんの演奏に彼は興奮気味。
そしてベルリオーズ。
この曲は沼響第20回定演で取り上げた思い出深い曲。
見ると第20回定演の時、前プロのサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番でソロを弾いてくださった大森潤子さんが今日はゲストコンマスの位置に座っている。ちなみにソロゲストコンマスは読響の首席コンマスだった藤原浜雄さん。
幻想交響曲は、沼響の演奏時に90種ほどの聴き比べをHPに書いて以後ほとんど聴くことがなかった曲。
実演では秋山和慶指揮ヴァンクーバー交響楽団の演奏くらいしか聞いたことがない。
演奏はまさに高関建らしい相当な研究の成果が伺える緻密で確信に満ちた棒。
音がきちんと交通整理されていて各楽器が明瞭に的確なバランスで響いている。
第一楽章、第四楽章リピート有り、第四楽章の3番トロンボーンとチューバの入れ替え無し、ホルンはゲシュトップ入りの今はごく普通になった新版使用。
コルネットはパートとしては入るけれども第二楽章のオヴリガードソロはなし。
第二楽章で活躍するハープを弦楽器群の前面に両翼配置。
高関さんの演奏は聴き慣れた曲でもいつも新しい発見がある。
沼響が演奏したとき一番演奏が難しかった第一楽章が秀逸。
第二楽章の2台のハープの掛け合いも効果を上げていた。
アンサンブルの精度が上がっているので第四、第五楽章の大きなフォルティシモでオケが鳴りきった中でも音は濁らない。
じわりじわりと演奏のヴォルテージが上がり、第四、第五楽章にはホール内は興奮の坩堝。
静岡交響楽団の熱い演奏に終演後に暖かで盛大な拍手が続いた。
清水まで来て良かった。
久しぶりにオーケストラの醍醐味を堪能しました。
ありがとうございました。
Youtubeは神尾真由子の弾くバッハ、無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番
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