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2021年4月22日 (木)

ルース・スレンチェンスカのショパン

穏やかな春、今日の最高気温は22度。


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通勤途中、子供たちが走り回っている小学校のグラウンドにニセアカシアの花が白い花を咲かせていた。

アメリカの女流ピアニスト、ルース・スレンチェンスカを聴く。

Liu Mifuneから出ているCDで来日時のいくつかのライヴを収録。

 

このCDの存在は前から気になっていたけれどもレギュラー価格4400円が気になって手を出さなかった。

昨年近くのブックオフで2枚組550円だったのを見つけて3セット購入。

スレンチェンスカの79歳からラストライヴとされる80歳の来日時のライヴを収録。

 

ルース・スレンチェンスカ(1925~)は6歳でリサイタルデヴュー、9歳の時にラフマニノフの代役で出演し絶賛される。
名ピアニスト、コルトーにも学んでいる。

ラフマニノフを始め20世紀初頭の数多くの歴史上の大ピアニストたちに直接接した人。

15歳の時にスパルタ教育の父に反発してピアノから離れるも学生時代にアルバイトでピアノを弾いていたところが目に止まり、アーサー・フィードラーらの勧めでピアニストとして再デヴュー。

この時モントゥーやセルら超一流の指揮者たちと共演、若い日の小澤征爾とも共演している。

いわゆる天才少女として出発したものの、紆余曲折があって何度か第一線を退いていたらしい。

 

彼女にはごく熱狂的なファンがいて、このCDもスレチェンスカの演奏を残す目的で興したレーベル。

購入したCD6枚を収録順に聞いた。

 

最初聴いたときは、不思議な雰囲気はあるもののテンポの揺れがあまりにも独特。

年齢的なものを差し引いても、テクニックも今の国際的なサーキットの現役バリバリのピアニストに比べると力不足の印象を受けた。

かなり崩した個性的なテンポの「子犬のワルツ」など自分にはあまりにも恣意的に聞こえてしまう。

 

ここ数日何曲かの録音を通勤の車中で漠然ときいていた。

 

第一印象では、炭酸の抜けたスパークリングワインのような物足りなさがあって、どこが良いのかさっぱりわからなかったけれども、ショパンのピアノソナタ第2番、いわゆる葬送行進曲付きを聴いてびっくり。

 

異様に遅いテンポ。

再弱音から始まる葬送行進曲のこの暗さは尋常でない。

ポツリポツリと暗闇の中で何者かがつぶやくような、聴いていて恐ろしいほど。

 

スレンチェンスカの写真を見るとごく普通の明るいおばぁちゃん。

この深い闇を感じさせる演奏を聴かされると、この人の人生には常人には想像できないようないろいろなことがあったのではないかと思ってしまう。

 

思い直してカーステレオでなく家のシステムで再び最初から聞き直した。

 

6枚セットの最後に聴いた80歳の岡山ライヴ。

 

81h1cufuagl_ac_sy355_ Disc 1
1. バレエ「シンデレラ」から10の小品作品97より「春の精」「夏の精」「秋の精」「冬の精」(プロコフィエフ)
2. スケルツォ第1番ロ短調作品20(ショパン)
3. スケルツォ第2番変ロ短調作品31(ショパン)
4. スケルツォ第3番嬰ハ短調作品39(ショパン)
5. スケルツォ第4番ホ長調作品54(ショパン)
Disc 2
1. バラード第1番ト短調作品23(ショパン)
2. バラード第2番ヘ長調作品38(ショパン)
3. バラード第3番変イ長調作品47(ショパン)
4. バラード第4番ヘ短調作品52(ショパン)
5. ワルツ第14番ホ短調 遺作(ショパン)
6. パガニーニ大練習曲より第4番「アルペジョ」(リスト)

  ルース・スレンチェンスカ(ピアノ)

  2005年1月、岡山シンフォニーホール・ライヴ

 

ショパンのスケルツォとバラードの合計8曲にプロコフィエフの「シンデレラ」からの四季にちなんだ曲というかなりハードなプログラム。
最後にアンコールを2曲

いわゆる一般的なピアニストとは次元の違うものの存在を感じることができた。

 

タッチがフワリとしていて体の余分な力が極限まで抜けた自然体の音楽。

今まで自分が実演聴いた最大のピアニスト、クラウディオ・アラウにも通じるすべてを超越したものの存在感だ。

 

この3セットの6枚のうちこの80歳のライヴが最も良い。

実演で聴いたら強烈な印象を受けたかもしれない。

 

Youtubeはスレンチェンスカのラフマニノフ、プレリュードOp.3

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