マルティノンのニールセン「不滅」そして福永武彦さんのことなど
急に冷えて冬の到来を思わせる月曜の朝。
母親の部屋には暖房を入れた。
コロナ禍でここ1年の行動範囲が極端に狭くなった。
遠出することもなくなりコンサートも皆無に近い。
オケも8月から休止状態。
海外ではさほど沈静化していないのに、ここ数週間の感染者数激減は不思議。
医療従事者の姪曰く「第6波は必ず来るよ」
本日休みで午前中は格安カットで散髪。
平日なので客は自分と同年代以上のおじさん達ばかり。
待合中に、娘とかなり仲の良い同級生の父親でかつて同じ職場にいた先輩が入ってきた。
今日はデンマークの作曲家カール・ニールセンの代表作、交響曲第4番「不滅」を聴く。
聴いたのはマルティノン指揮のシカゴ響で日本ビクターが出した国内盤初出 LP。
「不滅」の 金文字 のジャケットで有名なもの。
・交響曲第4番『不滅』
・序曲『ヘリオス』
ジャン・マルティノン(指揮)
シカゴ交響楽団
録音:1966年
ジャケットの「不滅」の金文字は臨済宗円覚寺派管長だった朝比奈宋源禅師。
この当時ニールセンはほとんど知られていなかった。
LPレコード1枚1枚に国内各社がかなり力を入れていた時期のもので、作曲者の紹介と曲目解説は外盤の解説の翻訳文に加え国内解説。。
さらにニールセン自身が曲に添えた解説文の翻訳は小説家の福永武彦さん。
福永武彦さんに深い思い出が。
我が家の親しい御近所に福永武彦さんの奥様の親戚の方がいて、福永ご夫婦が伊豆に来るたびに立ち寄っていた。
当時自分は中学生になったばかり。
ある日福永武彦さんご本人がわが家の前を通った時に庭のエリカの花が目に止まった。
そのエリカの花に大変感動されて、後日ご本人から「あのエリカの花の家の方に渡してください」とその親戚の人を通じて小説「忘却の河」の単行本をいただいた。
その時、本の扉に素敵な一文をさらりと書いてくれた。
この時福永さんが書かれた岩波少年文庫版「古事記物語」もいっしょにいただいている。
その単行本2冊は今でも大切に我が家の書架にある。
福永さんは音楽に詳しくてクラシック音楽に関するエッセイも書いている。
特にシベリウスがお気に入りで、かつて「レコード芸術」誌にシベリウスのレコードのかなり詳しい紹介記事も書いていた。
当時入手できるシベリウスの作品はほぼすべて所有していたという。
おそらく同じ北欧の作曲家ニールセンも好きな作曲家だったのだろう。
このマルティノンのニールセンは熱く燃えた壮大な演奏で、今再評価が進むシカゴ響時代のマルティノン最良の記録。
フィナーレ導入部分の嵐の弦楽器の速いパッセージの正確さは鳥肌もの。
ティンパニの乱打も強烈で、とても落ち着いて聴いていられぬほどの迫力だ。
シカゴのホールの残響少ない極めてデッドな録音が、かえってオケの高性能さを浮き彫りにしている。
前任のフリッツ・ライナー時代のオケの高い水準がそのまま保たれているのがよくわかる。
カップリングの序曲「ヘリオス」も目の前に広大な風景が浮かんでくるような雄大な出来。
冒頭のホルンの響きが神秘的。
Youtubeはラトル指揮ベルリンフィルの「不滅」、二人のティンパニ奏者の乱打強烈なフィナーレ。
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コメント
福永武彦さんも沼津に縁のある方ですね。マルティノンの不滅、猛烈に聴きたくなりました。
投稿: サンセバスチャン | 2021年10月19日 (火) 23時01分
今、福永武彦さんの作品はあまり読まれなくなってしまいましたが、その文体はシベリウスや北欧の作曲家たちの作品と相通じるものがあったように思います。
マルティノンの「不滅」あらためて聴いてみると凄い演奏でした。
投稿: 山本晴望 | 2021年10月21日 (木) 00時31分