ブレンデルのベートーヴェン
今日もよく晴れて、少しずつ春の気配。
一昨日のまとまった雪で富士山は貴婦人のような美しい雪化粧だった。
狩野川の川面にはカワウとコサギが集まっている。
小魚でも群れているのかもしれない。
このところピアノ曲を集中して聴いている。
今日はアルフレッド・ブレンデルの弾くベートーヴェンのピアノソナタから。
ブレンデルは3度のベートーヴェンのピアノソナタ全集録音を残している。
ピアノソナタ以外の変奏曲や、小さな曲も含めて比較的若い時期にベートーヴェンのピアノ曲のほぼ全てを録音。
ブレンデルは来日してN響とベートーヴェンの「皇帝」を演奏したことがあり、本番とリハーサル風景が放送されていた。
その時、練習の最中に服の袖がほころび、それが気になるのか綻んだ部分を食いちぎっていた。
どうでもいいような、そんなことを覚えている。
その時の指揮はマレク・ヤノフスキ。
リハーサルで印象に残っているのは音楽に没頭していく尋常でない集中力。
ヤノフスキはブレンデルに音楽の主導権を完全に譲り、黒子に徹していた。
今日聴いたのは2度目の全集録音から「月光」「悲愴」「熱情」のいわゆる著名な三大ソナタを集めたもの。
フィリップス原盤の国内盤LPで輸入メタル原盤使用。
・ピアノソナタ第8番ハ短調Op.13『悲愴』
・ピアノソナタ第14番嬰ハ短調Op.27-2『月光』
・ピアノソナタ第23番へ短調Op.57『熱情』
アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音 1972年
ブレンデルの弾くベートーヴェンのピアノソナタでは、60年代に米VOXに録音された全集から日本コロンビアが有名曲をセレクトして千円の廉価盤で出していた。
比較的評判が良く、この演奏で曲そのものに親しんだ人も多かったと思う。
そしてこのフィリップス盤。
3曲とも数えきれないほど多くの演奏を聴いているつもりだけれど、初めて聞くようないくつもの発見があって正直驚いている。
解釈そのものはウィーンやドイツの流れを汲む正統派なもの。
強烈な集中力で、ベートーヴェンの書いたひとつひとつの音を取りこぼしなく緻密に表現していく。
音符の物理的な取りこぼしではなく、ひとつひとつの音に意味があるように聞こえるということです。
VOX時代のブレンデルのベートーヴェンも聴きたくなってレコード棚を探したら、第30,31,32番の後期の三大ソナタを集めたものと「エリーゼのために」のほか小品を集めた日本コロンビアが出てきた。
この中から31番の第3楽章を聴く。
ブレンデル30代のベートーヴェン。
芸風は全く変わらず、ピアノの音色もフィリップス盤とほとんど変わらない。
ちなみにラックスのフォノイコライザーのポジションは同じ位置で聴いている。
落ち着いたテンポ、深く切々と訴えかけるアダージョの部分からフーガを経て圧倒的な終結部。
これは相当な名演だと思う。
この録音、米マイナーレーベルVOXへの録音で国内発売時は廉価盤扱いだった。
発売された1970年代当時にはほとんど評判にならなかったと記憶している。
この時期のブレンデルの「悲愴」「熱情」「月光」を集めた千円盤も家にあった気がしていたけれども、なかった。
今度リサイクルショップで見つけたら購入しよう。
Youtubeはブレンデルの弾くベートーヴェン、ピアノソナタ第30番。1995年の来日公演から
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