ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、7度目の「冬の旅」
晴れ時々曇り。日曜日。
昨晩の雨の名残りで富士山頂には雪が見えた。
露骨な覇権主義が横行する世の中になってきた。
国連の無力さも露呈し、世界のあちらこちらで危なげな気配。
あたかも2つの世界大戦を経験した20世紀前半に逆戻りしたかのようだ。
テクノロジーは進歩しても人の性は変わらないのか。
金曜から娘と遊びに来ていた孫が帰っていった。
幼き孫が生きていくこれからの時代、戦争だけは起きないで欲しいと切に思う。
シューベルトの「冬の旅」を聴いた。
フィッシャー=ディースカウの歌でマレイア・ペライアのピアノのソニークラシカル盤CD。
数年前にハードオフの100円、ジャンクコーナーで見つけたもの。
・歌曲集 「冬の旅」 D.911
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
マレイ・ペライア(ピアノ)
録音 1990年7月
フィッシャー=ディースカウの残した冬の旅のスタジオ録音は実に7種。
ライヴ録音を加えると10種を超えるという。
この盤はその中でも最後の録音。
「冬の旅」はどちらかというと苦手な曲で、その時の気分によっては、心が深い底に落ち込んでいくような滅入った気持ちになってしまうので聴くのは年に一度あるかないか。
過去の自分の記事を探ってみると「冬の旅」を聴いているのはいつも夏。
手持ちの音源を数えてみたら12種ほど。
その中の4種類がフィッシャー=ディースカウだった。
ここでの歌唱は、完璧だったいつものフィッシャー=ディースカウの歌とは異なる出来。
音程が怪しい個所や声がかすれがちになる箇所もあり、声の質も老いが歴然と感じられる。
有名な「菩提樹」などこれだけ取り出すと別の歌手かと思うほど。
傷が多いけれどもあえて発売を踏み切ったのは巨匠自身が望んだからだろうか。
最初漫然と全曲を聴き始め、そのうちこれは今までと異なる尋常でない歌唱だと気が付いた。
今までの録音ではあまり感じ取れなかった。ドラマティックで赤裸々な魂の叫びがここで聴くことができる。
最初からまた聴きなおしました。
稀代の名歌手が、長い旅路の末に最後の境地として達した「冬の旅」の姿。
ペライアの伴奏も単なる伴奏に留まらない雄弁な出来だ。
Youtubeはフィッシャー=ディースカウの歌うシューマン「詩人の恋」
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