アンドリュー・デーヴィス校訂による「メサイア」のことなど
日曜の朝、中秋の名月も過ぎてすっかり秋の空。
ポコも元気です。
昨日は親戚の法事で母を連れて裾野市へ。
故人は父方の従兄弟で自分の仲人で幼い頃から大変お世話になった人。
足が不自由な母を連れて行ったけれど、お寺の境内に車椅子に乗ったまま上がる時や、食事会の時などもハトコの夫たちが総出で手伝ってくれた。
ふだん会うことはほとんど無い人たちけれど、血縁のありがたさを感じた瞬間。
アンドリュー・デーヴィスの「メサイア」を聴く。
デーヴィス2回目の全曲録音のCHANDOSから出ているSACD。
・オラトリオ『メサイア』 HWV.56
(アンドルー・デイヴィスによるニュー・コンサート・エディション)
エリン・ウォール(ソプラノ)
エリザベス・デション(メゾ・ソプラノ)
アンドルー・ステイプルズ(テノール)
ジョン・レリア(バス)
トロント・メンデルスゾーン合唱団
トロント交響楽団
サー・アンドルー・デイヴィス(指揮)
録音 2015年12月 トロント、ロイ・トムソン・ホール
メサイアは好きな曲でいろいろ実演を聴いたり音盤も多数家蔵している。
デーヴィスの最初のメサイア録音は、1987年に同じトロント響を振ったものがEMIから出ていた。
・オラトリオ『メサイア』全曲
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
フローレンス・クィヴァー(メゾ・ソプラノ)
ジョン・エイラー(テナー)
サミュエル・レイミー(バス)
エルマー・アイセラー・シンガーズ
トロント・メンデルスゾーン合唱団
トロント交響楽団
アンドリュー・デイヴィス(指揮)
録音:1987年7月 トロント
こちらの独唱はメジャーレーベるだけあって豪華なメンバー。
この時の国内初出時になぜかグーセンス版のメサイアとして発売された。
グーセンス版はイギリスの指揮者ユージン・グーセンスが、同僚のトーマス・ビーチャムの依頼で編曲した版で、マーラーを思わせるような巨大な編成のオケ、ワーグナーの楽劇のような金管楽器や打楽器が活躍する非常にゴージャスなアレンジだった。
グーセンス版はビーチャムの有名な録音があったものの、その後他の指揮者で演奏されることはなかったらしい。
というのは、ある日本のプロオケがグーセンス版で演奏しようとして譜面を探したところ、ビーチャムの遺族が秘蔵していたスコアは門外不出の状態のため使うことができなかった、との話をどこかで聞いたことがある。(真偽のほどはわからない)
そんな話を聞いていたものだから、デーヴィスの第1回目の録音が出た時に輸入盤を入手してわくわくしながら聴いてみた。
ところがこれが当時普通に使われていた版で、多少手を加えた痕跡があったもののグーセンス版とは似つかぬ全然普通の版でモダンオケによる普通の演奏だったのでがっくり。
ところがさらに驚いたことに当時のいくつかの音楽雑誌の新譜月評では、この演奏はグーセンス版として紹介されていた。
これ、月評子の方々がビーチャムのグーセンス版による演奏を実際に聴いて書いていないことがバレバレ。
聴いていればグーセンス版と異なることは誰でもわかること。
月評の文面は版について詳しい言及を避けた老獪な文章であったように覚えている。
そのようなことがあったので、このアンドリュー・デーヴィスの再録音を非常に興味深く聴いた。
これにはアンドリュー・デーヴィス独自の版と書いてあり、デーヴィスの両親に捧げられている。
英文のアンドリュー・デーヴィスのこのCDに寄せた解説文にはこの版についてと、最初の録音についても書かれてあった。
そこには第1回めの録音はプラウト版を使用とあり、さらにグーセンス版も興味深いものであるが下品に陥る際どさもあると書かれている。
第1回録音の初出外盤CDにも同じようなことが書いてあったような気がする。
この言葉を国内発売の際に発売元が誤って解釈してしまったのだろう。
この誤った情報に惑わされて旧録音を買ってしまった人は大勢いたのではなかろうか。
この第2回目の録音を聴いてみるとグーセンス版とは異なるものの、金管楽器やフルート、クラリネットのソロが派手に活躍し、マリンバやスネアドラムなどの打楽器が派手に立ち回るのはグーセンス版にそっくりだ。
終盤の第3部の大詰めのアーメンコーラスでは巨大なオルガンの響きも加わりあたかもマーラーの「復活」の世界が眼前に展開。
ただグーセンス版のようなお祭だわっしょい的な派手さはなくて、華麗な中にも節度を保ったものが感じられる。
演奏会とおぼしきコンサート写真は予想したほど大編成のオケではないけれど、通常のモダンオケのサイズでコントラファゴットの姿見える。
おそらく3管編成あたりのサイズなのだろう。
Youtubeは「メサイア」から終曲
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