ラビ・マイカ ワイス著「この力続くかぎり 20世紀の梏桎からの自由の物語」そしてケンプの「ハンマークラヴィア」のことなど
昨年暮れから良い天気が続く。
コロナウイルスの国内初の感染者が出て4年、未だ収まらず。
百年前の1918年から始まったスペイン風邪は1920年には終息している。
4日は仕事始め。
立場は変われどいつもと同じ年始めのオフィスの風景。
この日の昼食は皆で「とんかつシリウス」のロースカツ定食のテイクアウト。
ここのとんかつは何種類かの岩塩で食べる。
3日には地元の鎮守、楊原神社へ孫を連れて初詣に行っていた。
弾いたおみくじは今年も中吉。
見ると文面はほとんど凶のような内容が並んでいた。
年末は縁があって知ることが出来たユダヤ教の司祭の手記を読んでいた。
著者は数年前に急逝した中学高校の部活後輩の妹の義父。
「この力続くかぎり 20世紀の梏桎からの自由の物語」
ラビ・マイカ ワイス著,岡村 光浩訳
出版:千城 1993年.9月発行
この本は30年前にほとんど自費出版に近い形で世に出た。
絶版になって久しく入手困難。
国立国会図書館には所蔵があるものの、地元の図書館を通じて愛知県立図書館から借りることができた。
内容は彼がラビになるまでの苦労から第二次世界大戦中の強制収容所での経験、そして戦後は共産政権下でのハンガリーでのユダヤ人への迫害、移住先のフィンランドで再びソビエト連邦による圧力による弾圧など。
それらいくつかの困難を、家族や同胞への深い愛と信念で20世紀を生き延びた著者の体験が記されている。
ユダヤ教やユダヤの人々について、彼らへ加えられた迫害は第二次世界大戦のナチスドイツにとどまらず世界的なものであること。
そしてそのような中で彼らが強固なネットワークと強靭な意思の力で生き延びていったことを生々しい体験の中で知ることができる。
日本語訳も素晴らしく、馴染みの薄いユダヤ教のルールや習慣についての詳細でわかりやすい注釈も豊富。
久しぶりに大きな感銘を受けた本。
音楽はウイルヘルム・ケンプのベートーヴェン。
後期のピアノソナタ2曲を聴いた。
手持ちは独逸グラモフォンのLP。
2つあるケンプのベートーヴェン、ピアノソナタ全集のうち2度目の全集中の1枚。
・ピアノソナタ第29番変ロ長調op.106「ハンマークラヴィア」
・ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 op.109
ヴィルヘルム・ケンプ(p)
録音 1964年1月
かつてベートーヴェンといえばバックハウスやケンプの演奏が定番のように紹介されていた。
ケンプ最初の全集はベヒシュタインのピアノを弾いていたけれど、このステレオ録音はハンブルクスタインウェイを弾いている。
意志の強い輝かしさの中に暖かく語りかけてくるような情感の深さが感じられ、「ハンマークラヴィア」の第3楽章など感動的だ。
あらためて長く世に残るに足る名演だと思う。
Youtubeはケンプの弾くバッハ、コラール「甘き喜びのうちに」BWV.729
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