10月も後半に入り過ごしやすい日々。
昨晩、隣町の富士市に行き久しぶりに外来オケを聴いてきた。
外来のメジャーオケを聴くのは2018年のウィーンフィル以来5年ぶり。
結局その後コロナ禍で多くのアーティストの来日が中止になったりしたのとチケット代が極端に上がったので、すっかりご無沙汰になってしまった。
聴いたのはスイスのチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団。

指揮は同オケの音楽監督、そしてN響の初代首席指揮者(2022年まで)にして名誉指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ。
今年暮れの沼響の「第九」を指揮していただく喜古恵里香先生は、ヤルヴィのN響首席指揮者時代にアシスタントを務めている。
ピアノソロは第18回ショパン国際ピアノコンクールの覇者ブルース・リウ。
昨日はオフだったので、早めに会場に行ってホール周辺のブックオフやハードオフに寄ろうかとも考えていたけれど、結局いろいろな雑事に追われて家を出たのは16時半。
この時間ならば余裕で間に合うと思い、クーポン券のあった「はま寿司」で早めの夕食。
国道1号線バイパス経由で富士市へ向かう。所要時間は40分ほどのはずだった。
ところがバイパスが途中から渋滞。
車がほとんど前に進まなくなってしまった。
この時間でこれほどの渋滞は珍しい。
カーナビの到着予想時刻がずるずると遅くなり18時を過ぎている。
開場は18時半なので間に合うはずだけれど、ホールの駐車場が満車ならば周囲を探さなければならない。
ちょっと焦って来た。
しばらくすると前の方にボンネットを開けた車が見えてきた、どうやらエンストらしい。
これが原因だった。
エンスト車を抜けたあとは順調だったけれどホール到着は18時半を回っていた。
遠目にも平面駐車場にはびっしりと車。
満車表示がなかったので、とりあえずエリアに入ってスペースを探しながら中をグルグルと回る。
開演時間が迫る中で、ここで探すか他の場所を探すか迷っているうちに出る車が出始めた。
どうやら駐車している車の多くは昼間のイベントの客だったらしい。
あと30分早かったら、満車で他の場所を探さなければならなかったと思う。
渋滞はケガの功名か。
そしてホールへ。
曲は
・「献堂式」序曲 :ベートーヴェン
・ピアノ協奏曲第1番 :ショパン
・黒鍵のエチュード(アンコール) :ショパン
・交響曲第5番 ハ短調 :ベートーヴェン
・「プロメテウスの創造物」序曲(アンコール) :ベートーヴェン
ブルース・リウ(ピアノ)
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
富士市民文化会館 ロゼシアター
パーヴォの父、ネーメ・ヤルヴィはエーテボリ交響楽団で実演を聴いている。
その時はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とブラームスの交響曲第1番を中心とするプログラムで、アンコールでは得意のシベリウスから「アンダンテ・フェヅティーボ」と「カレリア」組曲から行進曲ふうにを聴かせてくれた。
父ヤルヴィは恰幅の良い紳士だったけれどパーヴォ・ヤルヴィは比較的スリムで小柄に見えた。

オケは12型対向配置、コントラバスは舞台下手でチェロの後ろに6人が並ぶ。
管楽器はほぼ標準編成だけれど「運命」の第4楽章で加わるピッコロとコントラファゴット奏者たちは他の楽章でもフルートとファゴットに持ち替えて時々吹いていた。
ティンパニはベートーヴェンでは小型のものを使用。
序曲のトランペットは遠くでよく見えなかったけれど、長い管のものを使っているようだった。
序曲は最初の和音からしてガツンと力強い。
「献堂式」はベートーヴェンの数ある序曲で最後のもの。
祝祭的な華やかさと後半のフーガに聞かれるような古典的な格調の高さがあって好きな曲だ。演奏ではマルケヴィッチの演奏がお気に入り。
小型のティンパニの幾分軽い響きを強調しながら曲は早いテンポで進む。
トーンハレ管は実演では始めて聴くけれどなかなか良い。
ブラームスも指揮台に立った伝統オケ。
幾分古風で渋い響きが古いドイツのオケの音と似ている。
かつて聴いたバンベルク響がこんな音だった。
フーガでは対向配置の妙が見事に決まっていた。
続いてショパン、序曲と異なり長い序奏からしてロマンティックに歌わせていく。
最初ソリストのブルース・リウは連日の公演で幾分疲れているように見えた。
音量が弱く第一楽章前半ではホルンソロとのからみで若干のずれがあったけれど、ヤルヴィがうまく修正していた。
リウのきめ細やかで繊細な音、幾分ナイーヴに見える芸風は第2楽章で良い結果となった。
演奏が終わったとたん、前のあたりに座っていたお客が一斉に立ち上がり突然のスタンディングオーベーション。
かなりの人数だ。
皆、比較的若い?女性たち。
演奏は良かったけれど、ちょっと違和感。
そうか、そういうピアニストだったのね。
追っかけの熱烈なファンがいるようだ。
そして後半。
「運命」は自分でも何度も演奏しているし実演も数えきれないほど。
手持ちの音源も200を超える。
それでもヤルヴィの解釈は初めて聴くような新鮮な部分があって楽しめた。
要所要所で大きく歌わせながら速いテンポでぐいぐいとオケを煽るヤルヴィ。
ところどころでホルンのグシュとした閉塞音も聞こえてくる。
第3楽章トリオのフガートでのコントラバスとチェロの一糸乱れぬアンサンブルも見事。
第4楽章に至るブリッジの緊張感に満ちたピアニシモもから第4楽章の歓喜の爆発もよかった。
アンコールはベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲。
聴いていてオケが指揮者に全面的に信頼を寄せているのが伝わってきて、力のある指揮者とオケが全力を出し切った爽快感の残る演奏会でした。
帰宅は10時過ぎ、寝ずに待っていた帰省していた孫たちが迎えてくれた。
Youtubeはパーヴォ・ヤルヴィ指揮ベルリンフィルのシベリウス、交響曲第5番第3楽章から
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