今日は冷えた。
日曜からの雨で真っ白になった富士山。
シューリヒトのベートーヴェン、第九をタワーのSACDで。
タワーレコードから発売されたシューリヒトのベートーヴェン交響曲全集が非常に良い音だというので購入してみた。
このタワーの全集にはモノラルバージョンの「第九」も収められていて、中でも第一楽章はステレオとは別テイクだという。
これが今年の音盤初買い。
その中の唯一のステレオ録音、第九を聴く。
・ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調 Op.125『合唱』
ヴィルマ・リップ(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
マレイ・ディッキー(テノール)
ゴットロープ・フリック(バス)
エリザベート・ブラスール合唱団
カール・シューリヒト(指揮)
パリ音楽院管弦楽団
録音:1958年3月4&5日、5月27~29&31日、サル・ワグラム
シューリヒトのベートーヴェンの交響曲録音は、パリ音楽院管との全集録音のほかいくつかのライヴを80年代以降に集中的に購入していた。
仏EMIへの全集録音は東芝から出ていた廉価盤を1枚ずつ買いためていて、モノラルながら音も良かったので好んで聴いていた。
音盤購入記録を見ると最初が「田園」で1980年。
中古LPで600円。確か大学の学園祭での中古レコード市だったと思う。
「第九」は銀座ハンターで1984年の4月25日に中古LP2枚組1600円。
ちなみに同じ日にターリッヒ指揮するドヴォルザークの「スターバト・マーテル」も同じく2枚組を1600円で購入している。
今の感覚では高いけれどこの頃は普通だった。
早速ステレオの「第九」を聴いてみる。
音の改善が著しい。
音の分離も良く響きに広がりがあって、第4楽章の合唱が非常に良い状態で聞こえてくる。
この演奏の感想はかつて沼響のホームページの「第九」の聴き比べに書いているけれど、印象はほとんど変わらない。
「第九」は先月沼津市制100周年記念事業で演奏したばかり。
漠然と頭の中で自分たちの演奏を反芻しながら聴き始めたけれど、どうも聴き慣れない音が随所で鳴っている。
気になってスコアと、自分が演奏で使ったホルンのパート譜を取りだして第一楽章の最初から聴いてみた。
録音が鮮明になった分、楽器を重ねたり省いたり強弱の特殊の解釈やテンポの変化など、いろいろと手が加えられているのがはっきりしてきた。
オケはパリ音楽院管。
同時期にEMIはフランス音楽で名演を聴かせていたアンドレ・クリュイタンスとベルリンフィルでベートーヴェンの交響曲全集を完成させている。
オケが逆の方が良いのではないかと議論は以前からあった。
自分もシューリヒトがなぜパリ音楽院を指揮したのか長い間の疑問だった。
このあたりのことをこのCDの解説に期待していたのだけれど、自分も知っている資料からの孫引きばかりでがっかり。
楽譜の改変についても、第2楽章最後のティンパニ付加のように誰にも判る部分だけでなくもっと深堀りしていただきたかった。
この全集録音にあたってどのオケを使うかの自由な選択権はシューリヒトにあったという。
候補としてウィーンフィルもあったというが、シューリヒトがあえてパリ音楽院管を選んだ理由がこのSACDを聴いているうちにわかってきた気がする。
音を彫琢し緻密に積み上げ効果的に鳴らしているシューリヒトの意図が、明るく各声部が明解に浮き上がるパリ音楽院管の音によって、より明快になっている。
シューリヒトとウィーンフィルとのベートーヴェン録音はライヴを含めると沢山出ているけれども、セション録音という環境の中で、この明晰でクリアなシューリヒトのアプローチをより徹底させるには、ベートーヴェン演奏の長い伝統のあるウィーンフィル相手では難しかったのではないかとも思う。
長くなったので演奏の詳細は整理して沼響ホームページの聴き比べコラムに追加記事として載せます。
Youtubeはシューリヒトのモーツァルト、「ハフナー」から第4楽章
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