クルツとN響のロシア管絃楽曲集
晴れのち曇り、最高気温は33度湿度も高い。
本日は十五夜。
あいにくこちらでは雲に隠れて月は見えないが、千葉に住む友人が月の画像を送ってきた。
エフレム・クルツのロシア名曲集。
1962年N響来演時の記録。
N響の水準を飛躍的に引き上げたウイルヘル・シュヒターがN響を去り、N響が創設以来初めて常任指揮者が空席となった時代の演奏。
この時期には小澤征爾が客演指揮者としてN響を指揮している。
(1)カバレフスキー:組曲「道化師」(全10曲)
(2)チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」より5曲
(3)リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲Op.34
(4)ハチャトゥリヤン:バレエ組曲「ガイーヌ」~ばらの乙女の踊り/子守歌/剣の舞
(5)同:付随音楽「仮面舞踏会」~ワルツ
(6)プロコフィエフ:「3つのオレンジへの恋」~スケルツォ/行進曲
(7)バーバー:弦楽のためのアダージョ
エフレム・クルツ(指揮)
NHK交響楽団
録音 :1962年5月5日(1)(2)、5月26日(3)(4)(5)
/旧NHKホール(公開収録)、
6月7日(6)(7)
/東京厚生年金会館(公開収録)
エフレム・クルツ(1900~1995)はロシア生まれ。
グラズノフに作曲を学び、本人が唯一の師と言及していたベルリンフィルの第2代常任指揮者アルトゥール・ニキシュの代役としてベルリンフィルを指揮してデビュー。
この時は20世紀を代表するダンサー、イザドラ・ダンカンの伴奏だった。
その後伝説的なバレエダンサーのアンナ・パヴロワの伴奏指揮者として契約。
若い頃のクルツは20世紀前半を代表する歴史的な芸術家と共に活動していた。
クルツは後にN響以外の在京オケにもたびたび客演していて、クルツの下で演奏した方から、クルツの練習は非常に厳しくて楽団員からは鬼のクルツとして恐れられていた、と話を伺ったことがある。
日本ではチャイコフスキーの三大バレエや、いくつかのバレエ音楽の名演でクルツは知られ、バレエ音楽のスペシャリストとして紹介されることが多かった。
だが本人はバレエ音楽のスペシャリストとされることを非常に嫌っていて、この録音の時期にはもうバレエ音楽を指揮するのを止めていたという。
好きな作曲家はバッハとモーツァルトとのこと。
だが皮肉にもこのアルバムはバレエ音楽中心の選曲となっている。
演奏はやはり見事。
シュヒターの薫陶を受け、いくぶんドイツ的な重い響きが残るこの頃のN響からパリっとリズムの冴えた軽快な音楽を引き出している。
フィルハーモニア管とのスカッと爽やかな名演を残している「道化師」組曲は硬質な響きの強面の演奏で、細かな部分の楽器のバランスがフィルハーモニアとの演奏とは異なり、即興的な動きを聴かせるのも面白い。
ハチャトウリアンの「剣の舞」ではドスの効いた重戦車のような怒涛の演奏。
音楽が生き生きと躍動していてやはりクルツは凄い。
このアルバムではバーバーの「弦楽のためのアダージョ」が非常に遅いテンポのロマンティックな演奏なのが印象に残る。
今ではこのようなテンポで演奏する指揮者は少ない。
クルツはやはり古い世代の指揮者だなぁと思いながら聴いていた。
クルツが尊敬する指揮者はフルトヴェングラーとストコフスキーだという。
ストコフスキーとは意外だった。
クルツのバッハが聴いてみたくなった。
バッハの録音はないようだけれど、モーツァルトはクルツ夫人のシェッファーの伴奏でフルート協奏曲の録音を残している。
Youtubeはクルツ指揮フィルハーモニア管のシャブリエ、「楽しい行進曲」
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