髙木東六のドビュッシー、月の光
乾燥した晴天が続く。
本日の最低気温1℃、湿度25%
高木東六のピアノ演奏を聴く。
昭和43年にテイチクレコードから発売されたLP2枚組
・エリーゼの為に
・月光の曲 :以上ベートーヴェン
・軍隊行進曲 :シューベルト
・愛の歌
・スペイン舞曲 :グラナドス
・夜想曲 作品9その2 :ショパン
・即興曲 作品90の4 :シューベルト
・ニ調のタンゴ :アルベニス
・春のささやき :シンディング
・愛のワルツ :ブラームス
・乙女の祈り :バダチェフスカ
・トルコ行進曲 :モーツァルト
・月の光 :ドビュッシー
・ナポリの歌《バレー曲(白鳥の湖)の第2幕より》:チャイコフスキー
・歌の翼 :メンデルスゾーン
・トロイメライ :シューマン
・雨だれ前奏曲《作品28の15》
・子犬のワルツ《作品64の1》
・嬰ハ短調の前奏曲《作品3の2》
・別れの曲《作品10の3》 :以上ショパン
髙木東六(ピアノ)
初出 1968年
2年程前に地元のハードオフで見つけたLP。
この現物を目にするまでは、高木東六がピアニストでもあったことを知らなかった。
高木東六の印象といえば、テレビ番組の「家族そろって歌合戦」やNHKの「あなたのメロディ」の審査員。
お洒落でモダンな雰囲気のある、童謡や歌謡曲を作曲したおじいちゃん。
その後何かの記事で、フランス留学をしてヴァンサン・ダンディに作曲を学んだことを知った。
このレコードに書かれた経歴では、ピエルネの薫陶を受け、ラヴェルにも接している。
高木東六は、いわば20世紀初頭のフランス音楽作曲界の、実り多き時代の雰囲気を直に体験した稀少な日本人だったのだ。
だが髙木氏の著書を読むと、パリ留学で接したであろう大作曲達のことや、音楽上の学んだことの記述は出てこない。
書かれた内容のほとんどは、パリで出会った女性遍歴のことばかり。
このレコードには高木氏のインタヴュー記事も出ていて、パリのスコラ・コントウルムで、音楽院長のヴァンサン・ダンディ作曲のクラスに学んだけれど、実際は自分の語学力の貧弱さから、ほとんど授業の内容は理解できなかったと語っている。
ある意味正直な告白。
このレコードの収録曲はポピュラーな曲ばかり。
ほとんどが全音ピアノピースにあるような、一般のピアノ愛好家が弾くような曲で、さほど高度な技巧を要求する曲はない。
一抹の不安と期待を持ってレコードに針を下ろす。
2枚目のB面、シューマンとショパンから。
最初は「トロイメライ」。
「・・・・・」
最初の曲で大きな落胆。
続くトルコ行進曲も鈍重。
正直なところ、今このレベルではプロのピアニストとして通用しない。
このレコードの解説に「レコーディングは恐ろしい」と題する高木氏本人が一文を寄せている。
氏はこの録音の前まではピアノの研鑽を怠けていて、十数年前からピアノから離れていたとある。
それならば、なぜレコーディングをしたかというと、ピアニストとしての自分の記録を残しておきたから、ということらしい。
このレコードの収録曲で唯一のフランス音楽、ドビュッシーの「月の光」は良い。
いくぶん重い響きながら独特の艶っぽさがあり、一音一音に深い意味を感じさせるもの。
これは素晴らしい演奏だ。
これは他の著名ピアニストたちの名演とは全く異なるスタイルのドビュッシー。
氏のドビュッシー録音はほかにはないのだろうか。
直接会ったというラヴェルの作品の演奏も聴いてみたくなった。
Youtubeはドビュッシーの「月の光」、冨田勲のシンセサイザーで
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コメント
いつも楽しく拝見させていただいております。
国立音大の脇で働いているとき、音大の学生さんがアルバイトに来ました。話を聞くと、冨田勲が
特別授業できたことが有り、一緒に写真を撮ったとか、又、フランスのシュテファン。ベロフも来て指導をしていったそうです。
支離滅裂ですいません。月の光で思い出される
事柄です。
投稿: 武田の赤備え | 2024年12月19日 (木) 01時34分
冨田勲のシンセサイザーの「月の光」を初めて聴いたのは中学生の時。
FMから流れてきた、今まで聴いたことのない世界に痺れました。
冨田勲のドビュッシーが、私にとってドビュッシー開眼の原点です。
投稿: 山本晴望 | 2024年12月20日 (金) 22時17分