ブレンデルのバッハ
連日の猛暑。火曜は静岡市で37度を超えた。
早くも梅雨明けかな・・・
朝の散歩で見かけた黄色い百合。
そして鮮やかな紫のアジサイ。
名ピアニストのアルフレッド・ブレンデルの訃報が入ってきた、94歳。
ちょうど前日のブログに、ベートーヴェンのピアノ曲全集について取り上げたばかり。
ブレンデルは若い頃から比較的録音が多く、曲によっては何度も再録音をしていた。
早い時期の録音はアメリカのマイナーレーベルのVOXへの録音が中心で、国内盤では千円盤の廉価盤でいくつか出たりした。
そのためだろうか、ブレンデルがいわゆる巨匠扱いされ始めたのは70年代末あたりだったと思う。
高度な技巧をさりげなく示しながらも、虚飾を排し淡々と曲の本質に迫っていくスタイルは若い頃から晩年まで一貫していた。
今日はブレンデルのバッハ。
・イタリア協奏曲 BWV.971
・主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる BWV.639
・前奏曲(幻想曲)イ短調 BWV.922
・半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903
・来たれ、異教徒の救い主よ BWV.659
・幻想曲とフーガ BWV.904
アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1976年5月 ロンドン
フィリップスへのアナログ録音。
自分はCDで初めて聴いた。
手持ちはCD初期に発売されたCDで、購入記録では1985年11月27日3200円で購入とある。
その頃のCDは高かった。
音盤購入が中古LPが中心の中で、レギュラー価格のCDを発売と同時に買うのは異例のこと。
これは今でも続けている文化センターでのクラシックレコードコンサートで、バッハの鍵盤音楽を紹介するために購入したのを思い出した。
確かFMで聴いて、録音も良いし演奏が良かったのでセレクトしたのだと思う。
ブレンデルのバッハは珍しく、まとまったアルバムとしてはこのアルバムが唯一のもの。
「イタリア協奏曲」に始まり「幻想曲」と名のつくクロマティックな3曲の間に静かなブゾーニ編のコラールを配した、チェンバロ曲をピアノで演奏するにあたって、入念な考えが感じられる選曲と配列。
16歳の頃、名ピアニストエドウィン・フィッシャーに師事したブレンデル。
フィッシャーは平均律クラヴィアー曲集全曲をはじめてとして、バッハの偉大な録音の数々を残している。
この師のバッハのスタイルに支配されて、ブレンデルはなかなかバッハの録音に踏み切れなかったらしい。
ブレンデルはデビューしたての17歳の時のリサイタルで、バッハのコラールプレリュードを取り上げるなどバッハは特別な愛着があったようだ。
そして満を持してのこの録音。
柔らかなピアノの音だけれども、暖かさよりも孤高の厳しさを感じさせるバッハ。
「幻想曲」で聴かせる鮮やかなテクニックとは裏腹に、華麗さとは対極にある端正にして幾分寂しさの漂うようなバッハ。
若い頃に聞いた時には気がつかなかったけれど、いままでの人生や周囲のことなど、いろいろなことが聴いているうちに頭に浮かんでくるような深く重い演奏だった。
Youtubeはブレンデルのバッハ、前奏曲(幻想曲)イ短調 BWV.922
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コメント
本日、貴殿ブログにてブレンデル逝去知りました。94歳没とは羨ましい限りです。
丁度、20年弱前に引退時のブレンデルをパリのシャトレ座で聴きました。ハイドンとシューベルトのプログラムだったと思います。
投稿: 山森壽夫 | 2025年6月19日 (木) 18時27分
山森さま、ブレンデルの実演をお聞きになったとは羨ましい。
71年のブレンデルの初来日では客席はガラガラだったそうです。
1985年の来日時に、N響とのベートーヴェンの「皇帝」の本番とリハーサル風景がテレビ放送されていました。
印象に残っているのは音楽に没頭していく尋常でない集中力。
練習の最中に服の袖がほころび、それが気になるのか綻んだ部分を食いちぎっていました。そんなどうでもいいようなことを覚えています。
その時の指揮はマレク・ヤノフスキ。
ヤノフスキはブレンデルに音楽の主導権を完全に譲り、黒子に徹していました。
投稿: 山本晴望 | 2025年6月21日 (土) 21時13分