カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2023年6月20日 (火)

月刊「レコード芸術」休刊に思ふ

薄曇りの一日。日曜に自宅近くからの富士。


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裾野が霞み空中に浮いているように見えた。

 

昨日はオフ、午前中にケアマネージャーさんが来て母の来月からの介護予定の打ち合わせ。

午後は畑作業など。

 

 

レコード芸術誌が今日発売の7月号で休刊となってしまった。
創刊は1952年、70年を超える歴史。

今までにもいくつかの音楽雑誌はあったけれど、内容の充実度では他誌を圧倒していた。

クラシック音楽の市場全体が縮小している中、時代の流れとはいえ値段も高くなって冊子が薄くなっていったので、相当苦しいだろうなと想像はしていた。


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自分が「レコード芸術」を読み始めたのは70年代の初め。

中学生の時の自分はもっぱら立ち読み。

貧乏学生の自分が購入するレコードはほぼ廉価盤ばかりで、レコ藝も年一回恒例の特集記事だった廉価盤特集の時だけ購入していた。

 

80年代になり社会人になってからは毎月定期購読するように。

やがて学生時代に購入できなかった古いバックナンバーも古書店で買うようになっていった。

その後は新譜の情報誌として重宝はしていたけれど、CD時代に入りカラヤン、バーンスタインが世を去ったあたりからクラシック音楽市場の潮目が変わったと思う。

 

NAXOSに代表される小さなレーベル台頭すると同時に、メジャーなEMIやPHILIPSなど大きなレーベルの衰退が著しくなっていった。

自分が購入するレコードも中古盤やマイナーな輸入盤にシフト。

 

地方都市ではCDショップのクラシックコーナーがみるみると小さくなっていった。

 

自分は90年代の半ば当たりから自然発生的に定期購読は止め、購入するのは興味のある特集がある時だけになった。

ネットで基本的な情報を得ることができるようになると、そのうち購読するのも止めて近くの書店でパラパラと立ち読みする程度。

そのうちその書店はレコ藝を置かなくなってしまった。

 

だがネットだと、自分求めようとする情報が知っている方向にどうしても偏りがち。

 

久しぶりに最終号となった今月号を手に取ってみる。

この一冊に集約された記事の質と情報量、そして精度の高さをあらためて実感する。

喪失感は大きい。

 

今や時代はネット配信の時代となってCDも先が見えてきた。

 

先日、馴染みのオーディオショップの主人が店内のLPの山を見て。

「これ、結局ゴミになるのかなぁ・・・」と呟いたことを思い出す。

 

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2023年1月 5日 (木)

ラビ・マイカ ワイス著「この力続くかぎり  20世紀の梏桎からの自由の物語」そしてケンプの「ハンマークラヴィア」のことなど

昨年暮れから良い天気が続く。

コロナウイルスの国内初の感染者が出て4年、未だ収まらず。

百年前の1918年から始まったスペイン風邪は1920年には終息している。

4日は仕事始め。

立場は変われどいつもと同じ年始めのオフィスの風景。


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この日の昼食は皆で「とんかつシリウス」のロースカツ定食のテイクアウト。

ここのとんかつは何種類かの岩塩で食べる。

 

3日には地元の鎮守、楊原神社へ孫を連れて初詣に行っていた。


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弾いたおみくじは今年も中吉。

見ると文面はほとんど凶のような内容が並んでいた。

 

年末は縁があって知ることが出来たユダヤ教の司祭の手記を読んでいた。

著者は数年前に急逝した中学高校の部活後輩の妹の義父。


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「この力続くかぎり  20世紀の梏桎からの自由の物語」

 ラビ・マイカ ワイス著,岡村 光浩訳

 出版:千城   1993年.9月発行

この本は30年前にほとんど自費出版に近い形で世に出た。

絶版になって久しく入手困難。

国立国会図書館には所蔵があるものの、地元の図書館を通じて愛知県立図書館から借りることができた。

 

内容は彼がラビになるまでの苦労から第二次世界大戦中の強制収容所での経験、そして戦後は共産政権下でのハンガリーでのユダヤ人への迫害、移住先のフィンランドで再びソビエト連邦による圧力による弾圧など。

それらいくつかの困難を、家族や同胞への深い愛と信念で20世紀を生き延びた著者の体験が記されている。

 

ユダヤ教やユダヤの人々について、彼らへ加えられた迫害は第二次世界大戦のナチスドイツにとどまらず世界的なものであること。

そしてそのような中で彼らが強固なネットワークと強靭な意思の力で生き延びていったことを生々しい体験の中で知ることができる。

 

日本語訳も素晴らしく、馴染みの薄いユダヤ教のルールや習慣についての詳細でわかりやすい注釈も豊富。

久しぶりに大きな感銘を受けた本。

 

 

音楽はウイルヘルム・ケンプのベートーヴェン。

後期のピアノソナタ2曲を聴いた。

手持ちは独逸グラモフォンのLP。

2つあるケンプのベートーヴェン、ピアノソナタ全集のうち2度目の全集中の1枚。


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・ピアノソナタ第29番変ロ長調op.106「ハンマークラヴィア」
・ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 op.109

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 録音 1964年1月

 

かつてベートーヴェンといえばバックハウスやケンプの演奏が定番のように紹介されていた。


ケンプ最初の全集はベヒシュタインのピアノを弾いていたけれど、このステレオ録音はハンブルクスタインウェイを弾いている。

意志の強い輝かしさの中に暖かく語りかけてくるような情感の深さが感じられ、「ハンマークラヴィア」の第3楽章など感動的だ。

 

あらためて長く世に残るに足る名演だと思う。

 

Youtubeはケンプの弾くバッハ、コラール「甘き喜びのうちに」BWV.729

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2021年6月29日 (火)

村上春樹著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」

朝は晴れていたのに途中から狐の嫁入り

夕方から雷の鳴る本格的な雨。

昨日ワクチンの2回目を接種した母が微熱。
腕も痛いようだ。

 

本日休みで午前中は最近楽譜の読み間違いが多くなってきたので眼鏡のレンズ交換のために眼鏡屋へ。

店で調べると前回レンズを購入したのは4年前とのこと。

今は遠近両用と中近両用の二つの眼鏡を使い分けている。

思い切って二つとも交換したら結構な出費となってしまった。

 

午後は先日手術した抜糸のために皮膚科医院へ。
生検の結果は2週間後だという。

 

夕方には箱根山麓でジャガイモを栽培している父方の祖母の実家から父の従兄弟がジャガイモを持ってきてくれた。


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祖母が我が家に嫁に来てから90年以上。
毎年この時期に箱根名産のジャガイモを持ってきてくれる。

 

村上春樹著「古くて素敵なクラシック・レコードたち」が届いた。

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自分は村上春樹の小説の熱心な読み手ではないけれど、氏の音楽関係のエッセイなどを読んで音楽ではなんとなく自分と波長が合うような気がして発売前から予約していた。

 

届いたアマゾンのパッケージを開いてびっくり。

本のサイズが変形正方形。

薄いプラスチックのケースに入っていて、これはLPジャケットのサイズをそのまま縮小したイメージと想像する。

 

ここで紹介されているのは全てアナログレコード。

いわゆる超メジャーな演奏家たちというわけではなく氏が個人的に好きな演奏の数々。

指揮者ではボールト、マルケヴィッチ、ベイヌム、フィエルシュタートなどなど。

 

パラパラとページをめくってみて、世間ではほとんど知られていないけれど、今まで自分が最高の名演と思っていた演奏が次々と出てきて思わず頰がほころぶ。

「運命」で紹介されているのはトスカニーニ(1938年)、エーリッヒ・クライバーにベーム&ベルリンフィル、そしてホルスト・シュタイン&ロンドンフィルにマルケヴィッチ。

シベリウスの交響曲第5番はブルームフィールド、トウクセンにエールリンク、そしてオーマンデイの1954年録音。

これ、ブルームフィールドはともかく他は自分の好みとぴたりと一致。

 

Youtubeはシベリウスの交響曲第5番、サラステの指揮

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2020年7月25日 (土)

明子のピアノ

終日の雨、明け方の激しい雨で目が覚めた。
巷は4連休。

 

本来今頃はオリンピックの開会で、日本中がお祭り気分で沸くはずが歴史的なパンデミックの到来、加えてこの雨。
Go toキャンペーンとはいえ道路を走る県外ナンバーの車は少ない。

 

木曜の夕方にいつも珍しいLPを聞かせてくれる後輩がやってきた。

読んで欲しい本があるという。

 

「明子のピアノ」(中村真人 著 岩波ブックレット)

この7月に出たばかり新刊書。

 

著者は彼の大学時代の友人でベルリン在住。

さっそくその日に読んでみた。


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広島に投下された原爆によって命を奪われた19歳の女性が弾いていたピアノの物語。

 

このピアノは原爆投下の際に被害を受け、その時のガラスの破片がささったままの状態で残され、被爆ピアノとして知られる。


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読んでいるうちにかつてNHKのニュースで紹介されていたのを思い出した。

 

古くなった家とともに廃棄されるはずだったこのピアノが数奇な運命で生き永らえて再生され、アルゲリッチやピーター・ゼルキン、アムランら世界的な名ピアニストたちの目に止まるまでのノンフィクション。

 

ピアノはアメリカのボールドウィン社のアップライトピアノ。
製造番号から1926年製造だという。

この当時、日本の家庭でボールドウィンのピアノがあるのは珍しい。

 

彼女の一家は父の仕事の関係でアメリカに住んでいた。

彼女もアメリカで生まれている。

 

このピアノは母が弾き、やがて成長するにつれて彼女も弾くようになった。

在米中に撮影されたピアノの前に座る生後七か月の彼女の写真が愛らしい。

 

一家は戦争が始まる前に帰国。

 

昭和20年8月6日、彼女が女学校の勤労奉仕に出ていた時に原爆が投下された。

 

当日彼女は体の不調を訴え「行きたくない」と呟いたという。

 

 

印象に残るのはアルゲリッチがそのピアノを始めて目にし「私も弾きたい」と、鍵盤の上に静かに手に置いてシューマン、プロコフィエフ、バッハそしてショパンを弾き始める場面。

 

その現場に立ち会ったピアニストの萩原麻未が「この瞬間、ピアノが大きく目を開いて蘇ったように言葉を発していました」の証言には深い感動を覚えました。

「彼女がショパンを好んで弾いていたことを、このピアノはよく覚えている」のアルゲリッチの言葉も泣かせる。

 

読んでいるうちにピーター・ゼルキンもこのピアノに出会い、このピアノでバッハを弾いたCDが残されていることを知った。

これはぜひ聞きたい。

 

すぐにタワーレコードにオーダーを入れた。


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ゼルキン曰く「このピアノは18、19世紀の古い時代の音がする」と。

 

ゼルキンはこのCDの売り上げをすべてこのピアノの維持費のために捧げている。

 

この「明子のピアノ」の物語は、8月15日にNHKBSでドキュメンタリー・ドラマが放送されます。

 

youtubeはアルゲリッチが初めて明子のピアノに出会ったまさにその瞬間の映像

 

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2020年5月 5日 (火)

武田百合子、「犬が星見た-ロシア旅行」

晴れのち曇り。こどもの日の今日は出勤。

 

GWも後半だというのに通勤途中ですれ違うのはごみの収集車ばかり。

 

昨日はどこにも出かけず。
畑でトマトの苗のキャップを外して竿を立てたり、いただいたおが屑を畑に撒いたりしていた。

 

814ae3w0jal Facebookで回ってきた【7日間ブックカバーチャレンジ】の2日目。

 

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「犬が星見た-ロシア旅行」
武田 百合子 著
              中公文庫

 

前回の江戸時代の絵日記に続いて、こちらは現代の人が書いた日記。

 

手持ちの古い中公文庫の裏表紙には1985年9月20日PM8:00読了のメモ書き。

 

 

武田百合子は小説家武田泰淳夫人。

 

1969年、海外旅行が今ほど一般的でなかった時代のできごと。
客船からシベリア鉄道と飛行機を乗り継いだロシア北欧紀行。

 

夫と同行している友人その他ツァーに参加した人たちの、慣れぬ海外旅行に戸惑う中で明らかになっていく素のままの言動と行動の数々を、天真爛漫なタッチで描く人間観察日記です

 

純粋無垢な目を持つ幼な子のような感覚で描いた抱腹絶倒の紀行文。
さりげない出来事を純で流れるような文体で書いているのが新鮮、

 

今読み返しても古さも感じさせず時間の経つのを忘れるほど。

 

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音楽はムーラ・リンパニーの弾くラフマニノフなど
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2020年5月 3日 (日)

「幕末下級武士の絵日記」そしてナージャのヴァイオリン

いつもと違うGWの日曜日。
晴れのち曇り、夜遅くから雨。

午後に弟が来たので一緒に畑の重い流し台の移動などをしていた。
今日は全く外出なし。

今、Facebookで【7日間ブックカバーチャレンジ】というものが流行っている。

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読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、好きな本を1日1冊選び、本についての説明はナシで表紙画像をFacebookへ7日間アップを続ける。
その際毎日1人のFB友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする。
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というもの。

チェーンメール的なものは好まぬけれど、2人の友人から招待されたので参加することにした。
ただし友人を招待することはしない。

 

以下紹介文

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第1日めは最近読んだ本の中で印象に残っているものから。

 

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新訂「幕末下級武士の絵日記」
  
   大岡敏昭 著
          水曜社刊

 

忍藩の下級武士、尾崎石城の周りには様々な人たちが集い、時には一緒に飲み食い喜怒哀楽を共にしながら日々を過ごしていく。

友を思い家族を慈しむ表情豊かな絵を見ているうちに日本の良き時代の原風景が思い浮かぶようで、なんとも楽しい気分になります。

 

国内で生産されたものが国内で消費され、2百数十年の平和の世が続いた江戸時代。

 

貧しい中にも精神的に満たされた豊かな生活に羨ましさも感じられます。

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音楽は、ローマ生まれの女流ヴァイオリニスト、ナージャの小品集を聴いていた。


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極めて情熱的で個性的。

 

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中でもファリァのアストリアーナの神秘的なまでの演奏が印象に残る。

 

youtubeはファリャの「アストリアーナ」。トランペット版

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2020年3月28日 (土)

幕末狂乱~コレラがやって来た!

新型コロナウイルスの脅威が刻一刻と迫っています。

 

疫病退散についてこの沼津に伝わる歴史的事実を紹介します。

 

安政5年5月ジャワを経て長崎に上陸したコレラは各地で猛威をふるいながら東上、7月には江戸に到達しました。
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沼津市下香貫楊原にある吉田神社は、安政年間のコレラ流行時に疫病退散を祈念して京都の吉田神社を勧請した神社です。

 

当時の勧請の詳細を書き記した記録が残されていて、本にもなっています。

 

「幕末狂乱~コレラがやって来た!」(高橋敏著 朝日選書)

 

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この本は異国船の到来、安政の大地震、大津波。


社会不安が日本全体を覆う中、各地に残る古記録を元に庶民が立ち向かう姿を紹介したものです。

 

コレラが刻一刻と西から沼津に迫る中、必死に対抗策を模索する下香貫の人々。

 

やがて疫病退散に御利益があるという京都の吉田神社の勧請しようということになりました。


日々の暮らしで精一杯の中で、村内からかき集めた5両を懐中に村内から選ばれた2人が京都に向かいます。

ところが、苦労してたどり着いた京都の吉田神社側は、足元を見透かして法外な祈祷料を要求。
この人達が祈祷料7両二分をいかにして工面したかの記述はありません。

 

やっとの思いで祈祷されたお札の入った小箱を手に入れた2人は、故郷沼津に向かって東海道を飛ぶが如く下っていきます。
途中、心配して駿府(静岡市)まで迎えに来ていた村人の代表二人に会いました。

 

沼津に向かう東海道筋では、吉田神社の祈祷の小箱が通過することを聞き小箱に群がる人々の姿。

 

この本には緊迫した当時の様子がドラマティックに書かれています。

 

京までの路銀は全て自己負担だったといいます。

 

皆のためになるならば、自分を犠牲にしてまで全力を尽くそうとする、当時の人たちの純朴にして崇高な精神には心を打たれます。

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2019年11月16日 (土)

モントゥーの白鳥の湖

今朝の狩野川からの穏やかな晩秋の富士。

 

抜けるような蒼い空の土曜日。


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これといって何もない平板な一日だった。

 

けれどもこのような平穏な日々の連続が大事なのだろう。

 

「日本を造った男たち―財界創始者列伝」(竹内均著 同文書院)をぱらぱらと拾い読み。


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26人の旧財閥系企業の創業者や中興の祖たちを描いたもの。

発行は1993年10月のちょうどバブル崩壊期。

 

帯の文言の「経済大国ニッポン」には時代を感じさせるとはいえ、内容にはその片鱗すら感じられない。

地球物理科学者らしく客観的な事実のみを詳細なデータを基に描いているだけに、今読んでも内容の古さはない。


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発行時点のデータながら旧財閥系企業などの12グループの企業展開図から始まる内容も興味深い。

 

 

今日はフランスの大指揮者ピエール・モントゥーの「白鳥の湖」を聴いていた。

1962年のフィリップスへの一連の録音でモントゥー最晩年(87歳!)の記録。

 

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バレエ音楽『白鳥の湖』 op.20(抜粋)

 ピエール・モントゥー(指揮)
 ロンドン交響楽団
 
 録音:1962年6月28,29日
    ロンドン、ウォルサムストウ・アセンブリー・ホール

 

この録音の手持ちはいろいろあって、古くは日本フォノグラムが70年代に出した黄色の統一ジャケットのグロリアシリーズの廉価盤でこれが最初に聴いた盤。

 

その後モントゥーフィリップス録音集成のセットもの外盤LP。

今確かめていないけれど、こちらの「白鳥の湖」には初出時に含まれてなかった曲も入っていたと思う。
そしてCD.

 

今回聞いたのはそれとは別に日本フォノグラムが、オランダの輸入メタル原盤を用いてオーディオファイルシリーズとして出した国内盤LP。

 

この演奏を今聴く気になったのは、ネット上でこの録音の3ヶ月後に同じロンドン響でDECCAが録音したジョージ・セル指揮のチャイコフスキーの交響曲第4番の録音でセルがオケの出来が気に入らず、セルの生前にはお蔵入りとなったということが話題になったことによる。

 

ニュースソースは「レコードはまっすぐに」(ジョン カルショー 著, 山崎 浩太郎 訳 学習研究社 )

 

この本は非常に面白くて、同じ著者と訳者による「ニーベルングの指環 リング・リザウンディング」と並んで愛読書。

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カルショーによれば「そのころ、ロンドン交響楽団は世代の交代期にあった。

そのため秋にセルが戻って来たときには、最高の状態ではなかった。」

 

 

その状態のロンドン響を、はたして名伯楽モントゥーは同じチャイコフスキーどう捌いているのか・・・・

 

聴いてみると演奏はゆったり余裕の巨匠の至芸。

 

セルのチャイコフスキーでは、研ぎ澄まされたピリピリとした緊張感が前面に出ていた。

 

モントゥーでは懐深い暖かさが感じられるのは、曲の性格もあるけれども人間性の違いなのだろうか。

 

このような演奏を聴いていると細かな箇所を気にするのは些細なことに思えてくる。

オーケストラがバランス良く鳴り切っていて、ヴォリュームを上げても少しも煩く感じられないのはさすがだ。

 

EQカーヴは、手持ちのイコライザーでぴったりするのが見つからずRIAAで聴いた。

Youtubeはモントゥー指揮ロンドン響の1964年大阪ライヴ

 

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2018年9月19日 (水)

失われた手稿譜~ヴィヴァルディをめぐる物語

晴れ、日がだいぶ短くなった。
日一日と秋は深まり夜になると虫の鳴く声が煩いほど。

適度な涼しさが読書の季節。


失われた手稿譜~ヴィヴァルディをめぐる物語
(フェデリーコ・サルデッリ 東京創元社)読了


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ヴィヴァルディの手稿譜が作曲者の死後に辿った運命をできるだけ史実に忠実に追跡したノンフィクションノベル。


ヴィヴァルディはその晩年多額の借財を残したままウィーンで客死。


ヴィヴァルディの弟フランチェスコが、兄の債権者たちから持ち去られようとする財産の中から手稿譜を救う場面からこの物語は始まる。



貴族を侮辱した罪でヴェネチアを追放された史料を最後に、フランチェスコの消息は歴史の彼方に消えてしまう。


その後愛書家の貴族によって集められたヴィヴァルディの作品を含む有名無名の作曲家たちの手稿譜が、貴族の死後子孫の遺産の騒動により分割されたり価値のわからぬ修道士の修道院で死蔵されたりと、何度か散逸の危機に遭いながらも再び収斂してトリノの図書館に収まるまでの顛末。


実在の登場人物の会話部分に作者のフィクションを織り交ぜながらのスリリングな事実の展開が面白い。


今聴くことのできる膨大なヴィヴァルディの作品の多くが、奇跡的な偶然と価値を知る人たちの非常な努力によって生き残った事実。


この本を読み、ヴィヴァルディの曲に対する自分の考え方が変わった。



これからは軽く聞き流さずにしっかりと聴いてみよう。



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2017年8月 5日 (土)

紀田順一郎「蔵書一代」

本日快晴、迷走台風は九州に接近中。

立秋を迎えて来週は雨模様。

 

昨晩は部門責任者を集めた暑気払い。

場所は駅前ホテル内の和ダイニング

 

肉料理はなかなか良かった。

 

二次会を誘われたものの、一次会が終わりホテルの出口で他部門の長と話し込んでいるうちに行きそびれてそのまま帰宅。

今日は仕事絡みのイベントで挨拶しなければならず普通に出勤。

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紀田順一郎氏の新刊「蔵書一代」を斜め読み。


この書は3万冊にも及ぶ蔵書を手放さなければならなくなった苦渋の選択の経緯と記録。

氏は4トントラック2台に積まれた蔵書に別れを告げたときに、思わず前のめりに倒れ込んでしまったという。

ちょうど今蔵書を含む家の家財その他の断捨離に入っているので氏の気持ちはよくわかる。

類書でこんな本も図書館で借りてきた。

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本で床は抜けるのか


いつもならばAmazonでポチッと買ってしまうところだが、
今まさに蔵書の整理中で多少理性が働いている模様。

そのまま「本」を「レコード」に置き換わりができそうで恐ろしい。

音楽は湯山昭の「日曜日のソナチネ」


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キングレコードが出していたLPで、小林仁のピアノ。

序曲の「音のデッサン」に始まり、月曜日から日曜日までの8曲を集めたモダーンでお洒落な小品の数々。
序曲以外の7曲は3楽章形式。

子供の学習者向けの軽い小曲集だが、清涼飲料がスルリと喉を通過するような爽やかさが夏向きで良い。

演奏が立派だからなのだろう。

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