カテゴリー「音盤視聴記録」の記事

2023年11月28日 (火)

ディヴィッド・マンロウ、中世ルネサンスの楽器

11月も最後の週、今日も小春日和で最高気温は20度を超えた。

朝起きたら庭先が濡れていた。

明け方に小雨が降ったようだ。


Img_20231128_081838

通勤時に見た富士山は薄い積雪。

毎年この時期に麓に雨が降ると、もっと真っ白になっていた。

 

 

ディヴィッド・マンロウが編んだ「中世 ルネッサンスの楽器」をタワーレコードからの復刻CDで聴く。

これはマンロウの同名の著書に基づいて制作されたアルバムで、中世期とルネサンス期に使われた楽器を、ひとつひとつ音に出してマンロウとロンドン古楽コンソートのメンバーが紹介しているもの。


81xq8meysyl_sl1443_

中世・ルネサンスの楽器

・「中世の楽器」

・「ルネサンスの楽器」

  デイヴィッド・マンロウ(指揮)
  ロンドン古楽コンソート

     録音   1973年3、4、9月、1974年2月

 

取り上げられたのはそれぞれ30種ほどの計60種余りの楽器。

古い楽器の音色を、作曲された当時の曲で再現。

 

それぞれ数分程度の曲だけれど、音楽性豊かに再現しているので変化に富んで少しも聞き飽きない。


61mmfwfl0el_ac_uf10001000_ql80_

書籍は絶版になって久しく古書価格も高価になっている。

 

30年以上前だったか神田の音楽専門古書店、古賀書店で店主さんとこの本のことで話をしていたら「そういえば最近はすっかり幻の本になったねぇ。」とおっしゃっていたことを思い出した。

 

その古賀書店も昨年末に店を閉じてしまった。

 

Youtubeは古楽器を吹くマンロウ

 

| | コメント (0)

2023年11月16日 (木)

テンシュテットのエロイカ

晴れのち曇り。


本日三島からの富士山。


399622099_6508916935897836_2691464492578

 

灯油を買いに行ったら18リットルポリタンクで二千円近い値段。

終わりが見えない円安も続き電気代も値上がり諸物価高騰。

地球温暖化の影響も顕在化して世界的な天変地異と戦火も拡大。

混沌とした令和5年もあとわずか。

 

せめて明るい音楽をと思ったけれど、思いつかずにCD棚から目に止まったのはクラウス・テンシュテットのベートーヴェン。
エロイカを聴いた。国内盤CD.


413

・交響曲第3番変ホ長調作品55『英雄』
・交響詩『はげ山の一夜』*

   クラウス・テンシュテット指揮
   ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

     録音:1991年 9月10月(ライヴ) 1990年5月*

テンシュテットが病に倒れ一時的に復帰した後の録音。

テンシュテットのエロイカでは、学生時代にFMで聴いた北ドイツ放送響を指揮した演奏の印象が強烈で、この時にエアチェックしたカセットテープは何度も聴いている。

この時の演奏は1979年10月3日ロカルノのサンフランチェスコ教会でのライヴ。

このロカルノのライヴはかつていくつかの海賊レーベルでも出ていた。


20170405012

手持ちはDRUMCANレーベルのCDだけれど、音は自分のエアチェックテープの方が良い音だった。

 

他に同じ組み合わせの「エロイカ」が出ている1979年7月の放送用ライヴ
「コリオラン」序曲とのカップリング。

 

演奏そのものは聴衆を前にしたロカルノのライヴが良い。

 

あとテンシュテットのエロイカの手持ちでは、ウィーンフィルとの唯一の共演となった1982年8月29日のライヴと、TIENTOレーベルから出ていた1988年10月23日のロンドンフィルとのライヴ。


Img_20231116_223516

 

今日聴いたEMIのエロイカは、残されたテンシュテットの最後のエロイカ演奏。

 

この数年後に再び倒れ1998年に死去。

 

今日はこのエロイカ全てを聴き直したわけではないけれど、ロンドンフィルとのEMI盤は他の演奏に比べ第一楽章の演奏時間が1分ほど長い。

ただ聴感上はほとんど他の演奏との差が無い。

 

堂々たる風格、さりとて停滞せずに音楽は格調高くスピーディーに進んでいく。

テンシュテットのタイプとしては20世紀初めの巨匠タイプ。

だが音楽は少しも古さを感じさせない。

 

テンシュテットのエロイカではいずれも第2楽章が秀逸だけれど、この晩年の演奏はとりわけ感動的だ。

演奏終了後の拍手も収録されている。

カップリングは「はげ山の一夜」。

最初CDを見たときに何故ムソルグスキー?
と思ったけれど、こちらも凄絶な名演だった。

 

テンシュテットにあと10年の命があったら、どのような高みに到達していただろう。
などと考えていました。

 

Youtubeはテンシュテットのワーグナー、楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕前奏曲

| | コメント (0)

2023年11月14日 (火)

スーストロのトランペットでテレマンほか

11月も半ば、シベリアからの寒気団が南下して全国で雪の便り。

 

畑のレモンが枯れてしまった。原因不明。


昨年まではたくさん実をつけていたのに・・・・・


Dsc_0510_20231114232801

 

夏蜜柑も元気がない。

海水温が上がり秋サケが極端な不漁とのこと。

地球温暖化で水産業に限らず農業も含め、産業構造そのものが変わってしまうかもしれない。

 

 

昨日は仕事で静岡市へ。

行く前に雨がパラついていたけれど静岡に着いたら良い天気になった。

 

先ほどの雨で富士山に新雪。


Dsc_1446

見慣れた沼津からの富士とは異なるアングル。

 

その横に愛鷹山もよく見えた。


Img_20231113_131458

愛鷹山は10万年前に活動を終えた富士山と同じ成層火山

未来の富士山の姿。

 

 

先日の東京行きで購入したLPからスーストロのトランペットを聴く。


仏SFPのLPでフランチェスキーニ、テレマンほか同時代のバロック期のイタリア、ドイツの作曲家たちの作品を集めている。


R169737414986876828206_20231114233001

・"Suonata A 7" Pour Flüte À Bec, Trompette, Cordes Et Basse Continue (1680)
                      :Petronio Franceschini

・"Sinfonia Seconda Concertata Con Li Ripieni" Pour Flüte À Bec Alto, Trompette, Cordes Et Basse Continue (1715)
                      :Alessandro Scarlatti

・"Sonate En Ré Majeur" Pour Clarino (Trompette En Ré), Cordes Et Basse Continue
                      :Georg Philipp Telemann

・"Concerto En Ré Majeur" Pour Trompette, Cordes Et Basse Continue
                      :Giuseppe Tartini

  Henri-Claude Fantapié(conductor)
  Orchestre Des Solistes De Paris

 

指揮者のHenri-Claude Fantapiéは初めて聴く。
フランスの指揮者で指揮をマルケヴィッチ、作曲をディティユーに学んでいる。

オケのOrchestre Des Solistes De Parisについてはよくわからない。

メンバー表を見る限り小編成のようだ。

メンバーにはYuko Moriの名が見える。
彼女はヴァイオリニストの豊嶋泰嗣とともにDaugareil Quartetのメンバーだった。

 

演奏はスーストロの真っ直ぐでのびやかなトランペットに着実な伴奏。

 

このアルバムは名エンジニアのアンドレ・シャルランの手によるもの。


ハイファイ的な音ではないけれど、しっとりとした弦楽器の響きに輝かしいトランペットの音がバランス良く聞えてくる。

 

さすがの名録音。

 

Youtubeはスーストロの吹くテレマン

| | コメント (0)

2023年11月12日 (日)

パリ、ノートルダム大聖堂のクリスマスライヴと朝比奈隆の第九

晴れ、気温は下がり朝に流れる風は冬の風。

本日の最高気温は17度。

つい一週間ほど前には30度近い気温だった。

長い夏からいきなり冬へ突入か。


Img_20231112_081906

今年竣工したばかりの市民体育館「香陵アリーナ」近くの欅は、紅葉を見ることなく葉が落ち始めていた。

 

木曜の沼響第九の練習に続いて、金曜夜は文化センター主催のクラシック・レコードコンサートの解説。

400685837_6904656699653658_7283183829255

今回は2019年に火災にあったパリ・ノートルダム大聖堂でのクリスマスミサの1973年実況録音、そして年末恒例の第九など。

 

ノートルダム大聖堂のクリスマス実況では、2019年の火災の被害や現在の修復の様子などを交えながら巨大なパイプオルガンのことなどのおしゃべり。
Dsc_14372

 

・1973年 パリ・ノートルダム寺院のクリスマス・ミサから

1.今宵、キリストは生まれ給えり(グレコリオ聖歌)
2.真夜中の鐘
3.聖しこの夜
4.神の子は生まれ給えリ
5.男の子は生まれ給えり(グレコリオ聖歌)
6.間奏曲(オルガン即興演奏)
7.アヴェ・マリア(G.ブジニャック)
8.神の御子は今宵しも  
9.間奏曲
10.恵み深き救い主の御母よ(G.P.パレストリーナ)
11.荒野の果てに夕陽は落ちて

  ノートルダム寺院聖歌隊 コントルポワン合唱団 
  ガブリエル・マッソン金管合奏団 
  ピエール・コシュロー(即興オルガン)

 

広大な空間の中で恐ろしいほどの残響の中で聞こえてくる聖歌隊、ブラスアンサンブルの響き。

そしてピエール・コシュローが弾くパイプ八千本の大パイプオルガンでの即興演奏。

細部は明瞭とは言えないけれど、巨大な音響空間を実感することができる名録音だ。

これは仏FYから出ていたLPで、長岡鉄男も取り上げていた著名なアルバム。

 

LPとCDを持参したけれど、音のエネルギー感はLPが勝るものの盤が荒れていたので
CDを使った。

 

 

そして第九は朝比奈隆指揮新日本フィルの1988年ライヴ。


Zap2_g2932877w

・交響曲第9番 ニ短調  「合唱付き」  :ベートーヴェン
 

 豊田喜代美(ソプラノ) 秋葉京子(メゾ・ソプラノ)
 若本明志(テノール) 多田羅迪夫(バリトン)
 栗友会合唱団
 新日本フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈 隆(指揮)

 

当時朝比奈隆80歳。

ゆったりとしたテンポで大河の如く流れていく朝比奈隆、絶頂期の記録。

「第九」の練習翌日の「第九」なので解釈の詳細がよくわかる。

ブライトコップ旧版の典型的な名演だ。

 

今回実際に朝比奈さんの指揮で合唱に参加された方や、沼津市制100周年の第九に合唱で参加する人たちもいらっしゃって、多くの方が参加して下さった。

Img_20231110_184729-1

解説では使用譜のこととか版の種類など、ディープな話が多かったので聴いている方の中には戸惑った人もいたようだ。

終了後のアンケートには解説が難しかったとの指摘もありました。

もう少しわかりやすく説明すべきだったと思う。反省。

 

Youtubeはパリ・ノートルダムのクリスマスミサ 1973年ライヴ

| | コメント (0)

2023年11月 8日 (水)

ジュライチスのプロコフィエフ、ロミオとジュリエット

本日立冬。


399847044_2314919515358191_6614051828040

 

気温は高く、富士山の雪はいつのまにか消えていた。


398993372_6882431268542868_4611048147901

本日朝、朝ご飯を待つポコ。

 

 

プロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」。

ジュライチス指揮のボリショイ劇場管弦楽団によるLP3枚組の全曲盤。

 

R375399013430208132971

 

・バレエ音楽「ロミオとジュリエット」 完全全曲

 アルギス・ジュライチス(指揮)
 ボリショイ劇場管弦楽団

 

今では演奏されないいくつかの曲も含めた完全全曲盤。


全曲盤録音はその後いくつか出ているけれど、この盤でしか聴けない曲もあるようだ。

 

 

プロコフィエフのバレエ「ロメオとジュリエット」は、最初の予定されていたサンクトペテルブルクではなくチェコのブルノで初演されている。

これは最初の版がキーロフ・バレエに受け入れなかったことによる。

その後ブルノの成功を受けてキーロフ・バレエでは改訂した版て上演されている。

 

「ロミオとジュリエット」の世界初演をおこなったブルノのバレエ団を沼津に招いたことがある。


Image_20231108220101

 

チェコ国立ブルノ歌劇場バレエ団と管弦楽団で2001年7月18日公演。

大編成のオケが、沼津のホールの狭いオケピットにびっしり並んだ風景は壮観だった。

この時の演奏は確か初演当時の独特の版だったような気がする。

オケもバレエも荒削りながら気合の入った名舞台だった。

 

 

このLPは改訂によって失われた曲も含めた完全全曲盤。

 

ジュライチスはバレー専門指揮者みたいな人だけれど、さすがにリズムの切れは良い。

手際のよくサクサク進み明解な音楽運びはさぞ踊りやすかろう。

 

Youtubeは巨匠ムラヴィンスキーのプロコフィエフ、ロミオとジュリエットから

 

| | コメント (0)

2023年10月31日 (火)

ウイン・モリスのベートーヴェン、第九

曇り一時雨。10月も今日で終わり。


Dsc_1383

昨日、たわわに実った柿のむこうに雪を被った富士山。

 

「沼津市制100周年記念の第九」の練習も佳境に入ってきている。

昨日になってプログラムの曲目解説の依頼が来た。
締め切りは一週間後。
曲は第九のほか2曲。

もう少し早く話をいただきたいもの。

ウェールズの指揮者、ウイン・モリスの第九を聴いた。


IMP原盤の日本ビクター盤CD.


5455959861

・交響曲第9番二短調 op.125『合唱』

 アリソン・ハーゲン(ソプラノ)
 デラ・ジョーンズ(アルト)
 デイヴィッド・レンドール(テノール)
 グウィン・ハウエル(バリトン)

 ウイン・モリス(指揮) 
 ロンドン交響合唱団
 ロンドン交響楽団
 
    録音:1988年、1989年 Walthamstow Town Hall

 

これはバリー・クーパー編による交響曲第10番を含むベートーヴェン、交響曲全集中の1枚。

デジタル録音。

この全集のうち1,2番以外の8曲(第10番も含む)を架蔵済み。

 

いずれもブックオフのジャンク格安棚で発見、なぜか1,2番の1枚はなかった。

 

モリスはマーラーの交響曲の全曲録音もあり、中でもクック編によるマーラーの交響曲第10番の録音はこの曲の最初期の録音だった。

これは良い出来だったと思う。

「巨人」はその当時珍しかった花の章付き。

他にはブルックナーの合唱曲「ヘルゴランド」のような珍しい曲の録音もある。

Sdsc01505

モリスには珍しい曲の録音が多いので、ある種キワモノのような扱いを受けがちだけれど、演奏はいずれも正統派。

あまり策を弄していないので、未知の作品は安心して聴ける指揮者。

 

そしてこのモリスの「第九」

ブライトコップ旧版の典型的な演奏で、第4楽章序奏の2度目の導入部分のトランペットを歯抜けで演奏させていたり、vor Gottdeでのティンパニのみがデクレシェンドしていくところもはっきり捉えている。

 

速いテンポでピシリと引き締まった、まさに正統派のベートーヴェン。

聴かせどころではオケを十分に鳴らし切っている職人技。

 

ソロは知らない人達だけれど水準以上の出来だ。

ただロンドン響合唱団はかなり粗い。

モリスは合唱指揮者として名を上げただけに、これは意外だった。

十分なリハーサルがとれなかったのではなかろうか。

 

Youtubeはモリス指揮のドビュッシー、カンタータ「選ばれた乙女」。ソプラノはモンセラート・カバリエ。

美しい演奏です。

| | コメント (0)

2023年10月27日 (金)

本日の練習、今回は遅刻で第九第三楽章

昨晩とうとう沼津市内でクマの目撃情報

富士山麓に近い沼津の愛鷹地区では以前から出ていたけれど、伊豆半島続きの地区では初めて。

我が家から数キロの場所なのでしばらく山に入るのは止めておこう。

 

静岡のご当地パンにして沼津のソウルフードのっぽパン

 

 

Img_34603

実にたくさんのバージョンがあるけれども、「しぞーかおでんバージョン」が出たというので買ってみた。


バンデロール沼津工場直売所限定販売。


393804053_6828270590625603_2030697693475

静岡おでんは静岡の郷土料理ということになっている。

けれども、どちらかというと静岡市周辺の料理で、県東部の沼津近辺ではさほど普及していない。

 

そしてこののっぽパン(しぞーかおでんバージョン)。

 

こんにゃくやガンモ、煮たまご、こんぶなどに出汁を染み込ませた具材。
汁気はなし。


細かな魚粉がふりかけてあって相当開発に苦労した様子。


392939412_6828270860625576_1468710969065

 

そこそこイケル味だったけれど、これで850円はなぁ・・・・

 

昨日夜はベートーヴェンの第九、第3楽章を中心喜古恵理香先生の指揮。

場所は市民文化センター小ホール。

 

仕事が長引き会場到着は8時過ぎ。

 

ちょうど第3楽章の静かな箇所だったのでホール席でしばらく聴いていた。


Img_20231026_201457

オケのメンバーに異動があるとはいえ沼響にとって第九は今回で7回目。

さほどの破綻はなく演奏は進んでいく。

 

曲の切れ目から席に滑り込んで吹いたけれど今回の練習は実働20分くらい。

 

Youtubeは「第九」第三楽章、4番ホルンの大ソロ。ホルンは名手ペーター・ダム

| | コメント (0)

2023年10月25日 (水)

プレトニヨフのリャードフ、チェレプニンのことなど

朝は冷えて昼間は24度、寒暖差が大きい。


392939569_6834621213323874_8885820824609

 

撒き忘れていた野菜の種がたくさん見つかった(゜o゜;


393806395_6834621413323854_6073027315816

 

全部有効期限切れ。

もったいないので試しにポットに撒いてみて一週間。


395630383_6834621759990486_4286608452698

 

ダイコンは発芽しました。

 

プレトニヨフの指揮でロシアの作曲家たちを聴く。


手持ちはD.Gから出ていたCD。


00028944708424-1

・交響詩「ババ・ヤガー」   
・魔法にかけられた湖
・交響詩「キキモラ」   :以上リャードフ
・遠き王女のための前奏曲
・魔法にかけられた王国  :以上ニコライ・チェレプニン
・組曲『金鶏』  :リムスキー=コルサコフ
     ~グラズノフとマキシミリアン・シテインベルク編

  ミハイル・プレトニョフ(指揮)
  ロシア・ナショナル管弦楽団
 
   録音:1994年9月

 

かなり凝った選曲。

リムスキー=コルサコフとコルサコフ門下のリャードフとチェレプニンの作品を集めている。

リャードフの「魔法にかけられた湖」はかつて沼響の定演で取り上げている。

 

曖昧模糊とした曲だった。

ただ音のひとつひとつが色彩豊かに絡まっていく絶妙のオーケストレーションが印象に残っている。

 

チェレプニンの「魔法にかけられた王国」のタイトルは、リャードフの「魔法にかけられた湖」に似ている。


実はチェレプニンの曲は、ストラヴィンスキーの作曲で有名な「火の鳥」の音楽として作曲されたもの。

セルゲイ・ディアギレフは1910年の新作バレエとして、「火の鳥」を題材とすることを思いつき、最初チェレプニンが作曲を担当することになっていた。


ところがチェレプニンは作曲を途中で放棄。

次にリャードフに依頼するもこれもダメ。

結局、「火の鳥」の音楽は当時若手だったストラヴィンスキーが作曲することになった。

結果的にこれが大成功となったのだけれど、チェレプニンの「魔法にかけられた王国」は、この時書きかけだった「火の鳥」の音楽を改作したもの。

チェレプニンの曲は、ストラヴィンスキーの曲に比べると響きが保守的。
美しくも有りオーケストレーションは精緻だけれども今ひとつインパクトに欠ける。

 

あらためて「火の鳥」はストラヴィンスキーが作曲していて良かったと思う。

 

リムスキー=コルサコフの「金鶏」も鳥がらみ。


「金鶏」はリムスキー=コルサコフの最晩年の作品で、作曲者自身初演に立ち会うこともなく亡くなっている。

ここではグラズノフとマキシミリアン・シテインベルグによる編曲版を使用。

実はディアギレフはグラズノフにも、「火の鳥」の作曲を持ち掛けたのではないかとも言われている。
シティンベルクはリムスキー=コルサコフの弟子にして娘婿。

 

結局、この3人の作品を聴き比べてみると、リムスキー=コルサコフの作品が他の2人とはひとつ飛び抜けた洗練された音楽が鳴っていて、さすがの貫禄。

いろいろと考えさせられた1枚。

 

プレトニヨフの演奏は、実演で聴いた彼のピアノ演奏に共通する明快さと構成の確かな洗練さがあって非常に良い。

 

Youtubeはチェレプニンのホルン四重奏のための6つの小品、ベルリンフィルのホルンセクション

| | コメント (0)

2023年10月19日 (木)

ベーレンスのラヴェル、シェエラザード

晴れ時々曇り、最高気温は26℃。

昨日、昼食後に眠くなって畳の上でウトウトしていた。

目覚めてふと横を見るとヤモリの姿。


Dsc_1282

 

母方の叔父逝去。

叔父は埼玉在住、昨年のお盆には80半ばの身で一人車を運転して我が家に来た。

ちょうど娘たちも帰省していて和やかに話をすることができた。

この時叔父は、いつになく母と長話をして帰っていった。

帰るときに私が「また来てください」と言ったら、叔父は車の中で微笑みながら頷いていた。

結局この姿が見納めだった。

 

夏の猛暑の時から体調を崩していたとのこと。
先週は家内の叔父の葬儀もあり、この季節の変わり目で亡くなる人が増えているようだ。

 

ベーレンスの歌うラヴェルの歌曲集「シェエラザード」。


手持ちは英DECCAの外盤LP.


117358254

 

・歌曲集「シェエラザード」 :ラヴェル
・歌曲集「夏の夜」op.7   :ベルリオーズ

   ヒルデガルト・ベーレンス(S)
   フランシス・トラヴィス(指揮)
    ウィーン交響楽団

      録音 1983年10月

 

1977年のカラヤン指揮の「サロメ」で鮮烈の登場を果たしたベーレンスの、これが初のソロアルバムだった。

メジャーデビュー以後、カラヤンのほかバーンスタインやベーム、小澤征爾らビッグネームとのオペラで注目を浴びたベーレンス。

 

今どうしてるかな?とネットで調べてみたら2009年草津国際音楽祭の講師として来日中に急逝していた。

 

そしてこのラヴェル。

ドラマティックな歌唱で定評のあるベーレンスだけれど、この盤ではきめ細やかな美しい声と落ち着いた歌唱を聴くことができる。

トラヴィスの伴奏も良い。

 

華やかさや艶やかさよりも、清潔で品の良い穏やかな静けさが自分の周囲に満たされるような、幸せな気分になれる名盤だ。

Youtubeはベーレンスのラヴェル、歌曲集「シェラザード」から第3曲「つれない人」

| | コメント (0)

2023年10月17日 (火)

ムーティのベルリオーズ、幻想交響曲

本日快晴。


Img_20231017_082932

出勤時に狩野川河畔からの富士山。

日曜の雨で山頂付近に雪が降ったようだ。


どこからかキンモクセイの良い香り。


Img_20231017_082935

 

そして上流の箱根山系。

 

ムーティのベルリオーズ、幻想交響曲を聴く

 

幻想交響曲は沼響の定演で演奏した20年ほど前に、聴き比べ記事を沼響のホームページで連載している。

 

90種以上の演奏を聴き比べたけれど、このときあまりにも沢山聴きすぎて食傷気味になってしまい、以後まともにこの曲を聴くことは少なくなってしまった。ちなみに「新世界より」の聴き比べは130種類。

この時ムーティの幻想は紹介していなかった。


315

・幻想交響曲 op.14a

 リッカルド・ムーティ(指揮)
 フィラデルフィア管弦楽団
 
    録音:1984年11月

 

ムーティの3つある同曲の最初の録音。


3度目の2010年のシカゴ響音楽監督就任記念ライヴ録音では、幻想交響曲の続編の「レリオ」も一緒に演奏している。

ムーティのベルリオーズは同じフィラデルフィア管との劇的交響曲「ロミオとジュリエット」もあり、ムーティにとってベルリオーズはこだわりの作曲家のようだ。

 

実際この幻想交響曲でもリピートは全て繰り返している。

 

演奏はムーティならではの熱さと突進力はそのままに細部にわたりかなり緻密。

特に第1楽章で顕著。

序奏での休符の絶妙な間合い、第3楽章最初と最後でのティンパニの表情の雄弁さなど。

 

フィラデルフィア管の美しい音が第2楽章の舞踏会で映えていた。

第4楽章と第5楽章の熱気などなかなかのもの。

 

第5楽章の鐘の音はかなり豊かな響き、この部分だけホールトーンが異なるので別採りなのだろう。

 

かなりの名演でシカゴ響とのライヴも聴いてみたくなった。

 

Youtubeはムーティの指揮でグルックの歌劇「アウリスのイフィゲニア」序曲

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧